脳を知る 脳卒中患者の搬送 一刻も早く適切な治療を
産経ニュース / 2024年12月31日 7時0分
今回は、脳卒中患者の病院までの搬送についてお話しします。
脳卒中とは、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳内に出血する脳出血やくも膜下出血など脳血管に障害を起こす病気です。脳卒中は、前兆がある人は少なく、突然、意識障害や言語障害、手足の脱力などの神経症状が出現し、重症な場合は生命にかかわることもあります。治療は一刻を争います。治療が遅れることで、さらに症状が進行し悪くなる可能性が高まります。脳卒中を発症した場合は、できるだけ早く専門的な治療ができる病院を受診することが重要です。
では早く病院にたどり着くためには、どうすればよいでしょうか。
まず脳卒中を発症したらすぐに救急車を呼ぶことです。脳卒中を発症すると、言語障害や手足の麻痺で自分で救急車を呼ぶことが難しくなるため、周囲の家族が早く気づくことが大切です。「顔、腕、言葉」の3つをチェックしましょう。まずは笑ってもらい、顔のゆがみを確認し、次に腕が正しく上がるかどうか、最後にうまくしゃべることができるかどうかを調べます。こうした動作がスムーズにできない場合は、脳卒中の可能性があるため、すぐに救急車を呼びましょう。
次に重要なのは、救急隊が脳卒中の疑いがあるかどうかを判断し、適切な治療ができる病院に患者を搬送することです。すべての患者を、高度な手術ができる大病院に搬送すると、搬送先の病院はすぐに救急患者であふれてパンク状態になります。本当に緊急手術を必要とする患者が、治療できずに手遅れになる可能性があります。
救急隊が、脳卒中を適切に診断し、さらに緊急治療の必要性を判断できれば理想的ですが、実際、問診だけではかなり困難です。最近では神経症状を点数化して、緊急治療が必要かどうか判断できるようなスケール表が考案されています。
また日本では導入されていませんが、欧米ではMobile stroke unit(MSU)という頭部CT装置と遠隔通信装置を備えたドクターカー(医師や看護師が乗っている救急車)があります。医師が現場に出向き、車内で頭部CTを撮影し脳卒中を診断し、点滴をすぐに開始します。さらに手術加療が必要な場合は適切な病院を選定して患者を搬送します。このMSUを使用することで、治療の開始が早まり、良好な経過をたどる患者が増加するという研究結果があります。MSUは、日本ではまだドラマや映画の中の世界ですが、日常診療だけでなく震災などの災害でも役立つ可能性が高く、早く導入していただきたいものです。
(和歌山県立医科大学脳神経外科講師 八子理恵)
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