核最終処分の候補地選定調査 北海道内のNUMO説明会に住民不満の声 深層リポート
産経ニュース / 2025年1月11日 8時0分
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で進めていた文献調査の報告書が北海道などに提出され、事実上終了した。道内各地で報告書の説明会が開かれているが、質問の受け付けなどの進め方に参加者から不満が出ている。
質問は書面限定
最終処分場の選定にかかる調査は原発で使い終わった使用済み燃料(廃液)をガラスに溶かし合わせ、金属製容器、特殊な粘土で何重にも包み、地下300メートル以上の深さの安定した岩盤で埋設する「地層処分」が可能かどうかを調べる。令和2年11月から両町村で始まり、3段階のうち第1段階にあたる「文献調査」の報告書が6年11月に提出された。寿都町は「町内全域」、神恵内村は「南端の一部」が第2段階にあたる「概要調査」の候補地とする結果が示され、NUMOは報告書に関する説明会を道内20カ所超で順次、実施している。
同月に寿都町で開かれた説明会には町民約50人が出席。NUMOは地層処分の仕組みとともに地震や活断層の影響、火山噴火など8つの評価項目に沿った調査結果を紹介した。会場で寄せられた質問は約40件に上ったが、質問は書面に書き込んで提示する形に限られたことで町民から不満の声が上がった。
NUMOは「できるだけ多くの質問に答えたい」(広報担当者)と理由を説明。同じ趣旨の質問を包括的に取り扱うことで多くの内容に回答できるとメリットを強調したが、「口頭の質問も受け付けてほしい」などの要望が出た。
12月開催の札幌会場では約180人から300件超の質問が寄せられ、NUMO側は「回答しきれない項目は後日、ホームページで掲載する」と場内アナウンスする事態に。40代の女性団体職員は「すべての質問への回答が掲載されるかどうか分からない」と疑問を投げかけた。
道内の原発再稼働や、最終処分場整備に反対する団体は口頭での質問時間を確保することなどを求める要請書をNUMOと経済産業省に提出。北海道の鈴木直道知事は定例記者会見で「丁寧な説明を意識してほしい」と注文を付け、「必要があれば開催状況の改善なども申し上げたい」と述べる。
「現時点では反対」
今後は両町村の概要調査の候補地で実際に調査に進むかどうかについての鈴木知事、両首長の判断が大きな焦点。寿都町の片岡春雄町長は「住民投票で答えを出す」とし、神恵内村の高橋昌幸村長も「村民の意見を十分に踏まえて慎重に対応する」と町民判断に委ねる意向を示す。ただ、鈴木知事は、核のごみを「受け入れ難い」とする道条例を挙げて「現時点では反対の意見を述べる」との構えだ。
地域住民にとって判断材料となる情報を得る説明会などは重要な機会。住民向けの勉強会、シンポジウムを独自に開催してきた寿都町はこれまでNUMOと同様に質問を書面に限るなどの運営をしてきたが、「書面限定では都合のいい質問ばかり選んでいるという疑念を持たれかねない」として改善に向け検討を進める。ただ、NUMOは「今の形で丁寧に回答していく」(苗村公嗣専務理事)との姿勢を崩していない。
◇
核ごみの地層最終処分場選定 最終処分場を選定するプロセスは今回の「文献調査」が第1段階とされ、第2段階ではボーリング調査などを行う「概要調査」、地下施設を整備して調査を進める最終段階の「精密調査」がある。すべての調査を終えるまでに20年程度かかるとされているが、調査対象地域の市町村の首長、知事が国の意見照会に対して反対を表明した場合は次の段階に進むことができない。
記者の独り言 「私たちは好むと好まざるにかかわらず原発の恩恵を受けている。ごみに対する責任を持たなきゃいけない」。1年半前、脚本家の倉本聰さんのインタビュー取材でその言葉を聞いた。使い終えた核のごみはすでに存在している。問題を先送りしないためにも、活発な議論へとつなげるための対話の場づくりが必要ではないか。(坂本隆浩)
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