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SNS投稿で炎上…「産休クッキー騒動」が映し出した日本の職場の問題点

産経ニュース / 2024年6月19日 11時0分

SNSで話題となった「産休をいただきます」と書かれたクッキー(岩崎叶汰撮影)

今年4月、産休前に職場などに配るクッキーを紹介したX(旧ツイッター)の投稿に批判的なコメントが数多く寄せられ、インターネット上で話題となった。なぜ〝炎上〟したのか。騒動からは、結婚や出産・子育て、職場環境などを巡る課題も透けて見える。

「踏んづけてやる」

«産休をいただきます ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。»

炎上を招いたツイートは、赤ちゃんのかわいらしいイラストと、こんな文言がプリントされたクッキーの画像を投稿したものだった。

投稿者はこのクッキーを職場に配ろうとしていたとみられるが、投稿に対し«不妊治療をしている人に配慮が必要»«嫌みに感じる»などとするコメントが相次いだ。

「子供ができなかった方の気持ちの持って行き場がなく、ケアの仕組みがないのが問題かもしれないが…」。こうした反応を受け、画像がアップされたクッキーの製造会社を運営する「ドリームエクスチェンジ」代表の滝口信幸さんは、戸惑いを口にする。

この製造会社では、産休以外にも誕生日や母の日、退職のあいさつなど、さまざまな場面に合わせたメッセージやイラストが印字されたスイーツを販売。クッキーは10年ほど前から販売しており「営業や出張で外出している人にも、置いておいたら伝わる」と、女性を中心に一定の売り上げがあるという。

今回の〝炎上騒動〟を受けて、会社には誹謗(ひぼう)中傷のメールが複数届いた。中には匿名で«(このクッキーを)もらったら踏んづけてやる»という内容のものもあった。

滝口さんは「お世話になった方に、仕事を抜けるときに感謝の気持ちを込めて菓子を渡す。これが非難されるのはおかしい」と、疑問を呈した。

「休む申し訳なさ」

一方、育休に入る際、実際に職場にお菓子などを配った人からは「むしろ(お菓子などを)用意しない方が失礼」との声も聞かれる。

東京都港区の製菓会社に勤める女性(27)は昨年末、産休前に洋菓子を購入し「産休、育休をいただきます。復帰後もよろしくお願いいたします」とメッセージを添え、職場の給湯室に置いたという。

関わりの多い上司や同僚には個別のギフトを用意するなど、併せて2万円ほどの出費だったといい「繁忙期である年末年始前だったので、申し訳なさが大きかった」と、当時の心境を振り返った。

柔軟な職場に

「SNSがないときは自分の中で処理していた感情も、今は発信すると『私も』『私も』となり、〝炎上〟が見えてしまう。(批判的な人は)数としては、そこまで多くはないのではないか」

法政大キャリアデザイン学部の武石恵美子教授はこう語る一方、今回の「産休クッキー」を巡る騒動を契機に、産休や育休、復帰後の短時間勤務など多様な働き方が議論されるのであれば「前向きに捉えていい」と話す。

産休や育休などの制度利用の現状を巡っては硬直的な職場環境に課題があるとし「個々の事情に配慮しつつ、短時間勤務やフレックスタイムなどを組み合わせた柔軟なマネジメントが必要だ」とも指摘。

「(産休や育休をとった社員が)復帰後に例えば40歳だとして、まだ20~30年のキャリアがあることを考えると、社員のモチベーション低下やキャリア停滞などを招く方がダメージは大きい」と、中長期的な視野に立って職場の柔軟性を高める取り組みの重要性を強調した。(山本玲)

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