日本棋院の新理事長に武宮陽光六段を選出 異例の40代、棋士代表選挙で前理事長に勝利
産経ニュース / 2024年7月9日 18時36分
囲碁の公益財団法人、日本棋院(東京都千代田区)は9日、理事会を開き、4月の棋士代表選挙で理事長候補者となった武宮陽光六段(47)を新理事長に選出した。日本棋院の理事長には平成以降、外部の財界人や名誉称号保持者などの有力棋士が就任してきたが、40代の棋士が就任するのは極めて異例。
武宮氏は東京都出身で、父は「宇宙流」と呼ばれる棋風で知られる武宮正樹九段(73)。理事長選出後の記者会見で、武宮氏は「私が選ばれたのは新しい風を期待されてのことだと思う。近々に経営改革委員会を立ち上げ、財務状況の改善や会館の老朽化問題に重点的に取り組みたい」と抱負を述べた。
日本棋院によると、これまで理事長は外部から財界人を招聘するケースが多く、選挙で決めたことはなかったという。前回平成31年の理事長選出では、理事長だった財界出身の団宏明氏が日本棋院の経営悪化を理由に任期途中で辞任したため、副理事長だった小林覚九段(65)が理事長に就任していた。
今回は棋士の親睦団体である棋士会で4月に選挙を行い、理事長候補者として棋士代表を選出することに。武宮氏と小林氏の2人が立候補し、棋士による投票の結果、武宮氏が選ばれた。
日本棋院の経営状況を巡っては、事業収益が平成30年度の約30億円から令和5年度には約23億円にまで減少。タイトル戦でも、最も長い歴史を持つ本因坊戦が今年から規模や賞金額を縮小するなど、厳しい状態が続く。
小林氏は4月の棋士代表選挙で、再開発に伴う日本棋院東京本院ビル売却など経営改善のための改革を訴えたが、支持が広がらなかったという。
日本の囲碁界は1990年代後半から、国際棋戦の舞台で中国、韓国の後塵を拝するようになった。その要因の一つが囲碁人口の減少だ。2016年の国際囲碁連盟の調査では、「囲碁のルールを知っている」人数は中国3千万人、韓国800万人に対し、国内の囲碁参加人口は350万人(日本棋院推計)と大きく水をあけられている。
新理事長には国際棋戦で活躍できる棋士の発掘・強化に加え、さらなる囲碁の普及策の推進も求められる。
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