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連節バスで観光客ら大量輸送、燃料電池車も活用 新幹線延伸を見据えた札幌の未来図 深層リポート

産経ニュース / 2024年10月12日 8時0分

札幌市内を試験走行した連節バス=5日午前6時すぎ、札幌市中央区(坂本隆浩撮影)

札幌市が「連節バス」を軸にした新たな公共交通システムの導入に向けて動いている。北海道新幹線の札幌延伸を契機に観光客の増加が予想されており、連節バスによる効率的な大量輸送で交通渋滞の緩和を図りながら観光客のスムーズな周遊につなげる狙いがある。連節バスなどに環境負荷の少ない水素を使う燃料電池車(FCV)を導入し、水素社会実現の象徴としてもアピール。社会実験などで課題の洗い出しを進め、6年後の本格運行を目指す。

市内中心部に導入へ

10月5日早朝、全長18メートルの車両が札幌市中心部を初めて駆け抜けた。札幌市が実施した連節バスの試験走行で総延長約26キロのルートを時速30キロ前後の速度で周回しながら右折、左折時の状況、乗り心地などを確認した。

2両編成の路面電車のようなシルエットで大型トラックのように大回りをすることはなく、全体の動きはしなやか。その様子に市民は「乗ってみたい」と笑顔で眺めていた。

市は北海道新幹線の札幌延伸で観光客が急増しても市内中心部の車両混雑を緩和し、観光客らをスムーズに周遊させるため、連節バスを軸に据えた新たな公共交通システム構築を目指す。

新幹線延伸は予定されていた令和12年度末の開業が困難な情勢になっているが、本格運行の目標時期を同年に据えて準備。試験走行はその大きな一歩といえる。

背景に全国的な運転手不足

市の構想案によると、新幹線延伸で利用客が急増するJR札幌駅前と大通・すすきの地区を結ぶルートと、苗穂(なえぼ)駅と同地区を結ぶルートで定員約120人の連節バスを投入。この2ルートが通る市中心部でおおむね150メートルごとに停留所を設置して定員29人以下の中型車両、10人以下の小型車両を運行させる。

同市の取り組みの背景には、全国的な課題の公共交通の運転手不足もある。全国各地で路線バスの減便や廃止などが相次ぎ、公共交通ネットワークとして維持が困難な地域も出始めており、同市は限られた人数の運転手で効率的な大量輸送を行う態勢作りが必要と判断した。

市まちづくり政策局の和田康広公共交通担当部長は試験走行を経て、「今まで見たことのない景色を楽しめるのも魅力につながるのでは」と手応えを口にした。

ブランド化で魅力発信

構想の大きなポイントはFCVの導入だ。水素と酸素の化学反応で発電した電気エネルギーをバッテリーに蓄電し、その電力でモーターを回して車両を走らせる仕組み。温室効果ガスを排出するガソリン車やディーゼル車とは異なり、水だけを排出することから環境に優しい次世代車としても注目される。小型、中型、連節バスのすべてにFCVを導入する意向で、燃料の水素を供給する「水素ステーション」も市内中心部で建設が進む。

秋元克広市長は「環境に配慮した水素活用の乗り物になる」と強調。車両デザインにも工夫を凝らして「札幌のブランド力発信とともに、市民の方の使い勝手の良い公共交通にしていきたい」と意欲を示している。

来年度からは2カ年計画で乗客を乗せての社会実験を行う予定。「積雪下の課題なども確認しながら6年後の本格運用を目指す」としている。

連節バス

一度に大量の人員を輸送できるように、連節器と呼ばれる部品で2つ以上の車体をつないだバスで、路線バスへの導入の動きが広がっている。一般的な路線バスが50~70人に対して、2つの車体をつないだ連節バスは100人以上の乗車が可能とされる。札幌市の試験走行で使用された連節バスの定員は134人だった。

記者の独り言

札幌市の年間降雪量は平均4・8メートル。1日に数十センチ積もることもあり、連節バス導入にあたって課題になることは必至だ。近年は短時間で大雪に見舞われる日も増え、その対応も考える必要がある。国内の複数の自治体が連節バスを導入しているが、積雪エリアはわずか。札幌市は令和7年度に無積雪期、8年度に積雪期の社会実験を行う。除雪部門と緊密に連携しながら安全性の高い公共交通を構築してほしい。(坂本隆浩)

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