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人生100年「元気な超高齢女性」に憧れ 紙布織作家91歳 英国で講演、東京で個展 近ごろ都に流行るもの

産経ニュース / 2024年9月21日 13時0分

自宅で機織りをする91歳の佐藤和子さん。個展開催中のギャラリー南製作所の水口恵子さんが8月に撮影した=福島市

近年急に「人生100年時代」と騒がれだし、いつまで働くか、元気でいられるのか…と、新たな課題が突き付けられている。長寿傾向で知られる日本女性の当事者意識はなおさら強い。この夏公開の映画がヒットした佐藤愛子さんのエッセー「九十歳。何がめでたい」をはじめ、人生のお手本として超高齢(90歳以上)女性が注目されている。そんな一人。丈夫で美しい「紙布(しふ)織」を伝承する織物作家の佐藤和子さん(91)は今年、ロンドンの大英博物館に招聘(しょうへい)されて講演、現在は東京で個展を開催中だ。

市井の「おばあちゃん」の書籍も続々

「機織りしてると、五十肩とか腰痛にならないねって、先輩方も言っていましたね。足も手も動かすでしょ。全身運動」と佐藤さん。3男2女を育て上げ、5年前に夫を見送り、現在はダウン症の次男(55)と福島市内で暮らしている。ヘルパーに頼らず家事をこなし、伝統的な技術で織物を制作、研究や伝承に取り組んでいる。

「夫を介護していたときも、それでよく織物できるねって言われてましたけど、なるべくまぁ本人にやらせた方がいいとか、深刻にはならなかった。自分の好きな織物を続けたいし、欲張ってもいいのかなぁと。次男とも、一緒に歌を歌うなどして楽しく暮らしています」

21日~10月14日(火、水、木曜は休み)、大田区の町工場跡を活用した「ギャラリー南製作所」で「佐藤和子の仕事 縞帳(しまちょう)と紙布と紙子(かみこ)」展を開催。オーナーの水口恵子さん(64)は、作品や業績もさることながら佐藤さんのおおらかで明るい人柄、生活力にも魅了され個展を企画した。「元気いっぱいで爽やか。お料理もお上手で、これ食べなーと出してくれた漬物が、めちゃくちゃおいしかった」と水口さん。

福島県喜多方市出身の佐藤さんは東京家政大短期大学部卒業後、岡山県の倉敷本染手織研究所に入所し、柳宗悦(むねよし)の掲げる「民藝」の精神に傾倒。一方、後の嫁ぎ先となる義父の佐藤忠太郎氏は宮城県白石市で、伊達藩由来の手漉き和紙を使った紙布織を復興した人物であり、後継者として見込まれた佐藤さんは長男の忠さんと結婚した。

「忠太郎は変人レベルで紙布織研究に没頭し、お金を稼がない。義母がお茶やお花を教え、夫はサラリーマンになって家計を支えた」と振り返る。自身も短大で織物の講座を持った。

今年6月、当時の英国人留学生の教え子の縁で大英博物館に招かれ、65年にわたって取り組んできた白石の紙布織にまつわる講演を行い、現地の関心を集めた。

東京の個展では自身の作品のほか、ライフワークで収集している貴重な縞帳(織物の柄見本)、和紙に拓本で模様をつける紙子、忠太郎氏が残した歴史的価値の高い資料など30点超を展示。「細部に宿る工夫や技を、じっくり見ていただきたい」という佐藤さんは、28日に講演、10月12日には実演・ワークショップを予定している(要予約03・3742・0519)。入場無料。

宝島社は、市井の後期高齢(75歳以上)女性を著者にした書籍を一昨年から5冊発行。中でも78歳から始めたツイッターで人気に火が付いた大崎博子さんの「89歳、ひとり暮らし。お金がなくても幸せな日々の作りかた」は10刷5万部を突破している。

担当編集者の田中早紀 さん(31)は「身の丈に合った暮らしの中で喜びや趣味を見つけて、前向きに過ごす姿が共感されている。人生をエンジョイしている高齢女性は、多くの人たちの『希望』のような存在」と指摘した。

書籍化にあたっては人生だけでなく、「食事や運動などの習慣、参考になるエッセンスをどう盛り込むかを意識。単に長生きのための健康ノウハウではなく、人生100年時代を心豊かに生きるための考え方、ご機嫌でいられる心の持ち方など、著者の言葉が読者の心を温かく明るくしてくれることが重要」という。

女優のような高根の花ではなく、等身大で芯のあるお年寄りに出会うと「お手本にしたい」と憧れる。「おばあちゃん」という呼び方も変わってくるかも。(重松明子)

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