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地域超密着の観光振興で活性化  鹿児島県長島町の「獅子島」(ししじま) 島を歩く 日本を見る

産経ニュース / 2024年6月21日 9時0分

〝化石の島〟として知られる獅子島は、天草諸島の一つで、鹿児島県の最北端に位置する。鹿児島市内からは、車で長島、諸浦島(しょうらじま)と橋づたいにまず2時間。さらに諸浦港から船に20分乗り到着する。まさに〝奥・鹿児島〟との印象を抱く島だ。島最高峰の七郎山(標高393メートル)に登れば、八代海越しに天草諸島の他の島や、雲仙岳(長崎)などが望める。

島の大部分は、「御所浦層群」と呼ばれる約1億年前の白亜紀の地層で、さまざまな化石が発見されている。獅子島化石パークには化石が展示され、発掘体験もできる。

平成16(2004)年にクビナガリュウの化石が見つかった幣串(へぐし)地区は、古くから漁港として栄えてきた。漁船が活発に出入りする港には、ずらりとタコツボが置かれ、漁村の風情が漂う。沖合には、ブリやタイなどの養殖用の生け簀(す)がいくつも設置されている。豊かな自然環境で育つ魚は、身が締まっておいしい。

島のある長島町を拠点とする東町漁業協同組合は、日本一の養殖ブリの生産量を誇る。独自の餌を与え、生産者の顔が見えるトレーサビリティーシステムを構築。平成16年には養殖ブリの「鰤王(ぶりおう)」が、良質な県産物に与えられる「かごしまのさかな」ブランドに認定された。

「幣串をはじめ、長島町の入り江は凪(な)いだ穏やかな海で、安全に養殖業ができる。複雑な海流により海水が循環するため、魚にとって環境が良い」と獅子島の漁師、千葉麻生さんは語る。千葉さんは代々続く妻の実家の家業を継ぎ、漁師となった。

長島町は今、観光振興による経済活性化の道も模索している。平成28(2016)年、旅行会社「阪急交通社」と観光振興に関する連携協定を締結。同社は「地域〝超〟密着」を合言葉に、現地視察と会議を繰り返し、鰤王を味わうツアーを発売。令和5(2023)年度までに、累計1万3000人以上を長島町に送り出した。

千葉さんは、「ツアーのおかげで交流が生まれ、次は個人旅行で来てくれる人がいる。漁業の傍ら、旅行者に向け、養殖の見学や餌やり体験なども提供していきたい」と話す。〝漁師の母ちゃん〟たちが経営する「うまかもん幣串」では、予約すれば新鮮な海の幸の昼食が味わえて、ブリカツなどの加工品のおみやげも購入できる。

一度でも島に来て、汗を流す漁師に会えば、海の幸の味わいも、その恵みへの感謝の念も増す。われわれ消費者も、そうした地域の宝に、超密着の姿勢で関心を持ちたい。

アクセス

諸浦港(諸浦島)から獅子島の「片側港」へ、または水俣港(熊本県水俣市)から「幣串港」へ、それぞれ船が運航。

小林希

こばやし・のぞみ 昭和57年生まれ、東京都出身。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後に『恋する旅女、世界をゆく―29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマにしている。これまで世界60カ国、日本の離島は150島を巡った。

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