リアル中学受験 「親は教えないでほしい。塾に任せてください」というので塾を辞めました リアル中学受験-わが家の場合
産経ニュース / 2024年6月14日 13時0分
「2月1日」。その響きに特別な感情を抱く方はどれくらいいるでしょうか。そう、東京・神奈川の中学受験が一斉に解禁される日です。かつて、その日にわが子を受験会場に送り出した方、自らチャレンジした方、そして、これからその日を親子で迎えようとしている方…。この企画は、「かつて」から「これから」の人に送る体験談です。もちろん「1月組」の関西圏の経験者も登場します。「成功組」も「失敗組」もいます。浪人という選択肢はあり得ない中学受験。6年生の冬、たった一度しか経験できない人生の岐路をどのように迎えたのかを多くの人に語ってもらいます。できるだけリアルに。
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2人に1人以上が中学受験する公立小
首都圏では5人に1人がするという中学受験ですが、2人の娘が通っていた都内の公立小は2人に1人、いや、体感としては6~7割いたような気がします。「教育熱心な家庭が多い」という側面もあるかもしれませんが、むしろ両親が共に仕事を持っており、3年生の終わりに放課後の学童保育が終了すると、その代替として中学受験塾に通わせていたというのが正確かもしれません。
わが家は夫婦ともに地方の公立高校出身で中学受験の世界など全く知りませんでした。上の娘が塾に通い始めたのも周囲のように4年生からではなく、5年生から。一緒に遊んでいた子たちが次々と塾へ通い出したことも一因ですが、何より大きかったのは「東京では高校入試の入り口が減っている」という声を妻がママ友から聞いたことでした。
わが家の受験は数年以上前ですが、当時から都内の私立高校は併設中学との一貫化を進めており、高校受験から入れる学校が年々少なくなっていました。それなら公立中から都立高という方法もありますが、滑り止めなどの併願先まで考えると、かなり選択肢がしぼられてしまいます。実際調べてみると、高校から入れるのは大学付属などが多く、自宅からの通学距離などを考えると、「中学受験一択」を考えざるを得ませんでした。
社会ぐらい一緒にできるのでは
周囲より遅いスタート、と言っても実際には大きな影響はなかったと思います。ただ当時はこの遅れを気にして、いわゆる大手受験塾でなく、中規模塾に入れたのですが、なかなか成績は伸びませんでした。四谷大塚模試で偏差値50程度。科目によっては40台もありました。宿題だけでも手一杯の状態でしたが、勉強していないわけでもなかったのです。
「4年生から塾に入れておくべきだった」「やはり大手に代えたほうがよいのでは」…。もう5年生も半ばを過ぎています。今から転塾などを考えたところで、そこが合わなかったらどうするのか。ここで改めて考えました。そもそも娘は何を勉強しているのか、成績だけを気にしていたのではないか。それまで眺める程度だったテキストを改めて熟読してみたのです。
まずは取つきやすそうな社会。5年生は地理がメーンです。覚えろと言われれば確かに大変ですが、都道府県の特徴や工業地帯など、大人からみれば聞いたことはあるような知識が多いのです。これくらいなら一緒に勉強できるのでは、と思いました。
次に理科。こちらは難しい。植物や水溶液の種類などの暗記はもちろん、計算式などが登場すると引いてしまいます。ただ、一応は小学生向けに書かれたテキストです。順を追って読み、実際に問題を解いてみると、娘がどんなところで躓いているのか、どこが小学生にとっては理解しにくいのかが何となくわかるのです。
国語はそもそも苦手なようでした。中学受験の全体像がつかめた今では教え方も何となくわかるのですが、当時はどうしていいやらという感じでした。そして最大の難関は算数です。これも今だから実感するのですが、大学受験で英語が最も大事なように、中学受験は算数がすべてと言ってもいいようなものです。大抵の学校は国語、算数の配点が高く、点差が開きにくい国語に対して、算数はそれだけで合格に近づくような子がいるのです。
算数は妻がやると言いました。別に得意というわけではなかったのですが、「教える」というより「一緒にやってみたい」と言うのです。この「一緒にやる」というのはとても大事なのではないでしょうか。
子供に「戦略」はない
テレビドラマにもなった「下剋上受験」の著者で、産経ニュースで「攻める中学受験」を連載している桜井信一さんは娘を塾には行かせず、全科目を自分で教え、一緒に解いたそうです。そこまで、とは言いませんが、「勉強しなさい」「予習したの」などと言うだけでは何も解決しないことは、皆さん共通の経験ではないでしょうか。
「一緒にやる」ことの大きな利点はもう一つあります。これは桜井さんも述べていることですが、子供は暗記したり、問題を解いたりという勉強そのものはできますが、「戦略」は持っていないのです。まだ小学生なので当然ですが、大人から見れば「どの順番で解くのが効率的か」「どの部分が基礎で、どこからが応用なのか」「どの問題はできて、どの問題はできなくてもいいのか」などが何となくわかってくるのです。
反抗期でもなかった娘は、親が一緒に勉強してくれることを心強く思ってくれたようでした。親から見れば「この問題はできるのに、さっきの簡単な問題はなぜできなかったのか」「これができないのは、そもそも暗記不足だろう」などと気づいてきます。
多少でも偏差値を上げて本人のモチベーションを高めようと、模試前には暗記勉強を繰り返したりもしました。その結果、全体偏差値は50台後半に底上げされ、暗記の社会は60台後半まで伸びたのです。
親子ともども何となく視界が開けたような気がしました。5年生の終わりごろです。さっそく塾の面談で、「実は家で一緒にやっているんです」などと少し得意げに話すと、その塾の先生は顔色を変えてこう言いました。
「親御さんは教えないでください。子供が混乱します」「今は暗記科目ができても仕方がないです」「すべて塾にお任せください」。
その塾で伸びなかったのではないか。私は怒りというより、ここに任せて大丈夫かと思い、その場でこう言いました。
「では、塾を辞めさせていただきます」。妻も二つ返事で賛成しました。<続く>
真砂町小町(2女の父、会社員)
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