リアル中学受験 埼玉入試で不合格、初めて涙を流した娘 切れかけた家族の絆を強めたもの リアル中学受験-わが家の場合
産経ニュース / 2024年8月9日 13時0分
中学受験で有名な東京都内のS塾に通い、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学)の系列中を第1志望に決めた、共働きのわが家の娘。6年生の秋から成績が伸び、10月下旬の模試では「合格可能性」が80%を超えました。「このまま頑張ってくれれば…」と祈るような気持ちでいましたが、すぐに厳しい現実を突き付けられました。11月中旬の模試では偏差値が7ポイントも急落して30台に再突入。第1志望の合格可能性は40%になってしまいました。
受験対策は夫主導に
「勉強しないなら、もう受験なんかしなくていいよっ!」。私の仕事の忙しさも重なり、娘に厳しい言葉をぶつけてしまう日々。夫からは「そんなに言うなら、たまには早く帰って、もう少し子供の面倒みたらどうなんだ!」と怒られる始末でした。家庭内の雰囲気は険悪になり、夜に泣きながら自宅を飛び出し、ビジネスホテルに1人で泊まることもありました。
この頃からわが家の中学受験対応は完全に夫主導となりました。分厚い受験案内の本とS塾で配られた「中学入試日別偏差値一覧」を見比べながら、具体的な戦略を立てはじめました。一方、娘の偏差値はと言うと、その後も坂を転げ落ちるように下がり、12月上旬の最後の模試では第1志望校の合格可能性がなんと30%に。私が心の中で「本命」にしていた中高一貫女子中も40%になっていました。
1月中の合格を「お守り」にしたくて…
首都圏の私立中の入試は、埼玉県では1月10日、千葉県では1月20日、東京都と神奈川県では2月1日から本格的に始まります。各校が複数回、午前と午後に入試を行うので、何回か同じ学校を受けるチャンスがあります。都内の子供の多くが本命校を受ける2月1日にコンディションをピークに持って行けるよう、親は受験日程を考えていきます。
S塾との最終保護者面談で夫が立てた戦略を伝えると「非常によく練られていますね」とお褒めの言葉をいただきました。さらに「1月の埼玉の入試で合格を持っておけば、安心して2月を迎えられますよ」とアドバイスされ、1月10日に、最終模試で合格可能性80%だった埼玉の学校を受けました。先生からも「大丈夫でしょう」と太鼓判を押されていましたが、6千人近い受験生が集まった会場の雰囲気にのまれたのか、まさかの不合格。勉強に関して泣いたことのなかった娘が初めてポタポタと涙を流し、「明日からは学校を休ませてほしい。家で受験勉強させてほしい」と言ってきました。さらに1月20、21日には千葉県内の2校を受験しましたが連敗。悪い流れを食い止めようと、2日後に夫が探してきた埼玉の中学を受験させました。ここでようやく得た「合格」が家族の精神安定剤になりました。学費が免除される特待生での合格で、娘の自信にもつながりました。
2月の本番に向け、夫は日程調整の仕上げに入りました。2月1日は午前中に第1志望を、午後には合格可能性の高い学校を受験するというふうに組み立て、だめだった場合はどうするのか、ほとんどの学校の試験が終わる2月5日までビッシリとした計画表を作りました。さらに、中学受験経験者の同僚のアドバイスや協力により、この間の業務も調整してもらえたことが本当にありがたかったです。
とうとう迎えた2月1日。「初戦」の第1志望の系列中は不合格でしたが、午後に滑り止めとして受けた女子中に合格してほっと一息をつけました。2日目は午前中行われていた、私の「本命」の女子中が不合格だった一方、合格可能性40%だった別の学校に合格し、かなり精神的に楽になりました。3日午前は再び第1志望にトライするも不合格、4日にダメ元でもう一度、女子中を受けました。
この頃になると、控え室で受験する子供を待つ親の方にも悲壮感が漂います。受験のお手伝いをする在校生の制服姿がまぶしく見えるのでした。
休憩時間の復習が奏功
インターネットによる合否結果の発表は、受験当日の夜に行われることが多く、自宅で食卓を囲みながら2度目の女子中の発表を待ちました。緊張が高まる中、最初の確認の役割を担った夫が、娘に差し出したスマホの画面をのぞき込むと「合格」の2文字が目に飛び込んできました。
受験を通じて、家族がバラバラになりそうになったり、絶望に打ちひしがれたり、さまざまなことがありました。仕事に追われる日々で、限られた時間を何とかやりくりして学校を選んだり、週末ごとに過去問を解いて一緒に復習をしたりすることで家族が結束していくことを実感することができました。
最後にこぼれ話をひとつ。娘が女子中を受験した初日、テストの合間の休憩時間を惜しんで国語を復習し、意味を確認しておいた「青菜に塩」(急に元気がなくなってしまうこと)ということわざが、2日目の問題に出てきたそうです。「すごい偶然だよね!『青菜に塩』を覚えていたから合格できたのかも。パパが塩分の取りすぎは血管によくないって、いつも言ってたから覚えやすかったんだよね」と笑顔で語る娘。「ママはずっと女子中がいいと思っていたんでしょ。顔に書いてあったよ」とも言われました。親が思っているよりも子供はいろんなことに気が付いているんですね。(終わり)
M&M(一人娘の母、会社員)
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