死んだ細胞が〝老い〟を抑制 糖尿病や認知症治療に光明
産経ニュース / 2024年7月19日 12時55分
東北大などの研究チームは、鉄依存性のプログラム細胞死・フェロトーシスを起こした細胞から、老化を抑える働きをもつタンパク質(FGF21)が分泌されることを発見した。老化によって引き起こされる糖尿病や痴呆症の治療の開発に期待できるという。
デジタル大辞泉によれば、プログラム細胞死とは特定の細胞が特定の場面で自らを消去する仕組み。
細胞はあらかじめプログラムされた遺伝子発現の順序に従い、〝死〟を迎える。幼児の指は、指と指の間の細胞が死ぬことで出現する(アポトーシス)、壊死(ネクロプトーシス)、細胞が自らの成分を破壊したり、分解したりする働き(オートファジー)-などが知られる。
鉄に依存した細胞死・フェロトーシスもそれらの一種で、生体内でがん細胞を取り除く働きは分かっていたが、生体内での意義は不明だった。
東北大大学院医学系研究科生物化学分野の西澤弘成非常勤講師(4月から米コロンビア大に異動)、五十嵐和彦教授の研究チームは、フェロトーシス細胞から老化を抑制するたんぱく質が分泌されることを発見。マウスで実験した結果、このたんぱく質で細胞の老化性変化、肥満、短命といった老化にかかわる特徴が抑えられていることも分かった。
今回の結果は、細胞死によって老化を抑制するという新たな概念を提唱するもので、肥満や糖尿病、認知症、サルコペニア(筋肉量と筋力の低下)といった老化に伴う疾患の治療開発につながることが期待されるという。
発想を飛躍させると、時の権力者が太古から求めてきた〝不老不死〟の福音になるのか。
西澤氏は「さすがに不老不死は難しいと思いますが、鉄などの調節によってフェロトーシスを適切にコントロールすることと、フェロトーシス細胞からのFGF21分泌を効率よく利用する方法を発明することで、将来的に健康寿命を延ばすことはできるのではないかと考えています」と話す。
また、待望される痴呆症の特効薬については、「今回の研究では、神経系への影響は見ておりませんが、FGF21は食欲の抑制など神経系への作用も多く報告されておりますので、様々なタイプの認知症にも将来的に応用できる可能性はあると考えています」と期待を寄せた。
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