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子宮体がん、術後に脈管侵襲陽性 再度手術か化学療法かを選ぶ基準は がん電話相談から

産経ニュース / 2024年6月25日 9時0分

瀧澤憲医師

がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は子宮体がんの手術後に、脈管侵襲(血管やリンパ管でがんが見つかること)が判明した54歳女性に、がん研有明病院の元婦人科部長、瀧澤憲医師が答えます。

――子宮体がんと診断され、3月に初回手術(子宮・卵管・卵巣切除と骨盤リンパ節郭清術)を受けました。しかし術後の診断で脈管侵襲が見つかり、主治医から再手術(傍大動脈リンパ節郭清)をするか、化学療法(抗がん剤による治療)をするかを選ぶように言われ困惑しています。

「術後の病理検査結果を詳しく教えてください」

――がんは中分化型(悪性度が3段階の中間であるグレード2=G2)の類内膜がんで骨盤リンパ節転移は陰性、病期はⅠA期(子宮体部筋層への浸潤が2分の1未満)でした。脈管侵襲とは何ですか。リンパ節転移と関係しているのでしょうか。

「脈管とはリンパ管や微小な血管(毛細血管)を指す言葉で、侵襲とはこれらの管の中にがん細胞が侵入している状態です。リンパ管侵襲が陽性だと、がん細胞が、がんがあった場所の近くや周囲のリンパ節に転移している可能性が高いことを示唆します。骨盤リンパ節郭清をしていない場合には、再手術で骨盤リンパ節郭清をするほうが無難です。一方、毛細血管内にがん細胞が侵入している場合は、がん細胞が血流に乗って遠隔転移(離れた場所の臓器への転移)している可能性があります」

――私の場合、リンパ管侵襲は陽性でしたが、郭清した骨盤リンパ節への転移はありませんでした。他のリンパ節に転移する心配はないでしょうか。

「まずがんの悪性度別に転移のリスクを説明します。相談者が患う類内膜がんは、正常な細胞の形に近く、比較的悪性度が低い高分化型(G1)▽細胞が正常な形ではなく悪性度が高い低分化型(G3)▽悪性度が中間のG2に分かれます。G1やG2の場合、骨盤リンパ節に転移したあと、そこから続くリンパ路を経由して、傍大動脈リンパ節に転移することが多いです。ⅠA期のG1、G2での骨盤リンパ節転移は、5~10%くらいですが、転移陽性者の約半分は傍大動脈リンパ節にも転移しています」

「相談者の場合、G2で骨盤リンパ節転移は陰性ということなので、傍大動脈リンパ節に転移するリスクはかなり低いでしょう」

「ちなみにG3では、子宮体部から卵管・卵巣を循環する血管周囲のリンパ路を経て、骨盤の上方に位置する腹部大動脈リンパ節に直接転移することも珍しくありません」

――毛細血管内にがんが侵入していると、遠隔転移のリスクも上がりますか。

「子宮体がんⅠ期のうちG1、G2の5年生存率は約95%、G3では75%ほどです。G1、G2で根治手術をし、必要に応じて化学療法をしていても約5%が再発し死亡します。この理由は定かではありませんが、現状では認識できないさまざまな理由(遺伝子異常、がん細胞が生着しやすい局所環境、免疫能力など)が関連するのでしょう。血管への侵襲も強いリスク因子の一つです。仮に毛細血管への侵襲があれば、術後1~2年後に肺や肝臓に転移することもあり、患者や主治医は衝撃を受けます。そのため化学療法を受けることをお勧めします」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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