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万博への子供無料招待、見送り続出 大阪府市と協会、交通手段確保や暑さ対策に懸命

産経ニュース / 2025年1月30日 21時18分

4月に開幕する2025年大阪・関西万博を前に、大阪府が会場に府内の子供たちを学校単位で無料招待する事業について、参加を見送る学校や自治体が相次いでいる。学校側が人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の会場に子供たちを引率する難しさや安全性を懸念しているためだ。府市や万博の運営主体、日本国際博覧会協会は交通手段の確保や暑さ対策などを進め、課題の解決に取り組んでいる。

「子供たちが安全で円滑に来場できる環境を整えることを目指し、引き続き準備していきたい」

大阪府市で組織する万博推進局の藤田浩良・機運醸成部長は30日、市内で協会と開催した教育旅行の来場者輸送に関する検討会で、交通事業者らにこう訴えた。

府は府内の満4歳~高校3年生を万博会場に無料招待する方針。小中高校や支援学校には学校単位での来場を呼び掛け、学校側が来場を見送った場合などには、児童や生徒に入場券を配り各家庭での来場を促す。

検討会では府教育庁が府内各校への意向調査をもとに、学校単位での来場希望者数を報告。昨年5月時点では府内1841校の約88万人のうち1526校の約68万人だったが、今月15日時点では1388校の約58万人まで減少した。主な来場手段は団体バスが約20万人、大阪メトロ中央線が約22万人、現地集合・解散が約13万人を見込み、未定の学校もある。

府内では昨年5月以降、交野市と熊取町が会場までの移動の難しさなどを理由に市町内の全小中学校で学校単位での来場を見送り、今月29日には吹田市も市内全小中学校計54校での見送りを保護者に通知した。市教育委員会は「児童・生徒の昼食場所や待機場所での熱中症対策、団体行動の動線や点呼・待機場所の確保が不十分」と説明。三男が同市内の小学校に通う男性会社員(47)は「三男は同級生たちと万博に行くことをとても楽しみにしていたので残念だ」と嘆く。

学校側の懸念を受け、検討会では協会が熱中症対策として、バス乗降場や会場までの通路に待機用のテントやミストシャワー付き扇風機を設置し、小学校低学年は乗降場の会場側で降ろして移動距離を短縮することなどを報告。府教育庁は団体バスの手配を、当初の延べ約3千台から同約5千台に増やして各校に割り当てることを説明した。

会場内では給水施設なども整備。協会が建設したものの、参加国の利用が進まなかった簡易型パビリオン「タイプX」を団体休憩所に転用するなどの工夫を重ねる。

教員が安全な引率のため求めているのが、会場内の動線や待機場所などを確認する下見だ。学校側からは開幕前にも下見ができるよう求める声も上がるが、会場では工事が続くため、協会は開幕1週間前に会場運営を試行するテストラン(4月5、6日)の際や開幕後に受け入れる方針を示した。

万博での教育旅行について大阪府の吉村洋文知事は「世界の最新技術や価値観、文化を学び、社会課題を解決するために各国がどのようなことを考えているのかを肌で感じられる」と教育的な意義を強調。「教員たちが安全に引率できるよう実務的な課題を解決していきたい」としている。(山本考志)

「未来社会」体感する教育プログラムを用意

158の国・地域が参加する大阪・関西万博は、訪れる子供たちにとって「未来社会の実験場」というコンセプトを体感し、多様な文化、価値観に触れる絶好の機会といえる。運営する日本国際博覧会協会や政府は、開幕前から会場内外で学びの機会を提供してきた。

会期中、協会は脱炭素や資源循環をテーマとした会場内ツアー、企業やNPOがつくった体験プログラムを用意。会場を巡るクイズラリーを企画し、問題作成にはテレビ番組でも人気の伊沢拓司さんらのクイズ集団「QuizKnock(クイズノック)」を起用した。各パビリオンにも児童・生徒向けプログラムの作成を呼びかけている。

すでに令和2年度から、子供たちが未来社会に向けたアイデアを考案し、小学生はポスター制作、中学生はプレゼンテーション発表を行う「ジュニアEXPO2025教育プログラム」を展開してきた。参加校は年々増え、5年度には全国で127校に上り、6年度はそれを上回るという。

政府も6年度から7年度にかけ、万博参加国と交流事業を行う自治体を補助する「万博国際交流プログラム」を実施。昨年末までに92自治体146件がプログラムに参加登録をしており、児童・生徒だけでなく地域住民が、万博後も相互理解や世界的な課題解決に取り組んでいく。(藤谷茂樹)

目白大の岡星竜美特任教授(イベント学)

修学旅行や社会見学などの教育旅行では何十人、何百人にも及ぶ児童・生徒を引率するため、学校側にはオペレーション面での安全性はもちろん、バリアフリーやジェンダーなど多様性への対応も求められる。そのためにも教員による会場の下見は重要で、不十分ならリスクにつながる。

特に近年、児童・生徒の保護者らからも重視されているのが、教育旅行の学習効果だ。旅行会社では旅行先で得られる学習効果についての研究を重ね、学校側に営業を行う際のアピールに活用している。学校側でも子供たちの事前学習や旅行後の振り返りで学習効果の向上を図っている。

まだ完成していない万博会場は既存の観光施設や文化財などと異なり、パビリオンでの展示内容の詳細などが明らかになっていないところも多く、どういった学習効果が得られるのかが見えにくいところがある。海外館も見学するのであれば、言語の壁がどう解消されるのかも未知数だ。

運営側の大阪府や万博協会は、万博開幕までに学校側の希望になるべく応えられるように努めなければならない。(聞き手 山本考志)

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