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「生物多様性を肌で感じて」こだわり展示で個性を見せる 上野動物園の冨田恭正副園長

産経ニュース / 2024年6月11日 11時0分

生物の個性を楽しく伝える上野動物園の展示=6月、東京都台東区(黒田悠希撮影)

ペンギン、ワニ、ニシキヘビ-。東京都内の動物園や水族館で多くの生き物の飼育係を経験し、現在は上野動物園(台東区)の副園長を務める冨田恭正さん(59)。昨年は日本で生まれたジャイアントパンダ、シャンシャンの中国返還に同行した。この春からは教育普及課長も兼務し、動物園を人々に発信する役割を担っている。この仕事で実感したのが、生き物ごとのユニークさと、そのかけがえのなさ。「動物園を通じ、生物多様性を守ることの重要性を肌で感じてほしい」と、多くの人に来訪を呼び掛ける。

虫好きから動物園へ

昭和63年、東京都に就職し、上野動物園に配属された「昭和最後の飼育係」だ。

最初の年は動物病院で獣医師の指導を受けながら入院動物の世話などを行い、当時、同園で生まれたばかりだったパンダのユウユウの世話にも関わった。平成元年にオープンした葛西臨海水族園(江戸川区)の開園準備にも携わった。

「昔は上野動物園内に4階建ての水族館がありました。そのスペースが準備室となって、そこでいろいろと準備をしながら向こうへ移動していったわけです」と振り返る。

動物園で働くことになったきっかけは「虫が好きな子供だったから」。中学生のころ、多摩動物公園(日野市)の昆虫展示施設「昆虫園」の職員に、「ここで働きたい。どうしたら入れてくれますか」と、相談をした。

当時の仕組みではまず都に畜産職で就職した後に、動物園の飼育係になって運が良ければ昆虫園を担当できると助言を受けた。それで畜産系に進んだが、「やってみると畜産も面白かった。学生時代は豚の研究をしました」。

これまでにペンギン3種、爬虫類10種、昆虫などさまざまな動物を飼育してきて重要と感じるのは、「(相手の動物を)知った気になるな。とにかく観察をして動物から教えてもらう」ことだという。

動物園の役割

長い動物園勤務経験の中で、絶滅危惧種の保全活動にも携わってきた。トキの保護増殖や、小笠原諸島に生息する日本固有のアカガシラカラスバトの繁殖などだ。

そうした経験などから、生物多様性の大切さを伝えることが、動物園の役割の一つと考えている。「生物多様性を維持することは難しくなっている。それを守ることの重要性を感じてほしい」からだ。

生物多様性という言葉の認知度は高いとはいえない。

令和4年の内閣府世論調査では「言葉の意味を知っていた」と答えた人の割合は29・4%。「意味は知らないが、言葉は聞いたことがあった」が43・2%、「聞いたこともなかった」が26・5%となっている。

ユニークさ伝える工夫

現在の動物園は、1個体あたりのスペースを以前よりも広くとるようになっているといい、一度に見られる生物種の数は減った。

ただ、生物多様性は単に種が多いことを指すだけの言葉ではない。遺伝子の多様性や、生態の多様性も含まれる。

それぞれの種にユニークさがあることを知ってもらいたいと、冨田さん。「人間とは全く違うところ。たとえば、ゾウのうんちってこんなに大きいんだとか、キリンってこんなに首が長いんだな、とか」

逆に、人間と共通する点を持つ動物もいる。こうした気づきの一つ一つが、生物多様性への関心の第一歩だと考えている。

生物が持っている個性、生態を、どれだけ自然に見せられるかが、展示における工夫のしどころだ。

ゾウの展示スペースにプールを設置して泳ぐ様子を見せたり、高いところに餌を置いて、鼻を伸ばして食べる様子を観察してもらったり。それが見せられれば、スタッフの説明もより伝わりやすくなる。

「(生物多様性を)動物園で教える、というよりもきっかけになれればと。そのために地道に愚直にやっていくことが大事だと思っています」

(黒田悠希)

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