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悲劇の大津皇子と龍神信仰 薬師寺龍王社 社寺三昧

産経ニュース / 2024年7月22日 11時38分

龍王社付近からは薬師寺の東西両塔を眺めることができる

奈良県には辰年にふさわしい、雨をもたらす龍神信仰の神社や伝説などが多い。薬師寺(奈良市)は「龍宮造り」と呼ばれる壮麗な堂塔で知られるが、境内には地域の信仰を集めてきた龍王社もある。

金堂や東塔(国宝)、西塔が並ぶ伽藍(がらん)の東側に東院堂(国宝)があり、そのすぐ南側に龍王社は鎮座している。室町時代の建築という小さな社殿のみが建ち、普段はひっそりとしているが、毎年7月26日には祭礼が行われる。祭神は天武天皇の子、大津皇子と龍神とされ、伝大津皇子坐像(重文)と龍神像が伝わる。

龍王社は明治維新後に薬師寺境内に移されるまでは、寺の南西に位置する大池(勝間田池)の周辺にあった。

記録から龍王社では鎌倉時代に祭礼が行われ、薬師寺が関係したことが分かるといい、同寺宝物管理研究所研究員の宍戸香美さんは「平城京が廃都となった後、薬師寺は(基盤を固めるため)龍王社に関与することで地域とつながろうとしたのでしょう。雨ごいの龍神信仰に大津皇子が結びつくことで神格がパワーアップした」と説明する。

大津は皇太子の草壁に謀反を企てたとして捕らえられ、20代の若さで死を賜った悲劇の皇子だ。なぜ大津皇子なのか。

薬師寺は天武天皇が後の持統天皇の病気平癒を願い建立した大寺。平安時代の縁起によると、捕らえられた天武の子、大津皇子が悪龍となり、世の中が不穏となったために僧に鎮めさせた。龍となった大津皇子が、池の水を稲作に使う人々が降雨を願う龍神信仰と結びついたという。

宍戸さんは「少なくとも鎌倉時代から行われている祭礼には地域の人の思いが今まで込められ続け、特筆すべきこと」と指摘する。

26日の祭礼は「水郷」と呼ばれる五条、六条、七条、西ノ京、九条の5カ町の当番が準備する。雷太鼓を模したナスとカボチャの造り物やオニユリなどを供え、薬師寺僧侶が読経する。

「各時代に龍神信仰があり、古代と現代がつながっている。今も地域で農作物が供えられており、今後も地域と寺で継承していくべきだ」と薬師寺主事の高次喜勝さん。大寺の知られざる一面だろう。

(岩口利一)

薬師寺龍王社 奈良市西ノ京町457。薬師寺拝観料が必要。(0742・33・6001)。

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