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子供と本に心寄せられた上皇后さま エッセー、ベトナム語に翻訳 現地女性ら

産経ニュース / 2024年10月20日 0時5分

上皇后さまのお人柄について語る、末盛千枝子さん=令和6年8月、岩手県八幡平市(緒方優子撮影)

20日に卒寿を迎えた上皇后さまは長年、子供と本を結ぶ活動に心を寄せられてきた。その横顔を、親交の深い編集者がつづったエッセーが今年6月、ベトナム語に翻訳され、製本された。中心となって手がけたのは、上皇后さまに「励まされた」という1人のベトナム人女性だ。女性は「上皇后さまのご存在が、ベトナムの子供たちに読書を広げる活動の大きな力になっている」と話す。

「根っこ」と「翼」

エッセーは、絵本編集者の末盛千枝子さん(83)の著作「根っこと翼」(新潮社)。平成31(2019)年3月に日本で出版され、その後文庫化された。表題は1998年、インドで開かれた国際児童図書評議会(IBBY)の大会に、上皇后さまが寄せられたメッセージに由来する。

「子供達が、自分の中に、しっかりとした根を持つために」「喜びと想像の強い翼を持つために」。上皇后さまはビデオによる基調講演で、幼少期の読書体験の大切さについて語り、子供の本を通しての平和を目指すIBBYの活動を、力強く後押しされた。

末盛さんはこの時のご講演録「橋をかける」の出版も手がけるなど、上皇后さまと30年以上に渡り親交を深めてきた。

エッセーでは、上皇后さまの本とのお関わりだけでなく、一人の女性、母親としての「素顔」も紹介。時に率直な言葉も用いながら、思い出の一つ一つを、いとおしむようにつづっている。

手の温もり、今も

今回、ベトナム語版を手がけたレ・ティ・トゥ・ヒエンさん(46)は2017年、ベトナムを訪問された上皇后さまから直接、励ましを受けた。

「緊張していた私の手を握り、ベトナムの子供たちに読書を広げる活動について『頑張ってね』と言ってくださった。その時、大きなエネルギーをいただいたように感じた」(ヒエンさん)。

当時、読書習慣が根付いていなかったベトナムで、子供たちに絵本の読み聞かせを行っていたヒエンさん。この面会を機に、仲間とともに絵本の出版事業を立ち上げ、19年には絵本を病院や学校などに寄贈する非営利企業「橋をかける基金」も設立。これまでに約6万7千冊を寄贈してきた。

昨年からは、上皇后さまのお誕生日周辺を「絵本ウイーク」とし、ワークショップなどのイベントを展開。今年も12日から始まり、多くの子供たちでにぎわっている。

読書普及の先に

「根っこと翼」の翻訳では、作中に多数引用されている上皇后さまの和歌も、ベトナム語で表現した。「まず日本語で何度も読んで、リズムを感じて。その上で意味に合うベトナム語をリストアップし、響きも大切にして言葉を選んでいった」(ヒエンさん)。ベトナムの歴史学者と協力し、約8カ月かけて全体の翻訳が完成した。

今年6月10日に発行した1千部には、日本語とベトナム語を両方収録。日越の協力者や絵本の寄贈先に配り、読書の輪を広げる活動の大きな力になっているという。

「子供たちの読書を通じ、より良い世界をつくっていくという願いを実現していきたい」と話すヒエンさん。卒寿を迎えられる上皇后さまに、「ベトナムでもお祝いの会をします。近い将来、またお目にかかれることを楽しみにしています」と祝意を寄せ、その健康を気遣った。(緒方優子)

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