1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

関空、神戸の新飛行ルート議論大詰め 大阪万博契機の航空需要拡大取り込みへ準備着々

産経ニュース / 2024年6月16日 15時55分

C関西国際空港と神戸空港の新飛行ルート案をめぐる議論C

訪日客が急増する中、関西国際、神戸の両空港の発着枠拡大を実現する新飛行ルート導入に向けた議論が大詰めを迎えている。導入されれば、関空は令和元年に旅客数2493万人だった国際線の年間受け入れ能力を4千万人に拡大、神戸は国際化に道筋がつく。2025年大阪・関西万博を機に、さらなる増加が見込まれる航空需要の取り込みに向け準備は着々と進んでいる。

「大阪、関西の大きな経済成長につながる関空の機能強化に大きな一歩になる」

5月27日、大阪府南部自治体の市町長らとの協議会で、吉村洋文府知事は新ルート案に関空地元で合意が得られことを受け、こう語った。

関空は新型コロナウイルス禍前、既に訪日客の急増で国際線受け入れ能力の限界を迎えていた。コロナ禍で激減したが、昨年5月の「5類」移行後は歴史的な円安を背景に急回復。今年4月には158万6千人の外国人旅客が国際線を利用し、単月で開港以来最高を記録した。

ただ、利用拡大に向けたネックは発着枠の制限があることだった。関空では1時間あたりの離着陸を45回にとどめている。出発の飛行機では、陸上通過時に必要な高度8千フィート(約2400メートル)以上を確保しようと海上を大きく迂回しなければならず、飛行ルートが混雑するために制限が必要だった。

特に、明石海峡上空では大阪(伊丹)、神戸を含む3空港の飛行ルートが重なる。一番上空を大阪の出発機、2番目を関空出発機、その下を風向きにもよるが関空の到着機、一番下を神戸の離着陸機が飛ぶ「4層構造」で運用することもあり、安全な飛行間隔の確保が難しくなりつつあった。こうした混雑状況の打開策が、飛行機を分散させるための新飛行ルートの設定だった。

このため令和4年9月に官民で3空港の在り方を議論する「関西3空港懇談会」が国交省に新飛行ルートの設定を要望した。飽和状態ともいえる大阪以外の関空と神戸に航空需要の伸びしろを見いだした利用拡大がねらいだ。それに対し同省は5年6月、淡路島上空を通過するなどの新しい飛行ルート案を提示していた。

新ルート案は、陸域の上空通過時の高度制限が8千フィートより低くなるため騒音による影響が懸念された。このため関係3府県の環境検証委員会が検証した結果、今年1月に「合理的な見直しだ」との報告書をまとめた。これを踏まえ、3空港懇は国交省との議論を重ね、各府県で意見を集約しており、大阪府では5月に関空の地元と合意。今夏にも3空港懇として合意をまとめる見通しだ。

新ルートの導入で関空は1時間当たりの発着枠は45回から60回に拡大する。ただ、航空会社関係者は「空港施設の人手不足を解消しなければ混雑する時間帯ですぐ増便するのは難しい」と懸念する。コロナ禍の時期に地上支援業務(グランドハンドリング)の従業員の離職が相次ぎ、訪日客の急回復に人手不足が解消されておらず、利用拡大にはこうした課題への対応も求められる。

一方、神戸空港は新ルートの導入で1日あたりの国内線発着枠が80回から120回になる。令和5年度の総旅客数が344万3千人に達し、コロナ禍前を超えて過去最高を更新した。

神戸市空港整備課の担当者は「国際化などの動きに追い風だ」と歓迎する。万博を控え、神戸では来春に入国審査場や税関検査場を備えた新ターミナルが完成予定。これに合わせて国際線チャーター便の就航が解禁され、その5年後めどの定期便就航もにらみ、国際化に踏み出す。

伊丹も変貌 進む3空港の役割分担

関西3空港を平成30年4月から一体運営する関西エアポートは3空港の役割分担を次第に明確化している。

まず変貌を遂げたのは大阪(伊丹)空港だ。東京-大阪のドル箱路線を中心とした国内線基幹空港としての機能を強化。約50年ぶりというリニューアルは30年4月に一部が先行オープンし、コロナ禍にあった令和2年8月に完了した。飛行機利用者以外も立ち寄れる一般エリアにはワイン醸造所併設のワインバー、理容室、雑貨店から乳児が利用できる遊戯施設がそろい、さながらショッピングモールのような充実ぶりだ。かつて騒音公害の象徴だった側面もあったが、地域との共存に向け「開かれた空港」も目指す。

一方、関西国際空港第1ターミナル(T1)では開港以来最大規模の改装が進んでいる。最大の目的は訪日客の増加に備え、海外からのゲートウエー機能の強化だ。開港当初の国際線の受け入れ能力は年間1200万人だったが、国際線保安検査場の集約化など主要機能を整備し、空港全体で年間4千万人に大幅増強する。

両空港を補完するのが神戸空港だ。新ターミナルの整備に向け、設置管理者の神戸市が事業費約150億円を投じる。国際便就航に向けた対応はもちろん、展望デッキや商業施設も整備してにぎわいを創出することも狙う。(藤谷茂樹)

持続可能な地域づくりにつなげ 上村敏之・関西学院大経済学部教授

関西3空港の今後にとって神戸空港の国際化がカギになるだろう。(万博が開幕する)来年春にチャーター便が飛び、令和12年をめどに解禁される定期便が就航できるのかだ。

関西国際空港の建設地が神戸沖から泉州沖へと変更された歴史的な経緯をみれば、需要の奪い合いなどの自治体側の懸念は分かる。だが、関空全体の旅客数は神戸の7~8倍あり、心配には及ばない。

人口減少で国内の航空需要に大きな伸びが期待できない中、むしろ国際空港として関空が競うべきは羽田空港や成田空港だ。関西エアポートによる一体運営によって3空港の全体最適は図られており、関西全体の発展を考えれば地域間の「コップの中の嵐」のような争いに意味はない。

訪日客の人気が高い兵庫県の姫路城やリゾート化が進む淡路島は神戸空港からアクセスしやすい。関空とうまく役割分担を果たせるはずだ。

空港だけ活性化しても仕方なく、地域ごとの受け入れ態勢を充実させ、持続可能な地域づくりにつなげていくことこそが課題だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください