がん患者の複雑な胸の内 梅宮アンナさんがシンポジウムで講演、心打たれたその後の出来事 一筆多論 坂井広志
産経ニュース / 2025年2月11日 8時0分
一般社団法人「キャンサーX」が1月26日に都内で開催したがんのシンポジウムに足を運んだ。
キャンサーXは「がんと言われても動揺しない社会」の実現を目指し、2月4日の「世界対がんデー」に合わせて、毎年こうした催しを行っている。
小腸がんサバイバーの筆者は平成31年2月の第1回から参加している。ここで知り合った医師や看護師、がんサバイバーらは数知れず。会場で会うなり「元気でよかった」と励まし合っている。闘病の末に亡くなり、もう会えなくなった友の顔を思い浮かべることもある。
今回、ゲストとして招かれたタレントの梅宮アンナさんは令和6年8月に乳がんに罹患(りかん)したことを公表し、同年11月、右胸の全摘手術を受けた。闘病の様子をSNSで発信している。
梅宮さんは「来年生きていないかもしれない。覚悟をもってやっている。ジタバタしてもしようがない。とにかく話し続ける。誰かの力になれば…」と語っていた。
思いは一緒だと思った。
筆者がかかった小腸がんは希少がんとして知られ、情報量が少ない。罹患した約8年前、インターネットでよく調べたが、あまりの少なさに不安は増大した。目にする情報は亡くなった話ばかりで絶望した。
そんな自分が今も生きていることに、担当医は「奇跡だ」と語る。奇跡を無駄にしないために、自らの経験について発信し続けている。情報が少なくて不安に陥っている小腸がん患者は多いに違いないからだ。
そのうち、がんの友人は増えていった。がんになって得たものを「キャンサーギフト」と呼ぶ。「がん友」はキャンサーギフトそのものである。
ただ、そんな筆者も罹患当初は、社会からの孤立を感じ、屈折した感情からか、サバイバーと接点を持ちたいとも思わなかった。楽しそうに患者同士が会話を弾ませている光景を見た際には、「その輪には入りたくない」と漏らしたこともある。
梅宮さんはがんになったとき「別世界に送り込まれた状態だった。見る風景が(それまでと)違うように感じ、違う星に行った気がした。100人いたら100人接し方が違った」という。筆者もそう感じたことを思い出した。
シンポジウムの最後、司会者が参加者に感想を求めた。30代前後だろうか。一人の女性が手を挙げた。がんになって間もないようだった。
「初めて参加したが(自分と他の人との間に)温度差があり、ついていけなかった。置いていかれた感があった」
女性が話し終えると、医療従事者でもある女性スタッフがすぐに手を挙げ、マイクを持って、彼女に向かってこう語りかけた。
「違和感を持ち帰らないことがファーストステップ。もやっとする気持ちを残さないで帰ってほしい」
独りにはさせない-。スタッフのそんな熱い思いを感じた。そのスタッフは「内輪で盛り上がっているところに参加したら私も同じ思いをするな」と思い、「彼女の勇気に応えたかった」のだという。
本音を正直に口にした患者の勇気と、それを正面から受け止めたスタッフの心意気に胸を打たれた。彼女は来年、姿を見せるだろうか。(論説副委員長)
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