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公立小学校の記録映画が海外で大反響 日本人を作る「特別活動」に世界が注目 近ごろ都に流行るもの

産経ニュース / 2024年11月30日 13時0分

映画「小学校〜それは小さな社会〜」(提供写真)

日本のありふれた公立小の1年を追ったドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」が海外で大反響を呼び、日本での凱旋(がいせん)公開が始まる。日本人にとって当たり前の給食や掃除の当番といった特別活動「TOKKATSU(特活)」に着目した作品で、時間への正確さやゴミ拾いなどに象徴される日本人の個よりも集団を重んじ、協調性を育む教育の原点を学ぼうという機運が海外で盛り上がっているのだ。高校野球に密着した話題作「甲子園:フィールド・オブ・ドリームス」に続く、山崎エマ監督(35)の第2弾。日本人とは何かを問う視点は冷静であり、やさしい。

12月13日から凱旋公開

「自分たちで使う教室を、自分たちできれいにしていきます」。女性教諭の呼びかけに新1年生が、幼い動作で片付けを始める。

そんな映画が世界に驚きを与えた。昨年完成。20館で上映し首都では4カ月間ロングラン公開されたフィンランドをはじめ欧米やアジアで公開・放送・配信され、12カ国の映画祭に入選。今年11月から短縮版が、ニューヨーク・タイムズの動画サイトでも配信されている。山崎監督は日本人母と英国人父のもと神戸市で生まれ、大阪府内の公立小に6年間通った。ニューヨーク大で映画制作を学ぶため19歳で渡米した。

海外生活できちょうめんさや協調性をほめられることがあり「平均的な日本人だと思う」と返していたが、この強みの原点は小学校にあったと気付く。「私自身、日本人なのか? と問われて悩んだときもある。日本人って何だろう。映像を記録しながら探りたい」

撮影を許可してくれる小学校を粘り強く探し、東京都世田谷区立塚戸小での受け入れが決まった。だが、準備中に新型コロナウイルス禍が発生する非常事態となる。「このまま進めていいのか迷ったが、コロナ対応で各国の特徴が際立ったこともあり、結果的に規律を守るなど日本的な部分が、より強調されたと思う」

令和3年度4月の入学式から3月の卒業式までの1年間に密着。桜や沿線電車の情景も取り入れながら1年生と6年生に焦点を当てた。撮影は150日700時間に及び、作品には子供たちの笑いや戸惑い、真剣さ、熱血教諭の泣き顔も赤裸々に映し出されている。

日本的な行動の芽が見られることにも刮目(かつもく)だ。校庭を眺めながら「あ、マスクしてない。よくないわ」「よくないね」とつぶやき合う6年生、教材を無くし泣きべそをかいている子をみんなでなだめて探してあげる1年生の姿は、空気を読む同調圧力と、災害時に一致団結する国民性と重なる。「日本の集団性の強さと協調性は、もろ刃の剣」という国学院大・杉田洋教授の教諭たちへの言葉も映画に織り込まれた。

「正解は提示できない。でも、電車が時間通りとか街が清潔とか、海外から称賛されているのに、日本人全体の幸福度が低いのはなぜかなと思っている。私たちはもっと自信を持っていいのでは」と山崎監督。

前作は、平成30年の第100回全国高等学校野球選手権記念大会出場を目指す、横浜隼人(神奈川県)水谷哲也監督とまな弟子の花巻東(岩手県)佐々木洋監督の2人を軸に、控えも含めた球児らの汗と涙と成長に密着。同大会決勝で敗れた金足農(秋田県)の旋風も独自の観点で編集した。

「桜が一瞬だけ咲いて散っていくような青春のはかなさ。勝者よりも敗者に心を寄せる日本人の感性を、ベースボールではない高校野球を通じて伝えたかった」。「KOSHIEN」は日本社会の縮図として、米国スポーツ専門チャンネルESPNで全米放送されるなどの反響を呼んだ。第3弾は、日本企業への長期取材を構想中。「日本人のリアルを、世界に発信していきたい」

「小学校~それは小さな社会~」は12月13日、東京・シネスイッチ銀座を皮切りに順次全国で公開される。本作の原題(英文)は「The Making of a Japanese」。世界が関心を持つ、日本人の成り立ち。当事者としてどう鑑賞しますか? (重松明子)

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