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上皇さま譲位から5年 象徴としての「帰結」、時代に合った形に 二重権威にもご配慮 譲位5年

産経ニュース / 2024年4月27日 16時36分

赤坂御用地を散策される上皇ご夫妻=昨年10月、東京都港区(宮内庁提供)

雨にぬれた石畳の上を進む傘の列。その中に、モーニングを着た上皇さまのお姿があった。

今月9日、昭憲皇太后の命日に際しての明治神宮ご参拝。上皇さまは天皇陛下、皇后さまのご拝礼後、ゆっくりとした足取りで境内を進まれた。公の場に姿を見せられたのは、約5カ月ぶり。続いて参拝した上皇后さまが階段でバランスを崩され、女性護衛官に支えられる場面もあった。

上皇さまは昨年卒寿の90歳を迎えられ、上皇后さまは89歳となられた。健康維持に努められているが、加齢に伴う自然な体力の低下は避けられない。「被災地見舞いや海外訪問を在位中と同じようになさることは、ご負担を考えると難しかっただろう」。ご夫妻を知る関係者はそう明かす。

生じうる懸念を、誰よりも先に予見されていたのは、上皇さまだった。

「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていく」

「これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」

平成28年8月、上皇さまが宮内庁を通じて公表された、約10分間のビデオメッセージ。制度への言及は控えつつも、公務の縮小による負担軽減や、摂政を置く選択肢は否定し、「譲位」の意向をにじませられた。

ご意向が水面下で示されたとされる時期と重なる平成17~24年、宮内庁長官を務めた羽毛田信吾氏は「象徴天皇とはどうあるべきか、を考え抜かれた上でのお言葉。国民一人一人と接し、心を通わせる『実践』あってこそだという、平成の天皇としてのなさりようの一つの帰結だった」と振り返る。

ビデオメッセージは衝撃とともに国民に受け止められ、皇室典範特例法によって31年4月30日、譲位は実現した。元幹部の1人は「実現するまで誰も思い至らなかったが、皇室の長い歴史の中で行われてきた譲位を、時代に合った形に生まれ変わらせられた」とその意義を捉えなおす。一方、「恒久的な制度とするためには、天皇の意思をどのように確認するかを規定する必要がある」と指摘する。

譲位後、一切の公務から退く

譲位に際し、一部の有識者が懸念した天皇と上皇の「権威の二重性」。

上皇さまは譲位後、一切の公務から退き、上皇后さまとともに皇居から赤坂御用地に移られた。皇室の重要事項を審議する「皇室会議」の昨年の選挙では、予備議員に選ばれた上皇后さまが「上皇さまのご意思を反映しているとの誤解を招く可能性がある」として辞退される一幕もあった。

両陛下のご活動に影響を与えてはならないという配慮は、公の場に出ることを控える、ご夫妻の静かなお過ごしようにもにじんでいる。

「譲位の将来的な評価は、日本国憲法下で例のない上皇という存在が、国民にとってどのようなものであったかという評価をも含む。一日一日を、慎重に積み上げられている」。ご夫妻に近い関係者はそう推し量る。

一方、終戦の日の黙禱など、在位中から続くご夫妻のお姿もある。元日の能登半島地震後にはすぐにテレビをつけ、暗くなっていく被災地の映像を見ながら、被災者を案じられていたという。側近は「お立場を離れても絶えず国民の状況を案じ、心を傾けておられる。そのご姿勢は、終始変わらない」と話す。(緒方優子、吉沢智美、伊藤弘一郎)

上皇さまは30日、譲位から5年を迎えられる。202年ぶり、近代の皇室では初となる譲位は皇室典範特例法により実現し、「象徴としての務め」は切れ目なく、令和の天皇陛下に継承された。90歳となった上皇さまは公務から身を引き、上皇后さまとともに静かに過ごされている。関係者や識者の言葉を交え、改めて譲位による代替わりの意義と課題を考える。

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