脳を知る むずむず脚症候群 睡眠障害の原因として要注意
産経ニュース / 2024年12月29日 7時0分
「むずむず脚症候群」。この一見冗談のような名前の病気をご存じですか?
むずむず脚症候群は17世紀からヨーロッパでは報告があり、日本では平成9(1997)年ごろから注目されるようになってきました。現在では広く見られる神経疾患と認識され、患者が脚を動かさずにはいられない状況から、「下肢静止不能症候群」とも呼ばれています。
自覚症状としてはじっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢の部分に(患者によっては、脚のみならず腰から背中やまた腕や手など全身に)「むずむずする」「じっとしていられない」「かゆい」だけでなく、「ピンでなぞられているような」「針で刺すような」「火照(ほて)るような」「蟻やミミズなどの虫が這(は)っているような」などの異様な感覚が現れます。「脚の中に手を突っ込んでかき回したいぐらい苦しい」と表現する人もいるようで、この症状の辛さがうかがえます。
この苦痛を抑えるため常に脚や身体を動かさなければならない状況となります。症状は夜間に増強するという特徴があり、睡眠障害の要因となります。症状が悪化すると過度のストレスから「鬱(うつ)病」を招くこともあるので恐ろしい病気です。
日本国内の患者数は推定で人口の3~4%、潜在患者を含めると約500万人近く存在するとも推測されています。40歳以上の中高年、特に女性に多く(男女比2対3)、不眠症患者の10人に1人がこの疾患であるともいわれています。
どうしてこのような「脚」の病気が「脳」を扱うこのコラムに登場するのかというと、原因が脳にあるからです。脳の中で神経伝達に重要な働きをするドパミンという物質の機能が落ちることが一つの原因とされています。もう一つは貧血や妊娠、腎機能障害がこの病気を引き起こす要因でもあることより、これらに共通の特徴としての鉄欠乏が原因となっているとも考えられています。
したがって治療は、鉄欠乏となるような病気があればまずそちらを治療して鉄欠乏を解消すること、そしてドパミン機能を助けるお薬を飲むことです。ドパミン機能低下といえばパーキンソン病を思い浮かべる人も多いと思います。そう、この病気の治療薬はパーキンソン病のそれと同じです。
決してまれな病気でないのに、一般にはあまり知られていないためにひどい不眠に長年苦しんで、適切な治療を受けていないケースも多いようです。知らない病気は診断できないわけですから、何事も正しく知っていることが大切です。
(済生会和歌山病院副院長兼脳神経外科部長 小倉光博)
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