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古代沼に池、沢、泉も点在する「高清水の岡」、奈良時代から湧き続ける水脈の謎 秋田 行ってみたい 水のある風景

産経ニュース / 2024年8月2日 10時0分

エメラルド色の水をたたえる空素沼(からすぬま)は広さ約2ヘクタール、水深5メートル以上。密林の崖に囲まれて静まり返る神秘的な雰囲気で、版画家の川瀬巴水(はすい)も昭和2年、夏空が映る光景を作品にした。

沼がある「高清水の岡」は、旧雄物川河口に面した南北2・5キロ、東西約2キロ、標高40~50メートルの台地だ。秋田市役所や秋田県庁のあるエリアから羽州街道を車でわずか5分、深い森に覆われた岡がひときわ目をひく。

奈良時代に朝廷が秋田城を置いたときから「高清水岡(たかしみずのおか)」と呼ばれ、今は大半が国の史跡。その名の通り、史跡だけで42もの井戸跡が出土した。一つは今も水が湧き、古代沼も復元された。中腹や麓(ふもと)にも池や沢、泉が点在し、宅地の排水溝にも湧水が「ジャージャー」「サラサラ」と枯れることなく流れ続ける。

史跡調査が続く一方、岡自体の系統的な地学調査は行われたことはなかった。「なぜこれほど水が湧くのか」と地元の人々が代々抱く疑問を解明しようと、地学調査の音頭を取ったのが岡東端の同市寺内児桜に住む石井護さん(79)だ。

県職員時代に培った地質・土木業務の知見を生かし、平成22年に児桜町内会長に就任して以降、専門家や各町会役員とともに岡の地形、地質、湧水を実地調査し、3年後に報告書としてまとめた。

岡は北側の秋田城政庁跡が標高約49メートルと最も高く、地質は水を通さない泥岩層の上に透水性の砂礫層(されきそう)などが堆積し、表層を海からの飛砂層が覆っている。

湧水は、現在枯渇したものを含め27カ所を確認。湧水として流れているのが12カ所、沼や池になっているのが5カ所、沢や小川の源流が3カ所、泉が3カ所、井戸や井戸跡が4カ所だ。

さらに、「一昨年夏、自宅庭の畑に突然、水が湧き出したんです」と石井さんの妻でオカリナ奏者の一子(いちこ)さん(75)。湧出量は毎分20リットル。金属の筒を埋め込んで井戸にし、あふれる水を流すためのパイプも設置した。

この豊かな岡の水脈について調べを進めていた護さんは昨年秋、脳梗塞で入院。リハビリを経て8カ月ぶりに戻った自宅で「岡の湧水量は降水量よりはるかに多い。地元では秋田市東方の太平山から圧のかかる地下水脈が秋田平野をくぐって岡で湧き出すと伝わるが、近年、国土水循環モデルで伝説を裏付ける流動経路の一端が示された」と話す。

庭の井戸を見つめながら「こんこんと湧き出る水には生命を感じ、元気が出る」とも。石井さんの水をめぐる調査研究は続く。(八並朋昌)

高清水の岡 高清水の岡へは、JR秋田駅からバスで約20分、「秋田城跡歴史資料館前」下車。車の場合は、秋田自動車道秋田北インターチェンジ(IC)から約10分。史跡公園には政庁跡や復元された築地塀、古代水洗浄化槽トイレ、平安の井戸、古代沼などがあり、無料ガイドもある。空素沼は水際に下りる階段が崩落の影響で通行止め。【問】同資料館(018・845・1837)。

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