週刊誌を一刀両断、20年で1000回到達 花田紀凱氏「新聞・テレビに異議申し立てを」
産経ニュース / 2024年11月6日 7時0分
週刊誌の最新号を一刀両断する産経新聞読書面のコラム「花田紀凱の週刊誌ウォッチング」が今月3日で連載1000回を迎えた。平成17年4月の連載開始から約20年。花田紀凱氏(82)は前兵庫県知事パワハラ疑惑などを例に挙げ、「今の週刊誌は時として新聞と同じことをやっている」と苦言を呈する。
同じではダメ
「メジャーな新聞・テレビに対し、週刊誌はマイナー。新聞・テレビ報道の大きな流れに異議申し立てをするのが週刊誌の役割、存在意義だが、それがない」
斎藤元彦前兵庫県知事のパワハラ疑惑を巡っては、特産品など贈答品に関する「おねだり」疑惑をそろって見出しにした「週刊文春」「週刊新潮」に対し、7月28日付で「水に落ちた犬を一斉にたたくだけなら週刊誌の存在価値はあるまい」と書いた。
「(斎藤さんが集中砲火を浴びたら)もっと斎藤さんに近寄って、あるいは周りを取材するとか。人間関係を取材してほしい。(自民党の派閥パーティー収入の)不記載問題も『裏金』『裏金』と、ただ追随するだけ」。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題も「新聞が一斉に同じような論調で批判していて、週刊誌も同じように取り上げる」と手厳しい。
旧統一教会を巡っては、安倍晋三元首相銃撃事件の起きた令和4年7月以降、コラムで28回にわたって言及。5年2月11日付では「事件後、新聞、テレビ、そして週刊誌までもが、いっせいに統一教会叩きに狂奔、銃撃そのものに関してはほとんど追及してこなかった」とつづった。
自身も「週刊文春」編集長当時、統一教会批判キャンペーンを手がけていたが、「当時は合同結婚式が問題になっていた。『花田はあの時は批判していたくせに、今は擁護するのか』と言われるが、統一教会もいろんな無茶をしたことがある。コンプライアンス宣言(平成21年)以降は返還請求が激減しています」と説明。今の週刊誌に対しては「昔の事例を問題にして今の姿を見ないのはおかしいと言ってほしい」と注文を付ける。
週刊誌が株を上げたのが、旧ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川氏による性加害問題だ。11年、この問題を「週刊文春」が報じ、事務所から名誉毀損で訴えられたが、東京高裁が15年、事実を認定した。だが新聞、テレビは英BBC放送が昨年3月に取り上げるまで、ほとんど報じてこなかった。
「『文春』は僕(が編集長だった時期)の後です。よくやった。でも周りが付いてこなかった。世の中の空気が変わってきたから今取り上げているのであって、その頃はひどいことという認識がわれわれにもなかった。僕らもやっぱりジャニーズ事務所に世話になったんです」と自戒も。
書き出しが命
コラムは毎回、読者の共感を得るような話題で書き始めている。例えば、候補者が乱立した東京都知事選を巡っては、今年6月23日付で「ハッキリ言って東京都民が気の毒になる」と書き起こした。執筆するときは、「書き出しに一番悩む」という。「僕がいつも言っているのは、記事を書くときは取材した中で一番面白かった話を最初に持ってきなさい、ということ」
主要誌の部数は、連載開始時から減り続けている。
日本ABC協会の調査で約59万部あった「文春」や50万部前後の「新潮」「週刊現代」「週刊ポスト」も、令和5年7~12月平均は「文春」が約21万部、「現代」「新潮」「ポスト」が11万5000部前後。
「週刊誌がなくなったら大きなメディアを論ずるものがなくなる」と懸念しつつも、「週刊誌はなくならないし、なくなってほしくない」と期待を込めた。(寺田理恵)
花田紀凱
はなだ・かずよし 昭和17年、東京都生まれ。東京外国語大を卒業後、文芸春秋に入社。63年に「週刊文春」の編集長となり、同誌の部数を大きく伸ばす。平成8年に文芸春秋を退社した後は「uno!」「編集会議」「月刊WiLL」などさまざまな雑誌の編集長を歴任し、28年から「月刊Hanada」編集長。
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