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「危機感」地域差浮き彫りに 学校の防犯機器整備、事件のあった付属池田小は警備員配置

産経ニュース / 2024年6月28日 19時15分

関西国際大学の中山誠教授

全国20政令市の市立小中学校約4千校のうち約2割の学校で、不審者の侵入防止対策に有効とされる防犯カメラとオートロックシステムがいずれも整備されていなかったことが、産経新聞の調べで明らかとなった。文部科学省は不審者の侵入に警戒を強めてはいるものの、ハード面での整備状況は地域の危機感などによって大きく異なる。

文科省は、昨年3月に埼玉県の市立中で無施錠の校門から刃物を持った男子高校生が侵入した問題を受け、登下校時以外の校門の施錠や来校者の確認などを各教育委員会に通知。不審者が侵入した際の対応のあり方を明記した危機管理マニュアルの再点検を求めるとともに、防犯カメラやオートロックを整備した学校側への補助を手厚くしている。

ただ、産経新聞が実施したアンケート結果によると、地域との兼ね合いで機器の設置が難しいと回答した市もあった。

防犯カメラまたはオートロックの設置率が小中ともに5割以下だった静岡市では、ある学校で防犯カメラの導入を検討したものの、PTAなどからの指摘で頓挫した。同市の担当者は「どこにカメラを設置しても近隣の家を捉える。プライバシーへの配慮を優先させた」といい、設置の難しさを強調。「常に施錠している門を乗り越えないと校内へ侵入できない」とも述べ、現状の対策で問題は生じていないとの認識を示した。

設置率がほぼ100%の横浜市では、ある学校で防犯カメラに加えて新たに校門へのオートロックの整備を検討したが、地域住民向けの通路が校内を貫く形で存在することから整備を見送らざるを得なかった。同市の担当者は「オートロックの整備が地元排除とも受け止められかねず、難しい問題だった」と漏らす。

整備ゼロの学校も…一方で池田小は

アンケートの回答に応じた19市のうち、小中約200校を管轄する広島市は唯一、いずれの整備もゼロだった。安全対策について同市の担当者は「原則として門の施錠を徹底し、児童生徒の登下校の時間帯は教員の立ち合いのもとで開門している」とし、閉門中に訪問があった際には、「職員が手動で門を解錠している」と説明。防犯カメラとオートロックの今後の整備については「検討中」とした。

校舎への不審者侵入で児童8人が犠牲となった大教大付属池田小(大阪府池田市)では、事件から23年が過ぎてもなお警戒は厳重だ。

事件後、来校者の進入路を正門に限定した上で警備員の配置を継続。職員が来校者を直接確認した上で玄関扉のオートロックを解錠し、不審な点があれば警察への通報も辞さないという。近隣の市立小学校も校門に警備担当者を配置するなど防犯意識は高く、池田市では来年度までに全ての小中学校に防犯カメラを設置するとしている。

付属池田小の真田巧校長は、全国で相次ぐ不審者の侵入を踏まえ「事件をひとごとと思わず、対策に改善を重ねてほしい」と呼びかけている。

非常通報装置は全体の1割

産経新聞が全国20政令市を対象に実施したアンケートでは、防犯カメラとオートロックシステムに加え、文部科学省が導入を推奨する警察直通の非常通報装置の整備状況についても尋ね、各市から回答を得た。

不審者の侵入時に、ボタンを押すだけで110番ができるというメリットがあるものの、使用が緊急事態に限られることなどから、整備済みは大阪、神戸両市の約530校。整備率は全体の12%にとどまる。

ある自治体では、大阪教育大付属池田小事件を受け、全域の市立小中学校に非常通報装置を整備した。ただ、正しく作動するかどうかの確認頻度は4~5年に1回程度。自治体の担当者は「つながらずに問題になったとの報告はない」というが、導入から20年以上が過ぎ、老朽化で装置が突然使えなくなるとの懸念もある。

警察関係者は「いざというとき、機器が性能を存分に発揮しなければ設置の意味がない。動作確認や訓練を怠らないことが大切だ」と警鐘を鳴らしている。

防犯機器は「犯罪抑止に有効」 関西国際大学心理学部教授・中山誠氏(犯罪心理学)

防犯カメラやオートロックシステムの設置によって、学校への侵入を試みる不審者に犯行を思いとどまらせる効果は確実に期待できる。近隣住民の反対などを理由に、防犯カメラの設置に後ろ向きな学校については、子供を守るという当事者意識が欠如しているといわざるを得ない。政令市に限っても、いまだ2割もの学校が未整備という現状は放置してはならず、迅速に整備を進めるべきだ。

「日常活動(ルーティンアクティビティ)理論」という犯罪理論では第三者に目撃される可能性の低い場所で、加害者と被害者が遭遇するとされ、いわゆる監視性を高めることが犯罪の芽を摘むことに直結する。

ただ、本来は防犯機器の整備だけではなく、人を配置して出入りを監視するのが望ましい。二重三重に犯罪防止策と侵入された際の備えを講じるべきだが、凶悪事件が1カ所で頻繁に起きるわけでもないので、費用対効果などから、自治体間で温度差が生じる。

文部科学省は学校の安全を自治体任せにするのではなく、もっと主体的に推し進めるべきだ。

大教大付属池田小事件 

大阪教育大付属池田小学校の校舎に平成13年6月8日午前10時10分過ぎ、当時37歳の宅間守元死刑囚が侵入し教室にいた児童らを包丁で次々と襲った。2年の女児7人と1年の男児1人が犠牲になり、1、2年の児童13人と教員2人が重軽傷を負った。現行犯逮捕された元死刑囚は15年に殺人罪などで死刑判決を受け、16年9月に執行された。国と学校は安全管理の不備を認めて遺族に謝罪し、賠償。事件は各地の学校で安全対策を強化する契機となった。(木ノ下めぐみ、小川恵理子)

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