「ファッションは浅い」の悔しさバネに研究…東大での講義は「革命的」 <話題の本>『東大ファッション論集中講義』(ちくまプリマー新書)
産経ニュース / 2024年12月1日 9時40分
平成初期に東京大の大学院生だった著者は、指導教員から「ファッションは浅い」と研究対象そのものを否定されてしまう。その悔しさをバネに反骨心でファッション文化論の研究者となった著者が、東大で昨年行った集中講義を書籍にまとめた。
ファッションは、はやり廃りとともに形を変え、「流行遅れ」になることを運命づけられている。鑑賞を主目的とする伝統的な絵画や彫刻が「純粋芸術」とされたのに対し、身体を保護する実用性を併せ持つファッションは「応用芸術」に分類された。特に西洋のファッションを受容した日本では、洋裁学校という形で女子教育と強く結びつき、大学制度の中では長く軽視され続けていた。
そのため、著者も東大での講義を「ファッション研究にとっては革命的な出来事」と位置付ける。東大とファッションの組み合わせは話題を呼び、版元の筑摩書房によると、発売2カ月半で5刷2万2300部と好調。ちくまプリマー新書編集部の方便凌さんは「若い世代が手に取りやすい価格帯にしたかった」と話す。
平成初期には、哲学者の鷲田清一を中心に「ファッション学」が一大ブームにもなった。流行から新たな学術領域へと向かう研究の現在地を知るには最適な一書だ。(村嶋和樹)
『東大ファッション論集中講義』平芳裕子著(ちくまプリマー新書・990円)
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