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山上直子の犬も歩けば 「瞽女(ごぜ)」文化 見えぬ世界の豊かさ紹介 みんぱくで「吟遊詩人の世界」展

産経ニュース / 2024年10月4日 14時0分

盲目の旅芸人・瞽女(ごぜ)が旅で持参していた装束や道具類を紹介する広瀬浩二郎教授=大阪府吹田市の国立民族学博物館

創設50周年を迎えた国立民族学博物館(大阪府吹田市)で記念特別展「吟遊詩人の世界」が始まった。エチオピア、インド、ネパールなど世界各地に古くから存在してきた吟遊詩人を紹介するなか、日本からは独自の文化として存在していた盲目の女性旅芸人「瞽女(ごぜ)」展示が注目を集める。担当するのは全盲の文化人類学者、広瀬浩二郎・同館教授。「彼女たちはかわいそうな人たちではなく、日本を代表する吟遊詩人として活躍した」といい、日本文化の精神性と深く結びついていた瞽女文化を通し、現代社会への問題提起に力を入れる。

盲目の女性旅芸人

「目に見えない世界を音と声で伝えてきたのが瞽女、そして『瞽女唄(うた)』です。盲目の師匠から弟子へと受け継がれ、農村を回って歌や三味線を披露し、地域の人たちと強い絆で結ばれていました。彼女たちはエンターテイナーでした」という広瀬さん。

瞽女とは盲目の女性の旅芸人で、江戸時代から昭和まで活動した。古来、眼病などで失明する人は少なからずおり、そんな女性が自立して生きる数少ない道の一つだった。

瞽女を主人公にした作家、水上勉の小説『はなれ瞽女おりん』は映画化もされたから、ご存じの人もいるだろう。

明治以降、組織的な活動としては新潟県下のみになったといい、拠点としては長岡・高田が知られた。

現在、上越市に「瞽女ミュージアム高田」があり、その文化を保存、情報発信している。

近代化に伴ってしだいに減少し、明治生まれで最後の瞽女と呼ばれた小林ハル(1900~2005年)が没して途絶えた。

彼女らは三味線を携え、数人で旅をしながら農村を回って糧を得た。芸を磨いて披露する一方、村人たちは受け入れて保護する相互扶助の文化があった。

「義太夫節、常磐津節、長唄などレパートリーは広かった。村人らの求めに応じてさまざまな歌を披露したからです」。当時、農村部の人々の数少ない娯楽の一つとして親しまれた芸能文化だったのだ。

迫力、色気、声の魅力を体感

展示では、瞽女の旅姿や旅の持ち物を紹介。くしや歯ブラシなどの生活用品から、布団や枕まで持ち歩いたというから驚く。宿泊先は主に農村の有力者宅で、なるべく迷惑をかけないよう日用品は持参し、芸を披露するときはそのための着物に着替えたという。

今回、その瞽女唄をいかに来場者に体験してもらうか工夫があった。会場の一角にイスを置き、ゆっくり瞽女の唄を聴くスペースが設けられている。音源が残る3人の声が繰り返し流れ、それぞれの個性が楽しめるようにした。

「例えば小林ハルさんは迫力がある。杉本キクイさんは色気がある声が特徴で、それぞれ違います。そんな魅力を鑑賞してもらえれば」と広瀬さん。

また、新たな試みにも挑戦。瞽女を全く知らない世代の若手美術家、ナギソラさんに瞽女をテーマにした作品制作を依頼した。

テラコッタ作品のタイトルは「わたしのおへそのうちとそと」(2024年)。コミカルな瞽女唄「へそ穴口説」に着想を得て制作したそうで、目に見えない「へそ」を具体化した独創的なアート作品に仕上がっている。

失われた文化を後世に

「瞽女はすでに消滅し、その存在を知る人は少ない。(映像があふれる)現代は圧倒的に〝視覚優位〟の時代ですが、目に見えない世界の魅力を伝え旅をした瞽女文化を見直し、どう今に生かすかを考えたい」という広瀬さん。現代のインクルーシブ教育やユニバーサルツーリズムにも通じる問題提起だろう。

10月6日に広瀬さんの講演と瞽女唄のライブがある「みんぱくウィークエンド・サロン」、同13日に映画の上映会「瞽女GOZE」(2019年)を開催。詳細は民博のホームページから。

展覧会は12月10日まで。水曜休館、有料。

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