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すごい活気と勘違い 天安門事件を素通り 白タクで北京中心部へ、途中で女性が乗ってきた 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<17>

産経ニュース / 2024年11月18日 10時0分

天安門広場に集まった学生たち=1989(平成元)年5月

《東京都北区のある町内会長の紹介で中国・天津の貿易会社と商売をすることになった。平成元年6月、初めて北京に着いた日は天安門事件の直前…》

いつもの海外旅行と同じように格安航空で行きました。なので北京国際空港に着いたのが夜の11時ぐらい。当時はよく東南アジアに行っていたのですが、深夜でも国際空港の周辺には人がいっぱいいた。北京も同じだろうって思っていたら、誰もいないんです。

飛行機で一緒だった30人くらいの日本人観光客はバスでどこかに行っちゃった。気がつけば僕一人です。タクシーもない。フィリピンとかに行くと、国際空港の周りにはタクシーがいっぱいいて、あんちゃんたちが「女性どうする?」とか、いろいろあるじゃないですか。北京も同じだと思っていたんです。それがまったくない。天安門広場での騒動について、まったく知りませんでしたからね。

暗闇の中、「困ったなぁ」と思っていたら、どこからか若者2人がやってきて、なんだか分からないことを話しかけられた。僕は中国語は全然しゃべれませんから。どうも車があるという。で、漢字で「北京中心部」って書いて見せた。そしてお札を見せたら、日本円で1万円だ、と。高いか安いかは分かりませんが、とにかくその「白タク」で中心部に向かいました。

《北京中心部に着くまでにもハプニングが》

空港を出たときは真っ暗闇と思ったのですが、白タクで移動するにつれて山林となり、今度はまさに漆黒の闇となりました。で、白タクがどっかに立ち寄ったんです。そしたら女性が乗ってきた。「ははあ、そういうことなのね」ってなりますよね。そしたら、その女性は途中で降りてしまったんです。単に知り合いの女性を家に送っていっただけみたいでした。

そして悪いことに、この白タクが途中でエンストしてしまった。2人の身ぶりから、どうもここ何日かで大雨があったらしく、エンジンルームに水が入ったらしい。漆黒の闇の中、3人で途方にくれていたら、しばらくするとピカピカッてヘッドライトが近づいてきた。トラックです。必死に手を振って止まってもらい、ようやく北京の中心部に着くことができました。トラックの運転手さんには5000円、払いました。

とりあえずは泊まるところです。で、トラックの運転手さんが送ってくれたのが、天安門広場に近い高級ホテル。生まれて初めて1泊3万円以上のホテルに泊まりました。部屋に入ったら、テーブルにフルーツがいっぱい、バスケットに盛られていてね。深夜2時くらいだったのですが、「うまそうだなあ」って。でも食べたら、さらに1万円くらい取られるんじゃないかって、我慢したの。高級ホテルだし、フルーツも高いはずだってね。これはウエルカムフルーツでタダなんだっていうのは後年、知りました。今でも思い出しますが、つくづくもったいなかったですね。

《翌日、ホテル周辺を散策した》

北京中心部の繁華街はびっくりするほど活気がなかったんです。人と自転車は通っているのですが、みんな雰囲気が暗いなあって。だけど天安門広場だけは異様な状態で、大勢の人たちがわーわー、わーわー騒いでいるのね。いや、すごいなあ、活気があるんだなって。言葉が分からないって不便ですね。まさかあんな歴史的なできごとの真っただ中だったとは、考えも及びませんでした。

で、その後は天津です。町内会長から紹介された貿易公司(会社)に向かいました。そこは5階建ての立派な国際デパートになっていて、フロアごとに外国製の炊飯器やら掃除機、洋服なんかがたくさん置いてある。いやあ、すごいところと仕事をするんだな、と思ったのもつかの間、すぐに違和感に包まれました。(聞き手 大野正利)

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