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天皇制や原発問題もテーマに 朝ナマ、タブーに挑戦もスタッフが口ごもってしまい… 話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<23>

産経ニュース / 2024年10月24日 10時0分

舌鋒するどく

《「タブーなし」の触れ込みでスタートした深夜の討論生(なま)番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)。最初に手応えを感じたのは「原発問題」(昭和63年7月放送)だった》

僕は『原子力戦争』(51年)という本を書いたくらいで、原発問題には関心がありました。番組の約2年前にはチェルノブイリ原発事故が発生し、反対・賛成の議論が盛り上がっており、ぜひ番組(「朝ナマ」)で取り上げたいと思った。

(原発の)推進派と反対派の両方に出てもらうのに苦労しました。〝ケンカ相手〟と一緒はイヤだとね。説得するのに半年くらいかかったかな。番組では推進派が難解な専門用語を連発する。僕は何度も「分からない。どういう意味?」って聞いたことを覚えていますよ。

それでも、視聴者の反響は大きく、視聴率もよかった。「原発」をテーマにした回はその後、3回くらいやったかな。これがタブーを破った第1弾とすれば、「天皇制」問題は最大のタブーへの挑戦です。僕は戦争を知る最後の世代だからこそ、この問題をやりたかった。

《63年秋、昭和天皇のご病気によって日本列島は自粛ムードに包まれた。田原さんは今こそ「天皇制」の問題をテーマにすべく、スタッフや幹部に提案したのだが…》

それを聞いたスタッフは皆、口ごもってしまった。(テレビ朝日の)小田(おだ)(久栄門(きゅうえもん))編成局長も「何を考えているんだ、絶対にダメだ」と猛反対…。そりゃあ、そうですよね。天皇制の問題を深く、取り上げるには局がつぶれるどころか、担当者は「殺される覚悟」も必要だったでしょうから。

僕は一計を案じて「『朝ナマ』は生放送だから、途中でテーマが変わるかもしれない。それも仕方がないでしょう?」と持ち掛けた。小田さんは「オレをだますのか」と言ったけれど、結局、イエスともノーとも言わない。僕はこれを〝黙認〟と受け取ったわけです。

《番組はソウル五輪に合わせて『昭和63年秋オリンピックと日本人』のタイトルで始まった。ゲストは大島渚(なぎさ)(映画監督)、野坂昭如(のさかあきゆき)(作家)、栗本慎一郎(経済人類学者)、渡部(わたなべ)昇一(上智大教授)の各氏ら》

番組が始まってしばらくして、僕が「きょうはこのテーマ(オリンピック)で話し合う日なのか?」と問い掛け、ゲスト出演者の何人かが「いや、きょうは昭和天皇について論じるべきでしょう」と応じるという〝段取り〟でした。

ところが、栗本さんが「話が違う」と言って、帰ってしまった。代わりに塩田さん(丸男氏、評論家)に入ってもらって、再スタートとなったけれど、どうにも議論が盛り上がらない。やはり最大のタブーだけに皆、口が重いわけ。あの〝壊し屋〟の大島さんですら、積極的に発言しない。CM中にプロデューサーが入って、出演者にハッパをかけたけれども、どうにも〝消化不良〟のまま番組は終わってしまう。

それでも、視聴率が良かったらしく、小田さんは一転、大喜びですよ。「もう一回番組をやれ」と言われて、その年の大みそかに特番をやりました。視聴率は、さらにハネ上がり、翌年2月の「大喪(たいそう)の礼(れい)」に合わせて、またやった。

そうそう、僕は昭和天皇にも、現在の上皇さまにも、何度もインタビューを申し込んでいるんですよ。結構イイ線までいったらしいけど、結局はOKが出ずじまい。

お二方(ふたかた)に何を聞きたかったのかって? それはね「天皇を辞めたくなったことはないですか?」って。(聞き手 喜多由浩)

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