脳を知る 加齢とともに視機能低下「アイフレイル」 放置しないで
産経ニュース / 2025年1月4日 7時0分
フレイルやサルコペニアという言葉を聞いたことはありますでしょうか?
フレイルは英語で「虚弱」という意味があり「健康な状態」と「介護が必要な状態」の間くらいの状態を指す用語です。つまり病気とまではいかないが「弱っている状態」といえます。サルコペニアは筋肉を意味する「サルコ」と喪失(失う)を意味する「ペニア」を組みあわせた造語で筋肉量が落ちたり筋力が落ちた状態を指します(ともにギリシャ語です)。厳密にフレイルとサルコペニアは同じではありませんが年齢とともに衰えてきていることを意味する点では似たようなものかもしれません。
最近フレイルの中でも「アイフレイル」という言葉が出てきました。日本眼科啓発会議にて提唱された概念です。加齢とともに視機能が低下しさまざまな影響が出るというものです。単純に見えにくくなるだけではなく、目からの情報が少なくなることで生活制限が出て生活自立機能も低下するというものです。
目で見て認識することがやりにくくなると日常のちょっとした作業にも影響が出ます。これにより家事をはじめとした日常生活動作がおっくうになり活動性が減り認知機能にも影響するともいわれています。
高齢者の認知機能と身体機能の関係性について報告した論文(平成22年 筑波大学人間総合科学研究科)で認知機能と最も関連の高いのは「手の巧緻性(こうちせい)」と述べられています。手の巧緻性とは細やかな手の動きという意味合いで、ボタンのつけ外し、お箸で細かいものをつまんで食べる、裁縫作業、文字を書く、など強い力はいらないが細やかな力の調整が必要な指先の作業と思っていただければ間違いありません。
この作業には手を動かす能力に加えて対象物をしっかり見て確認する「目の力」も必須になります。目の不具合を長く放置すると最悪認知症につながる可能性があるものと考えられます。
視力や視野の異常は目の病気である場合が多いですが、中には脳梗塞などで生じるものもあります。疲れたときには目の調子が悪くなることはありますが、日常的に目の不具合を感じる場合には一度病院で相談してみてください。
(済生会和歌山病院脳神経外科医長 三木潤一郎)
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