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祖父母も働く時代の「孫育て」 世代間ギャップや負担感も  100歳時代の歩き方

産経ニュース / 2024年12月15日 9時0分

子育てを祖父母が手助けする「孫育て」。共働き世帯の増加で期待されている半面、祖父母世代も働く人が増えたり、父母世代との育児観のギャップに悩んだりしているようだ。体力的、経済的にも負担を感じている人も少なくない。しっかりした子育て、孫育てには「事前の十分な話し合い」が必要だ。

「ご父母は育児を頑張っています。祖父母は温かく見守りながらサポートすることが大切です」。さいたま市で11月に開かれた「孫育て講座」。孫育てをしている参加者を前に、「子育て支援センターにし」(同市)の加藤洋子センター長が説明していた。

参加した70代の女性は「昔と今は子育てが違うので、いろいろなことで娘と意見が食い違ってしまう」と聞き入った。40代の娘夫婦は共働き。女性は0歳と3歳の子育てを手伝っている。孫はかわいいが、「あと数年続くと思うと、体力がもつかどうか」と不安を漏らした。

さいたま市では孫育ての不安解消のため、平成27年から「祖父母手帳」を発行している。手帳では、昔と今の子育ての違いや安全対策などを紹介。ほかの自治体でも、孫育てをサポートするハンドブックの作成・配布が進んでいる。

孫育ては共働きの増加で注目された。

総務省の労働力調査によると、妻が64歳以下の共働き世帯は令和5年に1206万世帯となり、平成14年の937万世帯に比べ、約1.3倍に増えた。祖父母のサポートも重要となり、国立社会保障・人口問題研究所が令和3年に行った出生動向基本調査によると、第1子が3歳になるまでに祖母が子育ての手助けをした割合は約6割に上る。

一方、働く高齢者も増えた。令和5年の65歳以上で働く人は20年連続増の914万人で、うち女性が約4割を占める。保育園やベビーシッター事業などを行うマザーグース(神奈川県茅ケ崎市)の柴崎方恵会長によると、祖父母が働いているため子育ての協力が得られないケースがあるという。

祖父母世代にとって孫育ての時期は、自身の子育てが終わり、自分の時間を持てる時期に当たる。体力面、経済面では厳しい局面に入る場合が多い。主婦の友社が令和元年に孫育てをしている女性に行ったアンケートでは、「孫育てでもやもやするとき」(複数回答)の最多は「自分の体調が良くなかったり、疲れているとき」(60.3%)、約3人に1人は「孫に使うお金が負担と感じ」ていた。

子育てに関する考え方の違いも祖父母世代を悩ませる。

加藤さんによると、以前は「頭の形が良くなる」などとされていたうつぶせ寝は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が高いことから、近年はあおむけに寝かせることが推奨されているという。昔は日常的に見られたおんぶは、「子供の様子が見られない」ことや見た目などから、今は抱っこが主流だ。

ただ、おんぶがよい場面もある。加藤さんは、育児のやり方にはそれぞれメリット、デメリットがあるとした上で、「情報があふれている時代だからこそ、誰もがストレスにならない方法を見つけてほしい」と話す。冒頭の孫育て講座の参加者からも「抱っこの仕方などを知り、参考になった」との声が上がった。

祖父母世代や父母世代のライフスタイル、そして子育ての考えも変わってきている中での孫育て。柴崎さんは「祖父母がどこまで協力し合えるのか。育児の方針や子育て観を含めて、祖父母と父母がしっかり話し合うことが重要だ」とアドバイスしている。

NPO法人孫育て・ニッポンの棒田明子理事長の話

孫育ての良い点は、子育て経験者が参加することだ。世代間で子育てのやり方や考えが異なると、面倒なこともあるが、いろいろな考えを聞く機会にもなる。祖父母も父母も、子供の健やかな成長への思いは一緒のはずだ。良い点があれば、相互で取り入れてほしい。

高齢になると、今後の生活に体力的、経済的に不安を抱えがちだ。孫育てで重要なことは、祖父母の生活はしっかり守ること。例えば経済的な面で言うと、初孫への金銭的支援で無理をすると、下の孫たちに同じようにすることが難しくなる。祖父母の生活に影響が出ないよう、家族で話し合い、〝無理のない〟孫育てをすることが重要だ。(本江希望)

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