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卵巣がん再発、プラチナ製剤の効果は…薬剤耐性か、主薬の変更を がん電話相談から

産経ニュース / 2024年6月11日 9時0分

瀧澤憲医師

がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は47歳の卵巣がん患者に、がん研有明病院元婦人科部長の瀧澤憲医師が答えます。

――昨年3月、卵巣がんと診断され、手術を2回、化学療法も受けました。

「詳しく治療の経緯を教えてください」

――最初の手術で両側卵巣・卵管を切除しました。病理検査で、がんが腹腔(ふくくう)内に広がったⅢ期で、組織型分類は明細胞がんと判明しました。さらにTC療法(プラチナ製抗がん剤のカルボプラチンと、パクリタキセルの2剤併用療法)4クールの後、再手術で子宮、大網切除に加え、直腸低位前方切除吻合(ふんごう)術(肛門付近の7~8センチを残して直腸の3分の2を切除。残った直腸と結腸をつなぐ)を受けました。術後、TC療法を2クール追加し、分子標的薬のニラパリブ(商品名・ゼジューラ)を始めましたが、骨髄毒性(赤血球や白血球、血小板の合成能力が低下)のため当初の1日200ミリグラムを半分に減らしています。最後のTC療法から3カ月後の今年1月、腫瘍マーカーCA125値が上昇し始めたため、再発かどうかを確かめるためPET―CT検査を受ける予定です。化学療法を繰り返してもまた再発…。今後の治療方針について助言をお願いします。

「まず、相談者が受けてきた化学療法について説明します。卵巣がんなどの婦人科がんでは、カルボプラチンなどの『プラチナ製抗がん剤(プラチナ製剤)』が効くかどうかが、治療成績を大きく左右します。昭和55年頃に登場したプラチナ製剤のシスプラチンは、婦人科がんの治療成績を著しく改善しました。半面、消化器毒性(吐き気、嘔吐、下痢など)が強いため、その10年後くらいからは姉妹版のカルボプラチンにとって代わられ、カルボプラチンを使うTC療法が化学療法の第1選択になりました」

「こうした化学療法により、卵巣がんがマクロ(目に見える形)・ミクロ(目に見えない)レベルで完全消滅し、その後再発しないことが理想です。しかし、がん細胞にはプラチナ製剤の作用を免れる薬剤耐性機序があるため、化学療法終了後に再発しやすいのです」

「画像検査などで再発確認されたタイミングが、TC療法終了後1年以上たってからなら、プラチナ製剤が効く『プラチナ製剤感受性』、半年以上1年未満なら効果が限定的な『部分感受性』、6カ月未満なら効果がない『抵抗性』と定義されます」

――主治医に今は、カルボプラチンとパクリタキセル以外の抗がん剤(ドキソルビシンをペグ化リポソームに封入したドキシルなど)を併用した治療が可能ともいわれています。ただ再発の診断が確定し、6カ月未満の「抵抗性」と確定すると、以降、プラチナ製剤が使えなくなると言われました。再発検査を遅らせてプラチナ製剤による治療を受けるのと、プラチナ製剤抵抗性再発として別の治療を受けるのとでは、どちらがよいでしょう。

「今回はTC療法を計6クールで終了し、ニラパリブを内服しているにもかかわらず再発が疑われています。また骨髄機能が疲弊しているとみられ、カルボプラチンを含む化学療法がスケジュール通りに実施できない可能性があります。主薬をドキシルなどに絞り、がんの栄養血管を阻害する分子標的薬ベバシズマブを併用した治療が勧められます」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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