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省エネハウス普及へ雪国新潟の挑戦、住宅に65万、太陽光発電設備に31・5万円補助も 深層リポート

産経ニュース / 2024年6月22日 8時0分

雪国型ZEHのモデルハウスを視察する新潟県の花角英世知事(右)=新潟市中央区(代表撮影)

2050(令和32)年までの脱炭素化を掲げる新潟県は、家庭から排出される二酸化炭素(CO2)削減に向け、取り組みを強化している。切り札とされる省エネルギー住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の県内での普及を加速させるため、産学官に地元の金融機関も加えた「産学官金」からなる協議会を発足させ、導入の機運を盛り上げたい考えだ。地球温暖化への危機感は人により異なるため、家庭での排出削減は一筋縄ではいかないとされる。新潟県の取り組みの成否が注目される。

厳しい断熱性評価基準

令和3年度の県内での温室効果ガス排出量は約2300万トン(速報値)。うち、家庭からの排出は約350万トンと全体の約15%を占める。花角英世知事は「家庭で排出量が一番多くなるのは、暖房にエネルギーを使う冬。そこを抑えることができれば、2050年カーボンニュートラルに近づくと思う」としている。

その切り札として期待されているのが、県が断熱性能などで国より厳しい独自基準を設け、普及を進める「新潟県版雪国型ZEH」だ。

例えば、夏の暑さ、冬の寒さを室内に入れないように遮断する断熱性能(UA値=屋根や壁などが熱をどれくらい通しやすいかを示す数値)について、国のZEH認定基準では0・6以下だが、県の独自基準では地域により0・46以下または0・48以下と国より厳しい。暖房で消費するエネルギー量を減らすには、室内に入ってくる寒さを遮断し、室内の温もりをより逃がしにくくする必要があるためだ。UA値が小さいほど、断熱性能は高くなる。

普及拡大のエンジンに

県は4月、新潟県版雪国型ZEHの普及を進めるため、住宅関連団体、金融機関、有識者、県内全30市町村で構成する「県雪国型ZEH推進協議会」を立ち上げた。会長には、豪雪地域でのZEH導入を研究する長岡技術科学大の上村靖司教授が就任。知事は「関係者が意識を合わせることで、雪国型ZEH普及拡大のエンジンになってほしい」と期待する。

協議会では、情報の共有や県民への雪国型ZEHの周知などが主な活動となる。

県は5年度から、県民向けに雪国型ZEHの導入に定額65万円、屋根への太陽光発電設備設置に31万5千円を上限に補助金を支給。同年度は、ZEHに72件、太陽光発電に41件の支援実績があり、今年度も申請を受け付けている。

今年4月からは、雪国型ZEHを設計、建設するプランナーやビルダーの登録制度をスタート。県ホームページで登録業者を紹介し、導入機会の拡大を狙う。

新築2割をZEH化

知事は5月初旬、新潟市内にある雪国型ZEHのモデルハウス(木造2階建ての3LDK)を視察。「家全体の冷暖房を8畳用の家庭エアコン1台でできるというのはすごい。建て直しや住宅取得を考えている県民のみなさんには雪国型ZEHを意識してほしい」とアピールした。

県は中間目標として、2030(令和12)年度の温室効果ガス排出量の13(平成25)年度比46%削減を掲げる。これを実現するため、家庭部門では、毎年新築住宅1万1千戸の2割をZEH化することを目指す。

上村会長は「協議会がエンジンとなり、雪国型ZEHの普及拡大が進むと期待している。目標の2割より、もっと上を目指していけるのでは」と自信をみせている。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 省エネ設備の導入や断熱性能の向上により住宅の消費エネルギー量を減らすとともに、太陽光発電や蓄電池を導入し、生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅のこと。光熱費を節約できるほか、室温を一定に保ちやすいため快適な生活を送れ、急激な温度変化による健康被害を防ぐ効果もある。地震などの災害時も電力を確保しやすいというメリットもある。

~記者の独り言~ 資源エネルギー庁の資料によると、令和4年度の全国の新築戸建て住宅でのZEH普及率は、注文、建て売りを合わせて22・8%。まだ4棟に1棟程度の割合で、家庭の二酸化炭素(CO2)排出量削減を進めるには、さらに普及を加速させる必要がある。冬を快適に過ごしやすくなるZEHは、新潟のような雪国で恩恵が大きいとされる。その恩恵をいかに県民に理解してもらい、導入してもらうか。行政の手腕が問われる。(本田賢一)

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