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飲食・アパレル・野球…沖縄に恩返し 元プロ野球選手の大嶺祐太(36) 二兎を追う

産経ニュース / 2024年6月16日 17時42分

プロ野球ロッテ時代。本格派右腕として活躍した=令和2年9月、ZOZOマリンスタジアム(田村亮介撮影)

「ハンカチ世代」「マー君世代」。高校野球をわかせたハンカチ王子こと斎藤佑樹(元日本ハム)、米メジャーリーグでも活躍した田中将大(楽天)ら、プロ野球に多くの人材を輩出した世代を指す。「黄金世代」ともいわれた彼らも30代半ば。徐々に現役を退き、第二の人生を歩み始める年齢になった。豪腕でならした大型右腕も、そんな一人だ。

「沖縄」な店内

東京都江東区にある「創作ダイニング HA-LY 爬竜(はりゅう)船」。現在、多くの時間を店の厨房(ちゅうぼう)で過ごしている。沖縄・石垣島の八重山商工高のエースとして甲子園で活躍、最速150キロ超の直球を武器にプロ入り。相次ぐけがに苦しみながらもプロ通算29勝を挙げ、令和4年に引退した。

店名には、自身のルーツである沖縄に伝わる豊漁や航海の安全を祈る伝統行事「ハーリー」、それに使われる船の名前を冠した。石垣牛のハンバーグやステーキ、だしが自慢の沖縄そば(ソーキそば)のほか、所属していた中日の本拠地、名古屋の名物・手羽先も提供する。

夜は野球教室で子供たちを指導する日もあるが、現役時代を知るファンが足を運んでくれることもあり、閉店間際になっても必ず店に戻るようにしている。親交のある元プロ野球選手もふらりと訪れ、カウンターで野球談義に花を咲かす。

妻から手ほどき

故障に泣かされた経験から、「引退後のセカンドキャリアについては、現役時代から意識をしていた」。戦力外通告を受けた2カ月後には、東京・神田に共同経営者とともに焼き鳥店を出店。「タイミングが良かった」と振り返る。

支えてくれたのは、ファッションモデルでもある妻の琴菜(ことな)(36)だ。メールの返し方、言葉遣い、仕事の進め方…。一から「社会人」の手ほどきを受けた。

「当初は反発して言うことを聞かないこともあったが、そうするとうまくいかない。(妻の)意見を聞き入れるようになった」と笑う。

焼き鳥店は現在、共同経営者に任せているが、「社会人としての基礎が培われた」。その後、妻が立ち上げた会社を引き継ぎ、代表取締役に。アパレルブランド「LUCIA(エルーシャ)」を展開する。

絵心のあるロッテ時代の後輩に原案を頼んだというブランドのロゴは、自身が受けた右肘の靱帯(じんたい)再建手術(トミー・ジョン手術)の傷痕をモチーフにしたものだ。

飲食店とアパレルブランドを2本柱に、野球の解説、野球教室なども手掛ける多忙な日々。プロ野球時代に学んだ「準備の大切さ」が生きていると感じる。

例えば、店の料理の仕込みは、絶対に手を抜かない。「調理し、お客さまに料理を提供するまでを『試合』とすれば、仕込みは(準備運動の)ストレッチ。そこで手を抜くと、最後の最後で大きなズレになるから」

一方で、プロ野球選手のセカンドキャリアで一番邪魔になるものは「プライド」と即答。「野球をしているときは色々な人に応援してもらえる。自分の場合は妻がいたが、次のステージでも応援してもらえる人がいる環境作りが、早い段階でできるといい」と語る。

地元に恩返し

将来の夢も描く。多くの夢に通底するのは、故郷への思いだ。

「沖縄で牧場を開き、育てた牛の肉を都内の焼き肉店で提供したい。練習や食事、宿泊、体のメンテナンスまでできるスポーツ関連施設を、沖縄に作りたい」

今年は沖縄で野球教室を開催し、子供たちに自身の経験に基づき食の大切さを伝えるイベントも行う予定という。

小学生から高校まで指導を受けた恩師。プロでお世話になったコーチ、選手。引退後に出会った人々。野球を介した人とのつながりが、自身を形作っている。

「飲食、アパレル、野球。今やっていることを全部、沖縄への恩返しにつなげていきたい」

現役時代のマウンド上と変わらない、精悍(せいかん)な表情で語った。=敬称略(梶村孝徳)

大嶺祐太

おおみね・ゆうた 昭和63年6月生まれ。沖縄・石垣島出身。伊志嶺吉盛さんが創設した少年野球チームで小学2年から野球を始めた。中学も伊志嶺氏が創設した硬式チームでプレー、高校も同氏が監督に就任した八重山商工高に進学、離島勢初の春夏連続甲子園出場の立役者となった。ドラフト1位でロッテに入団。中日での1年を含め計16年間プレーした。

複業は「パラレルキャリア」

働き方改革が浸透した近年、本業のほかに仕事を持つ「副業」とは一線を画し、複数の仕事を並行して取り組む「複業」という生き方にも注目が集まっている。

副業が「本業に加えて収入を得る手段」として使われるのに対し、複業は「パラレルキャリア」ともいわれる。米経営学者のピーター・ドラッカーが提唱したとされ、非営利組織を立ち上げたり、ボランティアをしたりと、収入を伴わない活動も含まれる。

自身の経験などを武器に、自律的にキャリアを形成していくというニュアンスもある。

会社などの組織に属さず、フリーランスで仕事をする人も増えている。人生の軸足を「成し遂げたい目的」に置き、そのために複数の仕事・活動に邁進し、可能性を広げていく。そんな生き方が、今後も増えていくことが予想される。

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