リアル中学受験 悔しがってたのは親だけ 親の受験リベンジ背負って戦った息子、大人になった彼が思うことは… リアル中学受験-わが家の場合
産経ニュース / 2024年7月5日 13時0分
中学受験に挑戦することにした我が家。小学生にもかかわらず、ときに午前0時をまたいでまで、息子に勉強をさせていました。親としては「本当にこれでいいのかな」という迷いもありました。
口では前向き
中学受験に向けて勉強することを、息子はどう思っているのか。これについては、しつこいぐらいに尋ねました。
その都度、息子は「勉強するのは嫌いではない。塾では学校の先生が教えてくれない話が聞けて面白い」と前向きになことを口にしていました。
ただ、それはあくまで表面上のこと。積極的に受験勉強をしたい、ということではないのだろう、と思っていました。ゲームをするときのようなのめり込むような感じはないんです。
ほかに「やりたい」と思えることがあるわけではなく、だからといって目の前の環境がとてつもなく嫌だというわけではない、ということでしょう。いくら前向きなことを口にしていても、小学生の判断です。やはり親の思いを忖度している部分もあったと思います。
それにしても、中学受験は小学生が立ち向かうにしては過酷な環境だったと思います。小学5年生になると、ほかの習い事はやめて塾一本に。小学6年生では、好きなゲームも封印して、勉強漬けの日々となりました。
朝は目覚めてから登校までのわずかな時間を使って学校の宿題をこなし、下校後はすぐに塾へ。塾のない日でも塾の宿題に追われました。テレビをみることもほとんどなかったです。週末は昼、夜2回の弁当を持って塾に通いました。
中学受験では、午前入試、午後入試と1日に2校の試験を受けることもあります。小学生が1日2校受験するのは厳しいのではないか、過酷すぎるのではないかと思ったのですが、塾の先生に聞いてみると「普段の学習からそういう訓練してますから大丈夫ですよ」とのことでした。
志望校を落として
小学6年の秋、翌年1月の入試を控え、親として、志望校を変える決断をしました。模擬試験で偏差値が少し届いていなかったからです。追い上げを期待する気持ちもありましたが、親からみても上位層の壁は厚いと感じていました。
大学受験と異なり、中学受験では浪人という選択は考えにくく、確実に受かるところに挑戦させたいという思いもありました。
変更した志望校は自宅の近く。地元の公立中に通うより近く、ほとんど通学時間がかからないことが決め手でした。偏差値的にもクリアしていたのですが、結果は想定外のサクラチル。塾の先生も驚いていました。
受験を終えた後、中学入学までの息子はゲーム三昧の日々を楽しんでいました。気持ちを尋ねると「悔しくないことはないけど…」と淡泊な反応でした。
その後、息子は不合格になった学校を横目で見ながら、併願で受かった片道約2時間近くかかる中高一貫校に入学することになったのですが、それでも6年間、機嫌よく通ってくれました。
もしかしたら、そのとき、悔しがってたのは親だけだったのかもしれません。確実に受かるところを受験する、と考えながら不合格だったという読みの甘さもふがいなく感じていました。
「結局、中学受験は息子を親が誘導していただけ」というのが、夫婦の総括です。親の私も高校受験や大学受験で失敗を繰り返しており、息子の受験でリベンジしたいと思っていた部分もありました。
よく中学受験の話をしていると「子供が受けたいというから受験させる」という話を聞きますが、我が家の場合、結局は親の私の方針で受験をさせていたと思います。
夫婦の反省会で「やっぱり本人の主体性を育てないとだめだ。大学入試は自分で決めさせよう」と話しあったのですが、結果的には、その後の大学受験でも黙っていられず、口出ししてしまいました。親の私は一向に成長していません。
塾の講師に
一方、大学に入学した息子は、自分の通った塾ではなく、入塾試験のときに偏差値30台をたたき出して、結局、通塾しなかった別の中学受験塾で講師としてアルバイトをはじめました。本人の弁によると「生徒の評判は上々」とのことです。
最近になって、「お前は中学受験で何を学んだんだ」と息子に聞いたところ「中学受験で失敗したことで『頑張ったからといって思い通りになるとは限らない』ということを学んだ」と振り返っていました。頑張ることは大事だけど、結果がいつもついてくるわけではない、という現実を知ったそうです。
それでも、その経験が大学受験のときに役立ったそうです。「高校生のとき、模試で成績が良かったらすぐに調子に乗る友達もいたけど、僕はそんな気になれなかった。中学受験で失敗してるし。大学受験では帳尻をあわせたいと思って地道に勉強を続けることができた」と話していました。
模試で良い結果でも悪い結果でも、それは、あくまで途中経過。努力が必ず報われるわけじゃないけど、目標に向かって頑張ること自体が大切なんだと気づいてくれたのかもしれません。
中学受験の失敗について、何も考えていないのかと思っていましたが、息子なりに、失敗を糧にしていたようです。
塾講師としても、自分の体験から、思うように成績の上がらない生徒たちの、もどかしい気持ちを分かってあげられるかもしれません。もし、人の気持ちを考えながら教えることができる先生になれているのなら、息子の中学受験も無駄ではなかったのかも、と思っています。
宮っ子パパ(一人息子の父、会社員)
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