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中央官庁情報 国土交通省 国づくりを総合的にグランドデザイン、国民の命と暮らしを守る 受験ジャーナル

産経ニュース / 2024年12月20日 17時49分

国家公務員総合職試験,一般職試験に合格すると,その主な職場は「国の行政機関」である1府12省庁,つまり,内閣府および11省+国家公安委員会(警察庁)となる。さらに各省の下には外局である庁や委員会が置かれており,地方に出先機関を設けている省庁も多い。国家公務員の職場は実に幅が広いといえるだろう。それぞれの官庁が取り組んでいる仕事内容や課題などを紹介する。

平成13(2001)年1月6日,国土交通省は,中央省庁等改革の一環として,国土の総合的,体系的な利用・開発・保全,そのための社会資本の整合的な整備,交通政策の推進,観光立国の実現に向けた施策の推進,気象業務の健全な発達,海上の安全および治安の確保を担う責任官庁として,「北海道開発庁」「国土庁」「運輸省」および「建設省」の4省庁の統合により,誕生した。これにより,日本という国づくりを総合的にグランドデザインできる官庁に生まれ変わった。

激甚化・頻発化する自然災害から人々の命を守る防災・減災の取組み,人口減少やバリアフリーに対応したまちづくりや公共交通ネットワークの確保,観光立国の実現を通じた経済活性化や活力に満ちた地域社会の実現の促進など,国土交通省の任務は多岐にわたり,さらなる重要性と広がりを見せている。

〈大臣官房〉省内全体の人事,組織,会計,福利厚生,広報などを行うほか,官庁営繕部では,国家機関の各施設の建設や保全指導などを行う。

〈総合政策局〉基本的かつ総合的な政策の策定を担う政策中枢部門。バリアフリーや環境問題,総合的な交通体系の整備やMaaS(Mobility as a Service)をはじめとした新たなモビリティサービスの推進,物流に関する政策の企画・立案,全省的な情報化の推進等を担当し,国土交通行政を横断的に推進する。

〈国土政策局〉「国土形成計画」等のわが国の総合的かつ長期的な国土づくりの方向性を示すビジョンの策定や,奄美,小笠原,離島,半島,豪雪地帯等の振興等に取り組んでいる。

〈不動産・建設経済局〉近年問題になっている所有者不明土地問題をはじめとした土地利用に関する政策の企画・立案,不動産業の改善や不動産市場の整備,地域を支える建設業の働き方改革や外国人労働者の活用に関する取組みを進めている。

〈都市局〉人口減少社会を迎える中で,都市の持続性を確保するため,「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成や都市再生の推進,良質な都市緑地の確保等を通じて人間中心のコンパクトで緑豊かなまちづくりに取り組んでいる。また,3D 都市モデルの整備をはじめとしたまちづくりDX や防災・減災まちづくりの推進,2027年国際園芸博覧会に向けた開催準備など,ハード・ソフト合わせた総合的な施策を展開している。

〈水管理・国土保全局〉激甚化・頻発化する自然災害から,人々の生命,財産を守るとともに,水需給の安定化を図ることを目的として,河川やダム等の整備や,水害・土砂災害対策を行っている。また,豊かな自然,美しい景観,歴史や文化に対する関心が高まる中,人が川と親しめる新たな川づくりや,生物の良好な生息・生育環境の保全・再生にも取り組んでいる。

〈道路局〉人流,物流の基盤となる道路ネットワークを整備し,4車線化を含めた道路の機能強化を進めている。また,既存の道路インフラの老朽化に対応し,計画的なメンテナンスを進めている。さらには,高速道路のETC の利用によるキャッシュレス化や維持管理におけるドローン等の新技術の活用,災害時も視野に入れた道路の無電柱化や道の駅の防災機能の強化にも取り組んでいる。

〈住宅局〉国民の住生活の向上を図るため,住宅の省エネ性能の向上,バリアフリー化や子育て環境の整備などを通じて,良質な住宅の供給を促進している。地域における人口減少や高齢化の進展により増加する空き家の適切な管理や活用を図るとともに,空き家の発生抑制に繋がるような既存住宅の流通を促す取組みやマンションの長寿命化と再生の円滑化などによりストックを有効活用する社会への転換を進めている。さらには,建築物等への木材利用の促進などによるカーボンニュートラルの実現など,様々なテーマに取り組んでいる。

〈鉄道局〉安全で快適な輸送サービスの実現のため,整備新幹線・リニア中央新幹線の建設や地域鉄道の活性化を推進するとともに,鉄道事故の防止やテロ対策,鉄道駅のエレベーターやホームドア等の設置を通じたバリアフリー化,被災した鉄道の復旧支援などに取り組んでいる。また,各国から注目を集める日本の鉄道システムの海外展開の推進に取り組んでいる。

〈自動車局〉バス,タクシー,トラック事業および自賠責などを所管し,自動車による交通の円滑化や輸送サービスの充実・強化に取り組んでいる。

世界中で開発競争が進む自動運転車の社会実装,カーボンニュートラル対策として重要な燃料電池自動車,電気自動車の普及など,国際的な視点も踏まえた自動車の安全・環境対策を行っている。

〈海事局〉海上輸送サービスの効率的かつ安定的な供給をめざし,外航海運の国際競争力の強化や造船業の生産性の向上,船員の働き方改革の促進や内航海運業の経営力向上に取り組んでいる。

さらに,海運の脱炭素化や,高度な船舶技術の開発,海上における安全確保・海洋環境の保全のための船舶の構造基準策定,船舶の登録,検査などを行っている。

〈港湾局〉港湾の整備や維持管理を通じて,わが国の国際競争力の強化や地域振興に貢献している。具体的には,国際コンテナ戦略港湾の機能強化や港湾における脱炭素化,コンテナ物流や港湾建設現場へのICT・AI の導入や,洋上風力発電の導入促進に向けた取組みを進めている。

〈航空局〉空港の整備,航空輸送事業の発展に関する政策の企画・立案,航空交通の安全確保,航空管制などを行っている。具体的には,首都圏空港の機能強化や空港コンセッションの推進,安全かつ安定的な航空ネットワークの維持・確保を目的とした航空運送事業の基盤強化,航空機運航・空港分野の脱炭素化,保安検査の受検義務付けなどの航空保安対策の実施,ドローン等の安全な飛行を確保するためのルール整備などを進めている。

〈北海道局〉北海道総合開発計画を策定し,社会資本を総合的・効率的に整備するとともに,北海道の特性を活かした産業の振興,環境の保全,資源・エネルギーに関する先駆的な取組みなどを推進している。

また,北方領土隣接地域の振興や住民の生活の安定を図るための支援を行っているほか,アイヌの伝統やアイヌ文化の普及啓発を図るための施策を推進している。

〈国際統括官〉インフラシステムの海外展開の司令塔として,インフラシステムに関する二国間協議や多国間会合の企画・立案や,複数のインフラがかかわる案件の総合調整などの業務を行っている。

外局

●観光庁 観光立国の実現に向け,魅力ある観光地域づくりやインバウンドの受入環境の整備,観光の振興に寄与する人材の育成や,わが国のポテンシャルを活かしたプロモーションなどに官民一体となって取り組んでいる。

また,観光関連産業における雇用の維持と事業の継続の支援,国内旅行需要の喚起とインバウンドの回復をめざした取組みを進めている。

●気象庁 札幌,仙台,東京,大阪,福岡に管区気象台,那覇に沖縄気象台を置き,広域的な気象,地震,海洋などの観測・ 監視,予報・警報や情報提供などを行っている。また,各道府県には地方気象台を置き,道府県単位以下のきめ細かな情報発表・ 提供,解説を行っている。

●運輸安全委員会 航空,鉄道および船舶の事故等が発生した原因を究明するための調査を行い,関係行政機関や事故を起こした関係者等に勧告を行うことにより,再発防止に役立てている。

●海上保安庁 警備救難業務(密輸・密航・密漁等の海上犯罪の取締り,領海等の警備,海洋環境の保全,海上防災・海難等への対応),水路業務(海洋調査,海洋情報の提供等),航行援助・航行安全業務(海上交通情報の提供,航路標識の整備・保守・運用等)など,海の安全や権益を確保するための幅広い業務を行っている。

●国土地理院 日本の位置の基準や国土の明示,各種測量に利用される基準点の位置を定め,すべての地図の基礎となる国土全体の地図情報を整備して提供している。災害時には,測量・地図分野の技術を活用して被災状況を把握し,速やかに関係機関等に提供している。

●小笠原総合事務所 小笠原諸島における現地の総合行政機関として,国の行政機関の権限に属する事務を処理している。

●自転車活用推進本部 自転車の活用推進に関する施策について,関係省庁一体となって,総合的・計画的に取り組んでいる。具体的な施策は,自転車活用推進法に基づく自転車活用推進計画で定められている。

●海難審判所 海事に関する豊富な知識・経験を有する審判官が,故意または過失によって海難を発生させた海技士等の懲戒のための海難審判を行い,裁決によって海難の再発防止に寄与している。

●地方整備局 国直轄の河川,道路,ダム,砂防設備,海岸,公園,空港,港湾などの建設と維持管理等を行っている。

●北海道開発局 北海道内における国直轄の河川,道路,港湾,空港,農業,漁港,公園等の整備と維持管理等を行っている。

●地方運輸局 陸運,海運,観光等を通じて地域に密着した交通政策の展開と地域の活性化,輸送サービスの拡充および安全の確保などの指導監督業務等を行っている。

●地方航空局 各空港で航空機の運航管理・管制,航空保安施設の維持管理等を行う現場部門を統括している。

●航空交通管制部 航空路,航空交通管制,飛行計画および航空機の運航に関する情報の提供業務等を行っている。

ほかにも,施設等機関として,国土交通政策研究所,国土技術政策総合研究所,国土交通大学校,航空保安大学校がある。

人事データ

配属

総合職事務系は本省内部部局および外局(観光庁および海上保安庁)等に配属され,政策の企画・立案と,法律・予算・税制業務などに従事する。総合職技術系は,本省および地方支分部局等に配属され,本省での政策の企画・立案と地方での具体の事業に従事する。一般職(大卒程度)は本省採用と各地方機関採用があるが,技術系は各地方機関採用のみである。そのほか,各外局においても個別に採用を行っている場合がある。

異動・昇任

異動については1~2年単位のサイクルが一般的である。総合職事務系の場合,基本的には3~4年目に本省係長となり,6~7年目に地方支分部局の課長などを経験するなどした後,本省課長補佐に昇任する。総合職技術系の場合,職種によって異なるが,本省や地方支分部局等を経験しながら,総合職事務系とおおむね同じペースで昇任する。一般職(大卒程度)の場合,おおむね8〜9年目に本省等の係長となり,係長ポストをいくつか経験した後,地方支分部局の課長,本省の課長補佐・地方自治体の幹部などに昇任していくのが一般的である。総合職事務系・技術系を中心に,海外留学や在外公館での勤務,他省庁や地方公共団体,独立行政法人に出向して勤務する機会もある。他の省庁に比べて,海外や地方への出向ポスト数が多いのが特徴である。

採用動向・採用予定

2023 年4月の本省での採用実績は,総合職が125 人(事務系35 人,技術系90人),一般職(大卒程度)は35 人。なお,2023 年度以降の採用数については,人事院ホームページにて公表されているほかは未定である。

(公務員試験受験ジャーナル 公務員の仕事入門ブック・6年度試験対応・記事内容を一部編集しています)

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