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脳を知る ヒートショック 脱衣所や浴室を暖めて予防

産経ニュース / 2025年1月15日 6時0分

先日、著名な女優の方がわずか50歳代で浴槽で亡くなったことが報道され、多くの方々が衝撃を受けました。その原因として、「ヒートショック」の可能性が報じられました。気温の急激な変化に伴い血圧が乱高下し、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、また大動脈解離、心筋梗塞などの病気が起こることをヒートショックといいます。

わが国のヒートショックが原因の死者数は年間約1万9千人とされており、交通事故の死者数の5倍に上ります。ヒートショックに陥る場所として多いのが冬の浴室、特に浴槽内です。入浴中の死亡の大多数の原因がヒートショックで、65歳以上の高齢者が9割を占めています。

入浴中の死者数は欧米に比べ日本は圧倒的に多いです。欧米はシャワー浴が主流である一方、日本の入浴習慣は、深い浴槽に熱いお湯を満たし、膝を曲げて座った姿勢で首まで湯につかります。このような姿勢は、気分が悪くなった際に浴槽から脱出しにくくなり、気を失ってしまうと顔も湯につかり溺れてしまいます。特に足腰の衰えている高齢の方は浴槽からの脱出は困難です。これがヒートショックによる死亡の一因とされています。

ヒートショックは暖かい居間から寒い脱衣所に移動し、さらに熱い湯船に入ることで生じます。居間から脱衣所に移動すると、寒さに対応するため血圧が上昇し、そこで衣服を脱ぎ、裸で浴室へ入るとさらに血圧は上昇します。その後浴槽の熱いお湯につかると、急激に身体が温まり血圧が下降します。動脈硬化の強い高齢者では、血圧の上昇により脳の血管が破綻する脳出血や心臓病などが生じやすくなります。反対に血圧が低下すると、浴槽内で脳貧血を生じ意識を失い溺れることもあります。真冬では暖房をつけている居間と、寒い浴室の温度差は10度を超えるといわれています。

脱衣所や浴室を暖房器具で暖めておくことで、ヒートショックを予防できます。食後1時間以内や飲酒時は血圧が下がりやすくなるため、入浴を控えた方がよいでしょう。熱いお湯での長湯は、脳血流が減少し意識障害を起こしやすくなります。湯の温度は41度以下、入浴は10分程度がよいでしょう。首までお湯につかることも心臓に負担をかけるので、胸くらいまでにしましょう。

もし浴槽の中で気を失っている方を発見したら、浴槽の湯を抜いて救急車を呼んでください。可能であれば浴槽から引き揚げ、脈や呼吸が確認できない場合は、胸骨圧迫や人工呼吸を続けてください。意識があっても、手足の力が入らない、頭や胸に痛みがある場合も救急車を呼んでください。

ヒートショックは私たちの身近に生じ得る危険な病態です。特に高齢者は家族による見守り、脱衣所と浴室の温度調節が重要です。

(公立那賀病院副院長 脳神経外科 藤田浩二)

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