廃れつつある伝統文化の刺繡復興へ 台湾の先住民らが天理参考館で資料調査
産経ニュース / 2024年7月10日 10時16分
台湾西部の先住民、平埔(へいほ)族の調査団が、奈良県天理市守目堂町の天理大付属天理参考館を訪れ、収蔵されている平埔族に関する資料を調べた。今後、刺繡などの伝統文化復興に役立てるという。
台湾西部に居住する平埔族は、政治や経済などの表舞台で重要な位置を占めてきた歴史があるものの、平地で暮らしていたこともあり、17世紀から漢民族との融合が進んだ。年を経るごとに独自の言語は徐々に失われ、代々伝承されてきた刺繡などの伝統文化も第二次世界大戦後の洋装の普及で廃れつつある。
一方で同館は、昭和60年代に台湾人収集家から、台湾先住民族に関する服飾など2千点を超える資料の寄贈を受けて以降、資料を公開する企画展などを開催。平埔族の資料も多数収蔵していることは現地でもよく知られている。
調査団は平埔族グループに属するマカタオ族、タイヴォアン族の人類学者や刺繡工芸職人、学芸員ら青年の男女5人。6月25~27日にわたり同館を訪れ、平埔族と関わりの深い布やポシェット、小物入れなど148点を閲覧した。布に施された花や鳥獣などの精緻な刺繡をルーペを用いて拡大し、撮影するなどしていた。
人類学を研究するリーダーのチン・イシンさん(33)は「これほど状態がよく、刺繡が多く残っているのはとてもうれしい。私たちのルーツに関する研究を深めるとともに、伝統文化の復興にも役立てたい」と力強く話した。
同館の早坂文吉学芸員は「調査に訪れるのはこれまで研究者が圧倒的に多かったが、文化復興を目指す若者たちの手助けとなるのは初めてのこと。とても喜ばしい」と話している。
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