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プーチンはスターリンの「21世紀の生まれ変わり」だ 「スターリン秘録」著者 斎藤勉

産経ニュース / 2024年6月23日 10時0分

『スターリン秘録』(産経NF文庫)

ロシアのプーチン大統領が、北朝鮮、ベトナムへとアジア外交を繰り広げている。プーチン外交の意図するところはどこにあるのか。『スターリン秘録』(産経NF文庫)を上程した斉藤勉・産経新聞論説委員に、プーチンとスターリンという2人の独裁者を重ね合わせながら、ロシアの行く末を論じてもらった。

71歳、2人の独裁者

「21世紀の最悪な殺人鬼を理解するには、その前身であった20世紀の最悪な殺人鬼を理解する必要がある」「今のロシア連邦はソ連との断絶によってできた新しい国ではなく、ソ連から自然に繋がっている独裁国家だ」―。

3月末に上梓した『スターリン秘録』(斎藤勉著、産経NF文庫)の趣旨について、日本で活躍中のウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏はX(旧ツイッター)への投稿でわかりやすく、こう指摘してくれた。「殺人鬼」とは言うまでもなく、「ソ連の独裁者・スターリン」と「ロシアの独裁者・プーチン」である。

ソ連共産党独裁の恐怖体制を確立したスターリンは、国内では「人民の敵」にでっち上げた数百万人の政敵の「大粛清」を断行した。ウクライナでは収穫された穀物をすべて強奪して「ホロドモール」と呼ばれる意図的な大飢饉を引き起こし、民族全体の抹殺を謀った。第2次世界大戦では国民の愛国心を煽るため、「大祖国(防衛)戦争」と呼ぶヒトラーとの独ソ戦で軍民に2700万人もの犠牲者を出しながら勝利して「地上の赤い神」といわれた。

プーチン大統領は過去24年間の治世でチェチェン紛争、ジョージア侵攻、ウクライナ南部・クリミア半島併合、シリア内戦介入…と戦争に手を染め続け、「ソ連復活」の帝国主義的妄執に憑かれたウクライナ全面侵略は2024年2月24日、3年目に突入した。

プーチンは何の大義もない侵略を厳重な言論統制下で「特別軍事作戦」と偽り、スターリン張りに「祖国防衛戦争」にすり替えている。

一連の少数民族弾圧、対外侵攻に反対したり、その「闇」を暴こうとした政治家や元情報機関員、ジャーナリストらの暗殺、不審死は引きも切らず、侵略による無辜のウクライナ人の死傷者も数万人にのぼる。

プーチンは現在、71歳、スターリン死して71年。プーチンはまさにスターリンの「21世紀の生まれ変わり」というほかない。

「2人の独裁者」は実に似通っている。スターリンは帝政ロシア時代、帝国と革命陣営の二重スパイだった。プーチンもソ連の「国家の中の国家」と恐れられた巨大な秘密警察・国家保安委員会(KGB)のスパイで、第2次大戦後、スターリンが共産化した東欧の東ドイツに駐在した。2人の「殺人鬼」の周囲での夥しい非業の死は、スパイ特有の猜疑心の犠牲者だ、との指摘は多い。

生き続けるスターリニズム

今年3月のロシア大統領選ではプーチンが87%超の得票率で「圧勝」し、5選を決めた。これがとんだ茶番劇だったことは子供でもわかる。選挙の1か月前には、著名なブロガーとして「プーチンなきロシア」を訴えかけ、その発信力と国民人気をプーチンが最も恐れていた「最大の政敵」・ナワリヌイ氏が北極圏の劣悪な環境下の刑務所内で謎の急死を遂げた。選挙では「反政権」「反戦」を唱える立候補者はすべて事前に排除された。ウクライナで占領した東・南部4州とクリミアでも国際的非難の中で選挙を強行したが、当局スタッフが武装兵と一緒に各家庭を回り、銃口の下で投票を強制するという欺瞞ぶりである。

4年前の恣意的な憲法改正の規定で、プーチンは今後最長で2期12年、83歳まで通算36年の統治が可能となる。スターリン治世を上回る事実上の終身独裁だ。

ところが、大統領選挙後、1週間もたたない内にモスクワ郊外でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)によるコンサート施設でのテロが起き、140人超の犠牲者が出た。ロシアでは過去20年で最悪のテロだ。プーチンはシリアのアサド政権を軍事支援し、これと敵対するISの積年の恨みを買っていた。プーチン政権は図らずも「ウクライナ」と「国内テロ」の二正面作戦を強いられる羽目になったが、プーチンは何の証拠も示さずにウクライナのテロへの関与を強く示唆し、世界の顰蹙を買った。テロを口実にウクライナ攻撃を強化するとの観測が出ている。

ソ連は33年前の1991年に崩壊したが、非道なスターリニズムは21世紀も厳然と生き続けている。まして、ロシアとの間に「北方領土」と「シベリア抑留」という国家主権・人権侵害問題を抱える日本にとって第2次大戦はまだ終わってはいない。プーチンはウクライナ侵略を始めた直後、日本との平和条約交渉自体を一方的に中断してしまった。著者の私はロシアへの入国を禁止されている。

しかし、プーチン体制に風穴を開けかねない光明もほの見えている。ナワリヌイ氏のユリア未亡人は亡命先のベルリンで大統領選当日の正午を期して支持者に一斉抗議行動を呼びかけた。これに応じて国内外の各地の投票所に「反プーチン」「反戦」の長い行列ができた。過去の大統領選では考えられなかった勇気づけられる動きだ。

果たして、プーチンの末路は―。

グレンコ氏はこうも喝破した。

「スターリンがわかれば、(プーチンの)ロシアの行く末が見える」

(産経新聞論説委員 斎藤勉)

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