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中央官庁情報 経済産業省 時代と世界を見通してタイムリーな経済政策を 受験ジャーナル

産経ニュース / 2024年12月16日 16時1分

経済産業省

国家公務員総合職試験,一般職試験に合格すると,その主な職場は「国の行政機関」である1府12省庁,つまり,内閣府および11省+国家公安委員会(警察庁)となる。さらに各省の下には外局である庁や委員会が置かれており,地方に出先機関を設けている省庁も多い。国家公務員の職場は実に幅が広いといえるだろう。それぞれの官庁が取り組んでいる仕事内容や課題などを紹介する。

日本経済のあらゆる課題に対応

経済産業省の歩みを振り返ると,明治14(1881)年に発足した農商務省にさかのぼる。農商務省の産業・鉱工業部門が独立して商工省が誕生したのが大正14(1925)年のことである。昭和18(1943)年に軍需省という名称に変わったが,戦後すぐに商工省が復活し,外局として石炭庁,貿易庁も発足した。

そして昭和24(1949)年に通商産業省に衣替えしてからは,戦後の復興に向けて生産力増強と貿易振興に力を入れ,高度成長期には貿易・為替の自由化を実現させ,日本の経済・産業発展のレールを敷いた。平成13(2001)年の中央省庁等改革で経済産業省に名を改めてからも,新たな局面ごとに的確なビジョンに裏打ちされた政策を推進してきた。

まさに時代の流れ,日本の発展とともに歩んできたのが経済産業省である。

幅広い分野で未来をデザインし実行する

グローバル化,少子高齢化,環境・エネルギー問題など課題が山積する日本。経済・社会を取り巻く状況が次々変化する中,経済産業省は「産業政策」「通商・貿易政策」「資源・エネルギー政策」など幅広い分野で,既成概念にとらわれない斬新な発想で政策立案,実行を進めてきた。「国富の拡大」を追求する唯一の官庁として,日本の豊かな未来を切り開くためのデザインを考え,実現していくことが経済産業省の使命である。

実効的な政策をよりスピーディーに

経済産業省のカバーする分野は,産業構造改革,人材,知財,環境,デジタル,産学連携,中小企業,地域活性化,製造業,サービス,通商,貿易,資源・エネルギーなど多岐にわたる。

経済産業省では,国内外の経済社会全体を見渡して業種横断的な全体戦略を立案する部局と,各産業・市場を担当して,「現場」の実態を深く把握し,政策を企画・立案する部局がクロスオーバーしており,部局どうしが互いに議論・協力しながら実効性のある戦略や政策を作り上げ,実行している。

〈大臣官房〉大臣官房は,経済産業省の司令塔として,今後の政策の大きな方向性を示し,業種横断的な政策を検討する部局と個別の産業を担当する部局との間の政策の調整を使命としている。具体的には,法律のとりまとめ,予算,政策の評価,情報公開,組織体制,人事などの総合的なマネジメントに加え,省内の行政活動を支える業務を行い,経済産業省が一丸となって政策を立案し,実現するための要の役割を担っている。

〈福島復興推進グループ〉福島復興推進グループは,福島の復興推進を使命としている。具体的には,福島第一原発の廃炉・汚染水対策や帰還困難区域の避難指示解除や原発事故被災自治体の産業復興に向けた取組みなどに取り組んでいる。

〈調査統計グループ〉調査統計グループは,各種経済指標の作成や政策立案などに活用される調査・統計の整備を使命としている。産業構造や景気動向の把握のための調査や調査結果の公表などを行っている。

〈経済産業政策局〉経済産業政策局は,業種横断的な視点で日本経済全体の戦略を立案し,日本の持続的な経済成長を実現していくことを使命としている。未来の経済・社会システムをデザインするとともに,多様なステークホルダーと議論を重ね,課題を洗い出し,「成長戦略」「人材政策」「スタートアップ支援」など,さまざまな改革を進めている。

〈地域経済産業グループ〉地域経済産業グループは,全国各地域の産業を振興・良質な雇用を創出し,経済成長,そして地域活性化を進める政策を立案・実現することを使命としている。たとえば,地域の特性を活かし,それぞれの地域で高い付加価値を創出し,経済波及効果を及ぼす「地域中核企業」や地方公共団体の取組みを支援することで地域の成長発展の基盤の整備を進めている。

〈通商政策局〉通商政策局は,世界情勢を俯瞰しながら,対外経済政策に関する戦略を立案し,その実現を図っていくことを使命としている。グローバル化が進展する中,資源や食料の多くを輸入し,多くの製品を輸出している日本にとって,世界とつながり,その活力を取り込んでいくことは不可欠である。WTO の交渉・紛争解決に関する企画・交渉,経済連携協定などの国際交渉,G7・G20,OECD,APEC 等の国際連携枠組や国際機関における取組みの企画・調整などに取り組んでいる。

〈貿易経済協力局〉貿易経済協力局は,技術協力や貿易保険,円借款などの政策ツールを活用し,海外との貿易・投資を促進すること,海外からの資金・人材・企業の取込みを促進することを使命としている。同時に,安全保障の確保・経済制裁や環境保全などのための国際約束の履行などのため,外為法に基づいた厳格な輸出入の管理も使命の一つである。日本の技術力を最大限活かして,世界の脱炭素化などの課題解決に資するインフラの海外展開に取り組んでいる。

〈産業技術環境局〉産業技術環境局は,研究開発プロジェクトの実施,研究力の強化(産学連携,民間の研究開発投資の支援など),研究開発型スタートアップのエコシステム作り,オープンイノベーションの推進などを進めることで,イノベーションを生み出す環境を創出し,革新的な技術を迅速に社会実装することを使命としている。また,官民が共同し,良い技術やサービスが適切に評価されるような標準化・認証の枠組みの活用の推進も使命としている。加えて,環境問題の解決と経済成長を両立させるため,温暖化対策の国際交渉への参加,世界全体での脱炭素に資する経済的手法の検討,環境に優しい技術の開発,循環経済への転換など,さまざまな政策を進めている。

〈製造産業局〉製造産業局は,日本の基幹産業である「ものづくり産業」を担当し,ビジネス環境の整備や技術開発支援などを通じてその発展や競争力強化を図っていくことを使命としている。AI やIoT,ビッグデータの活用といった「第四次産業革命」の中で,「モノのサービス化」といわれる,新たなビジネスモデルへの転換といった大きな変化が起きている。製造産業局は,日本のものづくり産業を,こうした大きな変化に対応し,新たな付加価値を生み出す産業へと変革していくための政策を立案し,その実現を図っている。

〈商務情報政策局〉商務情報政策局は,デジタルの利活用により,あらゆる産業・社会におけるイノベーションの創出を促進し,豊かな経済を実現することを使命としている。

最先端のハードウェア・ソフトウェア開発からデジタル人材の育成,データ利活用の促進に向けた制度・環境整備などに横断的に取り組む一方,安全を担保するためのサイバーセキュリティ対策も進め,めまぐるしく変動する情報社会において,常に新しい政策課題に挑戦し続けている。

〈商務・サービスグループ〉商務・サービスグループは,サプライチェーン・物流・消費含むライフスタイルの変革,デジタル技術などを活用したサービス産業(教育産業,スポーツ産業など)の変革,バイオ・医療・ヘルスケア産業の振興,日本の生活・文化が海外で高く評価を得られるようにすることなどを使命としている。2025 年大阪・関西万博を新たな次代に向けた国家プロジェクトと位置づけ,新たな社会像を形作る未来技術の社会実装の集大成を世界に示していけるよう準備を進めている。

〈産業保安グループ〉産業保安グループは,電気・ガスのインフラ,石油コンビナート,鉱山などにおける事故やサイバー攻撃などを未然に防ぎ,災害・事故・停電が起きれば事故収束と復旧を担うことを使命としている。産業の土台を担う施設などの安全確保のため,全国8の産業保安監督部の現場とともに,企業を検査・監督・指導し,企業の安全投資を促し,さらにはAI やIoT 技術の導入によるプラント管理技術のイノベーションを誘発する規制改革( 産業保安のスマート化) も進めている。

〈資源エネルギー庁〉資源エネルギー庁は,安全性の確保を大前提に,環境問題に配慮しつつ,安価で安定的な資源・エネルギーの供給を実現することを使命としている。現代社会は,安定かつ低廉な資源なくしては成り立ちえない構造であり,資源確保の国際競争は激化し続けている。一方で,わが国のエネルギー自給率はわずか12.1%に過ぎない。このような状況の下,豊かな社会を実現するため,省エネの推進,再エネの最大限導入,水素・アンモニアの導入拡大,原子力利用,資源確保戦略の推進などを進めている。

〈中小企業庁〉中小企業庁は,経済活性化と雇用拡大の原動力となる元気な中小企業の果敢な挑戦を強力に後押ししていくことを使命としている。

中小企業が抱える課題はさまざまであり,たとえば,経済が減速したときでも中小企業が必要な資金を調達できるよう,政府系金融機関を通じた資金繰り支援などを実施している。また,中小企業の海外展開支援,事業承継など,中小企業を取り巻く課題に合わせた政策を実行している。

〈特許庁〉特許庁は,産業財産権制度を通じて日本の経済発展に寄与することを使命としている。資源の乏しい日本では,経済発展のためにはこの産業財産権の有効活用が必要不可欠である。これらの権利を保護・活用し,日本の産業の発展に寄与することを目的としているのが産業財産権制度であり,それを支えているのが特許庁である。第四次産業革命,企業活動のグローバル化に伴う旺盛な海外への特許出願,そして中小企業の生産性向上や地方創生など,世界がスピードを上げて変革していく中で,産業財産権の果たす役割もますます重要になっている。

〈電力・ガス取引監視等委員会〉電力・ガス取引監視等委員会は,自由化された電力・ガス市場における健全な競争を確保することを使命としている。このため,電力・ガスの取引の監視や,ネットワーク部門の中立性確保のための規制等を厳正に実施するとともに,ガイドラインなどのルール整備にも取り組んでいる。

人事データ

配属・移動

●経済産業省(特許庁,経済産業局および産業保安監督部を除く)

[総合職]

総合職は,本省の各部局,資源エネルギー庁や中小企業庁などの業務を幅広く経験するとともに,特定分野での知見も養っていく。入省5年目程度から欧米の大学院などへの留学や在外公館,国際機関,日本貿易振興機構の在外事務所などでの海外勤務を通じて,比較的多くの職員が入省10 年目くらいまでの間に海外生活を経験する機会が与えられる。加えて,他省庁や地方自治体,民間企業などへの出向などを通じて,多様な経験を積む。

[一般職]

一般職も総合職と同様に,入省後は2〜3年ごとに異動し,資源エネルギー庁や中小企業庁も含めた各部局を幅広く経験するとともに,専門性も養っていく。入省7〜8年目からアメリカをはじめ世界各地の大学・研究機関への留学,入省10年目以降に在外公館,国際機関,JETRO の在外事務所などでの海外勤務の機会もある。

総合職は,入省3年目で本省係長,4〜5年目で本省課長補佐になる。本省の課長クラスになるのは,早い人で約15 年目前後からである。一般職については,入省5〜6年目で本省係長になる。なお,優秀者の早期登用を行っており,早い人は入省8年程度で課長補佐になる。

●特許庁

[総合職]

特許庁は業務の専門性が高いため,総合職試験の理工系,農学系区分から令和5年4月には42 人を特許審査官として独自に採用した。

審査官は採用後3か月間の研修が終了すると審査官補に任用され,実務研修を経て,最終学歴に応じて入庁2~4年で審査官に昇任し,独立した権限の下に発明の審査などを行う。その後は,海外留学,国際機関などでの海外勤務,国際部門や特許情報の利用促進を図る情報部門において勤務する機会がある。このようなさまざまな業務を経験し,上級審を担当する審判官や,各部署を統括する管理職へと昇進していく。退官後は弁理士や大学教授として活躍する者もいる。

[一般職]

国家一般職試験からは事務職員のほか,商標審査官の採用を行っている。

事務職員は人事・法令・予算関係を担当する総務部門,情報部門,国際部門のほか,産業財産権に関する事務を担当する方式審査部門などを異動し,勤務成績に応じて約7年で係長相当に昇任する。

一方,商標審査官として採用された職員は,採用後通常4年間の実務研修を経て審査官に昇任,独立した権限の下,商標の登録の可否について審査する。その後,商標の制度・基準の策定,国際部門などを担当する機会もある。

●経済産業局・産業保安監督部

地域に根ざし幅広く具体的な施策展開を担う経済産業局や,火薬類,高圧ガス,鉱山等の保安,監督指導等を担う産業保安監督部を北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州,沖縄に設置。

採用については,一般職大卒職員を各局・部で採用している。

採用動向・採用予定

令和4年度4月の採用者は総合職56 人(うち女性14 人)で,内訳は,事務系36人(10人),技術系20人(4人),となっている。一般職(大卒程度)は47 人(21 人)で,事務系27人(14 人),技術系20 人(7人)である。

(公務員試験受験ジャーナル 公務員の仕事入門ブック・6年度試験対応・記事内容を一部編集しています)

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