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上杉氏、北条氏、奪い合いの舞台 「川越城」(後編) 山城ガールむつみ 埼玉のお城出陣のススメ

産経ニュース / 2024年9月21日 14時0分

西大手方面からの敵に備えて整備された中ノ門堀=埼玉県川越市

川越城は、長禄元(1457)年、関東動乱の真っただ中に扇谷上杉氏の重臣太田道真、道灌父子によって築かれました。古河公方と関東管領上杉氏の抗争に際し、川越城は利根川を挟んで古河公方と戦う扇谷上杉氏の本拠となり、戦乱の渦中に置かれました。扇谷上杉氏の当主は「河越」と呼ばれ、川越城は関東の権威の象徴になりました。それほど、川越城は重要な城だったため、いくつもの争乱を経て台頭してきた小田原北条氏が川越城を手に入れようと攻め寄せてくるのです。

天文6(1537)年、扇谷上杉当主上杉朝興が死去し、朝定が家督を継ぎました。この当主交代の不安定なタイミングをついて、北条氏綱は川越城に向かって進発し、三木(狭山市)で両軍が激突しました。この戦いで北条軍が大勝し、朝定は川越城から松山城(吉見町)に逃げました。これにより、川越城は北条氏の手に落ち、以降、川越城は奪還を狙う扇谷上杉氏と北条氏の戦いの舞台になります。

天文14(1545)年、氏綱の跡を継いだ氏康が今川義元との戦いのために出陣している隙を突き、朝定は関東管領山内上杉憲政、古河公方足利晴氏とともに大軍勢で川越城を包囲。上杉方の攻撃に備えて城を守っていた北条綱成らは籠城戦を繰り広げ、両軍はそのまま年を越しましたが、ついに翌年4月20日、関東の情勢が一変する「川越合戦」が起きたのです。

この戦いは「川越夜戦」とも呼ばれ、日本三大奇襲戦として広く知られていますが、最近では奇襲戦であったことは否定されています。とはいえ、関東の歴史を大きく揺り動かすターニングポイントであることは間違いなく、この川越城でそのような歴史的大事件が起きたかと思うと、現在の川越の町を歩いているだけで興奮を覚えます。

川越合戦は北条方の勝利に終わり、憲政、晴氏は敗走、朝定は戦死し、これにて扇谷上杉氏は滅亡を遂げました。まさに、北条氏の関東支配を決定付ける歴史的大勝利でした。北条氏は川越城を武蔵国支配の拠点として大規模改修し、川越城は北条氏の支城のひとつとして、豊臣秀吉による小田原の役まで存続しました。このような動乱のまっただ中にあった中世の川越城の姿はよくわかっていませんが、江戸時代の本丸、二の丸、三の丸は北条氏の段階の川越城の造りをある程度踏襲していると考えられています。

天正18(1590)年の小田原の役では、城下の商人も川越城に籠もり豊臣軍に備えたと伝わりますが、前田利家の軍勢が攻め寄せ、最後は降伏開城しました。その後、徳川家康の関東入部に伴い、酒井重忠が川越に入封し、以降、代々、譜代の大名が川越に入り、江戸時代を通じて、幕府の重要な城として存続しました。嘉永元(1848年)に造られた本丸御殿は、川越藩17万石の栄華をしのぶことができる素晴らしい史跡です。

このように語り尽くせぬほどの歴史があり、戦国時代には戦いの中心舞台になった川越城。戦国時代の幕開けとほぼ同時期に川越城の歴史ははじまり、「小江戸川越」と呼ばれ、たくさんの観光客でにぎわう今へとつながります。川越周辺、そして川越城に詰まっている歴史を知ることで、街歩きがさらに楽しくなるのではないでしょうか。タイムスリップ気分で歴史ロマンに浸るのも、城めぐりの醍(だい)醐(ご)味(み)です。

(中世においては「河越城」と記される場合が多いですが、今回は「川越城」で統一しています)

 中世の川越城に関しては詳細不明ですが、江戸時代の川越城の姿は豊富に残る絵図から想像して楽しむことができます。絵図などによると、川越市役所部分に西大手、川越第一小学校部分に南大手があったとされています。両方とも、三日月型の堀を伴う丸馬出が造成されていたようです。今でも本丸には本丸御殿が現存していて、本丸西側の八幡曲輪は川越高校、二の丸は川越市立博物館になっています。市立博物館の敷地からは数多くの井戸跡と、16世紀前半の南堀、16世紀中頃の東堀などが見つかっています。また、川越高校の敷地からは、15世紀末の空堀とさらにその堀底から15世紀後半から末の土釜が出土したといい、これらは太田道灌父子による築城当時の可能性が大きいともいわれています。博物館には川越城のジオラマや絵図も展示されているので、ぜひお立ち寄りください。

■山城ガールむつみ

歴史&山城ナビゲーター。歴史コンサルタント。歴×トキ(レキトキ)代表、三浦一族研究会副会長、一般社団法人城組副理事、千葉城郭保存活用会副代表、千葉県匝瑳市シティ・アンバサダーなど。

歴史やお城をテーマにしたイベントやツアー、講座を全国各地で多数手がける。県内でも歴史と城を使った町おこし、地域活性化の取り組みや、各地の歴史発信のための御城印発行プロデュースなどを行っている。(https://www.rekitoki.com/)

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