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教員確保の実現へ危機感 国や自治体の努力不可欠 中教審が給与アップを答申

産経ニュース / 2024年8月27日 21時52分

中央教育審議会(中教審)は27日、人材不足が深刻化している公立学校の教員の確保に向けた答申をまとめ、盛山正仁文部科学相に提出した。残業代の代わりに給与に上乗せしている「教職調整額」の引き上げなど処遇改善を明記。長時間労働を緩和するため、働き方改革の加速を要請した。

答申では、教職調整額を「少なくとも10%以上とする」と記載。現行は月給の4%相当だが、文科省は13%に増額する考えで、来年度予算の概算要求に計上する方針だ。

働き方改革では、終業から次の始業までの休息時間を明確にする「勤務間インターバル」を、11時間を目安に導入することを推奨。残業時間の目標値を「全教員が月45時間以内」とした。小学5、6年で進めている教科担任制を3、4年にも拡大することも求めた。

踏み込み不足の指摘も 中教審答申

27日の中教審の会合では、政府に対し、答申が示した施策を着実に進めるように注文が相次いだ。しかし、学校関係者からは、答申の踏み込みに物足りなさを指摘する声もある。抜本的な改革が実現できるのかどうか、動向が注視される。

「処遇改善は予算をどのように確保していくことができるか、ということでもある。財務省への予算要求に盛り込んでいきたい」。盛山正仁文科相は答申を受け取り、こう意気込みを語った。

教員確保は国を担う人材づくりに直結するため、待ったなしの課題だ。答申には、それぞれの施策をいつまでに終えるのかを示した工程表が盛り込まれ、危機感の高さをうかがわせた。

答申が示した施策の実行には、国だけでなく、学校の運営主体である自治体の努力が不可欠となる。先進的な学校改革で知られる埼玉県戸田市で教育長を務める戸ケ崎勤委員は「誰かが何かをしてくれるというのを待っているのではなく、それぞれの自治体がオーナーシップ(当事者意識)をしっかり持つことが重要だ」とくぎを刺した。

答申内容が実現すれば、教員の置かれた状況は大きく変わる可能性がある。例えば、答申は「教師の能力と業績を適正に評価し、その評価結果を昇任、昇給、勤勉手当などの人事管理に活用していく」と明記した。

奈良国立大学機構特任教授の後藤景子委員は「日本の学校の風土と文化に十分になじんでいない側面がある」としながらも、学校現場を変えるためには、こうした評価手法の見直しが必要であることを強調した。

ただ、学校現場の働き方改革が十分に浸透していないため、一部の教員には不信感が根強い。残業代の代わりに教職調整額を支給する仕組みを「定額働かせ放題」と揶揄する声もある。

文科省は、教員給与特別措置法(給特法)の改正案を、来年の通常国会に提出する方針。引き上げられれば昭和47年の施行以来、約50年ぶりとなる。

答申は教育関係者らの関心も高く、27日には現役教員らの記者会見も行われた。参加した高校教諭の西村祐二さんは「肯定的な評価はできない」と辛辣に語った。教職調整額の増額によって、これまで以上に業務負担を強いられるようになるのではないかと危惧する。

小学校教諭の斎賀裕輝さんは「一刻も早く給料を増やすことだけでなく、教師の仕事を減らしてほしい」と訴えた。(玉崎栄次、梶原龍)

教育研究家・妹尾昌俊氏 「答申は出発点、実効的な施策の模索を」

中教審が平成31年にまとめた答申でも学校現場の環境改善が掲げられたが、業務の仕分けといったお金のかからない施策が中心だった。今回は、教職調整額の引き上げなど給与アップにつながる施策が柱の一つとなっている。予算を取っていくという姿勢が打ち出されており、期待がかかる。

教員を魅力的な職業とするためには、指導体制の充実や働き方改革の加速も不可欠だ。受け持つ授業が多すぎて、授業準備の時間を十分に確保できていない教員は多い。答申で示された小学校の教科担任制の拡大は一定の改善効果があるかもしれないが、教員の定数を大幅に増やさない限り抜本的な解決は難しいだろう。

働き方改革の加速もこれまで強調されてきたが、十分な成果が得られていない。管理職に理解がなかったり、保護者の協力が得られなかったりと、学校ごとにさまざまな要因が複合的に絡まり合っている。答申は出発点に過ぎない。文部科学省や自治体がその方針を踏まえて、実効力のある施策を打ち出せるのかどうかが注目されることになる。(談)

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