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「うえの」と「したの」動物園を満喫 子供ならではの視点に「はっ」として大笑い 息子は3歳 還暦パパの異次元子育て

産経ニュース / 2024年5月6日 9時0分

3歳の息子は、メタセコイアの森から小さな落とし物(球果)を見つけてきた

60歳。けれど父になってまだ3年。そんな記者が家族の日常をつづります。

「タンポポさん、おはよう!」

保育園の行き帰りにいつも通る小径(こみち)。息子が突然、しゃがみこんで話しかけた。草むらから、ひときわ生命力のある黄色い花の群れが顔を出している。一斉に話しかけているように見えたのかもしれない。

言われるまで気づかなかった。低体重の早産で世に出て、3歳10カ月。ようやく平均身長に近くなり、1メートルまであと少し。その位置から地面を見下ろすようになったのか。

最近では、子供ならではの視点に「はっ」とすることが日常となった。

タンポポに挨拶した翌日の土曜日。きょうはどこに行きたい?と尋ねると、息子は「うえのどうぶつえん!」と即答した。親子で行ったことはないし、話題にしたことも、テレビで見たこともない上野動物園(東京都台東区)の固有名詞が、なぜ出てくるのか。

この子は天才なのか、と親ばかの頭でしばし考える。「保育園の年長のお友だちが、遠足で行ったらしいわよ」とママ。すぐに支度を整えた。

散ったばかりの桜の花びらが舞い、初夏のような陽気の中、キリン、サイ、カバ、ホッキョクグマ、ゾウ…と見て回る。小さいTシャツに汗がにじむ。「わー」「すごいね」「こうやって動いている」と感嘆の声をあげる中、一番人気のパンダ舎へたどりつく。

子パンダのシャオシャオとレイレイは、あまりの行列なのであきらめて、父パンダのリーリーのいる屋外の観覧場へ。息子の視線の先、大きな岩の上にいたリーリーはうつぶせになり、歓声にも微動だにしない。子パンダの飼育場から離れたところで、気持ちよさそうにグースカ寝ていた。

そんな姿にがっかりしたかと息子の顔をのぞき込むと、ニコニコ笑いながら、「パンダさん寝ていたね。パパみたい」。

初めてパンダに親近感がわいた。

記念にぬいぐるみを買ってやろうと、手をつないで売店に入る。上野のパンダ人気を象徴するように、抱えきれないくらい大きなもの、さまざまなポーズのものなど、多種多様なパンダのぬいぐるみがあった。どれを選ぶのか、手を引かれるまま棚に近づくと、息子は迷うことなく、「これ!」と、自分の目と同じ高さの棚にあったうつぶせのパンダを手に取った。

ちょうど3歳児が腕で抱えられる大きさ。大人の目の高さだと視界には届かない。売り場の人もよく考えるものだなと感心した。

帰宅後、一緒に風呂につかりながら、どの動物が好きか聞いてみた。

「怖かったけど、コウモリさん! あと、パンダさんも」

意外な順番だったが、これもママに聞いて氷解。いつも熱中しているタブレット端末のゲームに、コウモリのキャラクターが登場するそうだ。

そして、次の答えはまったく想像の斜め上をいっていた。また行きたいかと尋ねると、「うん。うえのどうぶつえんも、したのどうぶつえんも面白かった。またいきたい」と、真顔で言う。ママと顔を見合わせて大笑いしてしまった。

上野動物園は、不忍池(しのばずのいけ)に隣接したパンダのいる西園と、〝上野の山〟と呼ばれる台地にあってトラやクマのいる東園の2つに分かれ、橋で結ばれている。

途中の坂を上ったり下りたりしたので、息子の頭の中では「上の」「下の」と整理されていたようなのだ。うまいこと言うなあ。

ベビーカーを卒業して、子供の手を引いて歩くようになってから、車や自転車が飛び出してこないか、周囲の安全ばかりに気を取られていた。

子供の視点からだと何が見えているのか。物理的にも感情的にも、もう少し感じてみなくては。

中本裕己

なかもと・ひろみ 昭和38年生まれ。前「夕刊フジ」編集長。昨年末に還暦を迎え、再雇用で引き続き同編集局で勤務中。著書に『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました』。

感想や質問をお寄せください。

(メール)life@sankei.co.jp

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