歯科医礼賛 美村里江のミゴコロ
産経ニュース / 2024年6月24日 15時20分
社会人になったら「医師、弁護士、警察官」の知り合いを作るべし、というような話がある。若い頃はピンとこなかったが、仕事を続けるうちに「確かに」と納得する四十路である。
一方、私はこの中に腕のいい「歯科医師」も入れたい。実際に今お世話になっている先生が素晴らしいからだ。
現在の歯科医院に行き始めたのは、とある治療法を探していて、それとともに定期検診をしっかりしてくれる医院を求めていたのが契機。いくつか評判を見た後、その頃住んでいた場所から比較的アクセスがよく、行ってみたら大当たりだったというわけだ。
まず驚いたのは、患者さんが引きも切らず予約は常にいっぱい。治療用のシートは、予防歯科のための2席も込みで全6席ほどだが、先生も複数人いらっしゃる。サポートの歯科衛生士さんも入ると、院内は常に賑々(にぎにぎ)しく機能的にフル回転している。
院長先生をはじめ、先生方にはそれぞれ専門的な得意ジャンルがあり、私の担当H先生は被せ物などの歯科技工士でもあられるようだ。
そのすごさを痛感したのは、10年以上使用してきた被せ物を交換した直後のことだ。
幼少期に埼玉でお世話になったK先生も、米国で勉強されて腕は確かだった。それを証拠に上京後、3、4軒の歯科医院に行ったが、K先生作の被せ物について「よくできている」「作った医師は腕が良い」と毎回感心された。
自分の歯の装備を褒められるのは、身につけた宝飾品を褒められるより気分が良いものだ。その分、交換にはやや不安もよぎるというもの。
いざ新しいセラミックを装着する段になり、通常通りかみ合わせを確かめつつ「どうですか?」と尋ねられ、答える、ということを繰り返す。しかしH先生は、私の言葉以上に「奥がもうちょっと…」「この高さが…」と、ぽつぽつつぶやき、10年以上使用した歯と遜色ないかみ合わせに、ぴたりと調整してくださった。
麻酔薬の量も毎度的確で、治療中はもちろん痛みゼロ。終えてクリニックを出て30分くらいで平常感覚に戻る。他院では口内炎になったりしていた麻酔注射跡も、刺し方が繊細なのか全く痕跡がない。
そんなプロの技により、毎回終えて数時間もすると行ったこと自体を忘れてしまうほどの快適さが保たれている。数カ月おきの定期検診もむしろ楽しみとなり、わが口内はますます安泰である。
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