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乳がん治療でエンハーツ投与中、肺に影が見つかり…間質性肺炎の可能性あり、すぐ休薬を がん電話相談から

産経ニュース / 2024年6月4日 9時0分

今回は、脳や肺に転移のあるHER2陽性乳がんの50代女性の薬物療法について、がん研有明病院院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。

──平成17年に右乳がんと診断され、右乳房の全摘と、わきの下のリンパ節を郭清する手術を受けました。HER2とホルモン受容体はともに陽性、2センチの腫瘍で、リンパ節転移が8個ありました。

「術後はどのような治療を受けましたか?」

──抗がん剤のパクリタキセルの点滴を3カ月間受けたあと、ホルモン療法のノルバデックス(一般名タモキシフェン)を服用しました。ところが5年後、右鎖骨下のリンパ節に転移が見つかり、パクリタキセルと抗HER2薬のハーセプチン(同トラスツズマブ)の2剤併用療法を行い、右鎖骨下への放射線治療も受けました。しかし、4年後に肺転移が分かりました。

「その際の治療はどのようなものでしたか?」

──抗がん剤のタキソテール(同ドセタキセル)と、抗HER2薬のハーセプチン、パージェタ(同ペルツズマブ)を始めましたが、2回目の投与時にアナフィラキシーショックを起こして中止となりました。ハーセプチンに抗がん剤を組み合わせた抗体薬物複合体(ADC)であるカドサイラ(同トラスツズマブエムタンシン)に切り替えて、5年間、治療を行いました。

「本来はハーセプチン、パージェタ、抗がん剤の3剤併用が標準ですが、代わりに使ったカドサイラがよく効いた、ということですね」

──はい。がん細胞は見えなくなったと担当医から聞きました。ただ肝障害が出たため休薬。すると2年半後の令和4年の年末に脳転移が見つかりました。

「2年半は無治療ですか?」

──はい。血液検査を時折しながら、経過観察していました。脳転移は1個で、ガンマナイフによる治療を受け、腫瘍は見えなくなりました。5年3月から、ADCのエンハーツ(同トラスツズマブデルクステカン)で治療していましたが、今年3月に新たな脳転移が判明し、CT検査で肺に影が出てきました。新たに見つかった18個の脳転移はガンマナイフで治療しました。今後、薬物療法は変更したほうがいいでしょうか。

「エンハーツでは、間質性肺炎の副作用が10%以上の患者さんに起こります。投与中に肺に影が出てきたとすると、エンハーツによる間質性肺炎の可能性があり、そのまま続けると生命にも関わるので、すぐに休薬する必要があります。治療中に脳転移も悪化しているということですので、エンハーツは中止が妥当です。間質性肺炎の経過を見ながら、次の薬物療法を考えることになります」

「有力候補としては、これまできちんと使えていない、ハーセプチン、パージェタ、抗がん剤の3剤併用です。ハーセプチンとパージェタの2剤の点滴を、フェスゴという薬の皮下注射に置き換えることができます。抗がん剤としては、ハラヴェン(同エリブリン)などがあります。他にも、内服抗HER2薬のタイケルブ(同ラパチニブ)と抗がん剤ゼローダ(同カペシタビン)の併用などが候補になりますが、効果と副作用のバランスを考慮して選択することになります」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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