2度目の結婚…新たな出会い求めて熟年婚活 孤独や金銭面の不安など動機さまざま これから 100歳時代の歩き方
産経ニュース / 2024年6月16日 9時0分
離婚を経験したり夫や妻と死別したりした後、熟年に足を踏み入れた人々が新たな伴侶を求めて、2度目の結婚に挑戦する動きが広がっている。孤独や介護、金銭面への不安-。動機はさまざまだが、既に子供がいる人も多く、初婚とは異なる事情も透けてみえる。
5月の休日の正午過ぎ。JR横浜駅(横浜市西区)の西口に止まったバスに、中高年の男女の一群が続々と乗り込んだ。行き先は、水族館などが楽しめるテーマパークの横浜・八景島シーパラダイス(同金沢区)。一日かけてパートナーを探す、日帰りの婚活バスツアーだ。
中高年だけのツアー
ツアーは旅行会社「ハピネスツアー」が企画。参加条件は男性が52~72歳まで、女性は48~69歳まで。この日は男女各18人が集まり、中には福島県から参加したという70歳の男性もいた。
「23歳になる娘から『こんな企画があるみたいだよ』と勧められて…」。神奈川県内に住む介護士の女性(58)は、今回初めてツアーに参加した。仕事が忙しくて夫とすれ違いが続き、15年ほど前に離婚。シングルマザーとして育て上げたまな娘から背中を押され、緊張気味にバスに乗り込んだ。
シーパラダイスに到着した一行は、水族館の愛らしい動物たちを見学。夕食はバーベキューで、和やかに談笑した。
午後9時前、ツアーも終盤にさしかかった帰りのバスの車中。添乗員が「今回は3組のカップルが誕生しました」と紹介する中に、娘に勧められて初参加した、あの女性の姿があった。今後は2度目の春を目指し、出会った男性と2人きりで会うなどして、親交を深めることになる。
あえて籍を入れない
厚生労働省によると、令和4年の再婚者の届け出は男性が6万5644人、女性は5万7280人。このうち60歳以上は男性11・5%(7526人)、女性で7・0%(3991人)となり、80代以上に限っても男性556人、女性201人に上る。
シニア向けの結婚情報サービスを手掛ける「茜会」の川上健太郎代表は「シニアの中には、あえて籍を入れないカップルも少なくない。『事実婚』も含めれば、もっと多いだろう」と話す。
茜会の会員数は約4千人。「10年前に比べると数も増え、全体の年齢層も上がっている」そうで、「人生100年として、終盤の30~40年を1人で生きるのはリスクがあると考える人が多いようだ」と分析している。(宇都木渉)
かつての家族との課題 どう乗り越えるか
熟年再婚では、かつての家族との関係に付随するさまざまなハードルをどう乗り越えるかが、重要なポイントの一つになる。
「中高年になって再婚する際、元配偶者らに相談や根回しが必要となることは多い」。男女問題や婚姻関係の相談を数多く扱う行政書士の露木幸彦氏は、こう指摘する。
露木氏の扱ったケースでは、所有するマンションに妻子が住み続け、毎月10万円の住宅ローンを払い続けることを条件に離婚した60代男性が再婚しようとした際、交際相手が先行きへの不安から二の足を踏んだことがあった。
健康面でも不安を抱えていた男性は、「倒れたらローンを返せない」と元妻にマンションの売却を打診した。固定資産税を払っていた元妻は、子供がすでに独立し、広さや税の支払いを負担に感じていたため、マンションの売却益を受け取る条件で了承。男性のローン支払いは終わり、ようやく交際相手と籍を入れることができたという。
財産を巡る問題も厄介だ。「熟年再婚のメリットは生前なら生活保障、死後は遺産相続」(露木氏)。再婚すれば、相続権は現在の配偶者にも発生する。
ただ、相続権は元配偶者との間の子供にもある。「子供の相続分が減ることで関係に亀裂が入ることを懸念し、籍を入れることをためらう人もいる」という。
熟年再婚には、介護や看病がすぐに始まりやすいという側面もある。露木氏は「長所や短所を含め、互いがよく説明・理解し合うことが大切だ」としている。
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