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すし、キャラ弁…食を通じた体験「ガストロノミー」で日本を知る 外国人観光客に人気

産経ニュース / 2024年8月11日 8時0分

日本ならではのキャラクター弁当作りを楽しむことができる(わしょクック提供)

食を切り口に、風土や文化などを学び体験する「ガストロノミー」をテーマにした旅が注目されている。訪日外国人客(インバウンド)は食への関心が高く、観光庁も振興に力を入れる。楽しみながら日本の食文化を学ぶことができる体験型サービスを取材した。

かつて花街として栄えた東京・新宿の荒木町。その地で100年の歴史を持つ「鮨處八千代」が、訪日外国人らを対象に開く「すし教室」は盛況だ。

34度の真夏日となった7月末、メキシコから来た家族5人が、職人の和帽子にエプロン、手袋をつけ、シャリと向き合っていた。

「ワサビ、OK?」「チョット」「ノ~!」

親しみやすい笑顔を交え、すし作りを教えるのは、経験40年以上のベテラン職人(57)。夜は店ですしを握り、昼は講師として日本のすし文化を伝える。

「スモールライス、ローリング」。職人の説明に従って、慎重にシャリを握る。巻きすを使ってすしを巻いたり、崩れないように包丁を入れたり。細かい作業を真剣な表情でこなして、約1時間。マグロの握りずしやイクラの軍艦巻きなどができあがると、きらきらと目を輝かせた。

鮨處八千代は平成27年から都内3店で教室を催し、延べ5万人以上がすし作りを体験。中瀬和樹社長によると、海外ですし人気が高まり、参加者は欧米や東南アジア、中東など世界中からやってくる。中にはシャリの作り方を詳しく質問する人もいる。

参加したヘクター・アロさん(27)は、完成したすしに舌鼓を打ち、「普段食べているメキシコのすしとは全然違う。帰国してもまた作ってみたい」。体験型の観光について、「ただ見たり食べたりするより、日本の伝統文化を深く知ることができるし、家族と一緒に貴重な経験ができた」と満足そうに語った。

キャラ弁教室も

アニメキャラクターや動物を模してごはんやおかずを盛り付ける「キャラ弁(キャラクター弁当)」も、日本の食文化として世界に知られる。外国人向けの料理教室などを行う「わしょクック」のキャラ弁教室には29年以降、延べ約1万人以上が参加した。

7月に新宿で開かれた教室の参加者は、米シアトルから訪れた台湾系米国人の姉弟と、いとこの3人。

握ったおにぎりに、スライスチーズや焼きのりで作った目や口のパーツをつけていく。細かい作業だが、かわいい「キャラ弁」が仕上がると、サラ・チュウさん(21)は、「キュート」と顔をほころばせた。

「(米国には)サンドイッチなどの簡単な弁当はあるけれど、日本のように手が込み、ディナーを詰めたような弁当はないです」

わしょクックは28年に「外国人向け料理教室協会」を設立し、その認定講師がキャラ弁教室を運営している。富永紀子代表理事は、「普段の家庭の食卓の味を通じて、海外からの旅行客に日本のことを知ってもらいたい」と話した。

地方へ旅客分散も

すし教室やキャラ弁作りなどのガスノロノミープログラムは、ウェブ上から予約できる。インバウンド向けの食体験プラットフォーム「byFood.com」は令和元年にサービスを開始。担当者によると、今年6月、同社のウェブサイトを通じた食体験参加は、金額ベースで前年同月比の約3倍となった。

「観光地を訪問するだけではなく、実際に体験をすることでより深く文化に触れたり、地元の人との交流が持てたりすることに価値を感じる人が多い」と担当者。

日本政府観光局(JNTO)によると、6月の訪日外国人旅行者数は313万5600人となり、過去最多を記録。政府は今年のインバウンド消費が8兆円規模になるとの見通しを示した。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」の令和5年の年次報告書によると、「訪日外国人が訪日前に期待していたこと」として、「日本食を食べること」が83.2%と回答した人が最も高かった。

インバウンドが人気観光地に集中する「オーバーツーリズム」が深刻化するなか、ガストロノミーは地方誘客による観光客の集中解消という面でも期待されており、今後ますます注目を集めそうだ。(本江希望)

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