妻の暴言「お前はATMだ」 男性のDV被害相談が最多 男女平等意識高まりで顕在化
産経ニュース / 2025年2月11日 18時26分
配偶者や恋人からのドメスティックバイオレンス(DV)に苦しみ、警察に被害を相談する男性が近年急増している。全国の都道府県警では、令和5年に過去最多となる2万4684件の相談を受理。女性からの相談の半数以下にとどまるものの5年前の約1・5倍、約20年前の170倍に増えた。「男は強くなければならない」「女性からの暴力や暴言にも耐えるべきだ」。DV被害者の支援団体では、こうした社会の風潮に変化が生じ、隠れた被害が顕在化したためとみる。
「男のくせに」
「稼ぎが少ないクズ野郎」「お前はATMだ」
横浜市内のNPO法人「女性・人権支援センター ステップ」理事長の栗原加代美さんのもとには、DV被害に悩む男性が多く訪れる。
栗原さんが相談を受けた関東地方に住む40代男性は、妻から日常的に暴言を浴びせられ、毎晩のように性行為を強要された。行為を拒むと裸で寝ることを強いられたという。
「男のくせに」。妻の口癖が日中、自宅を離れていても頭をよぎるようになり、鬱病を発症。仕事が手につかなくなって退職を余儀なくされた。
夫からの暴力に耐えかねた妻が相談窓口へと駆け込む-。DVに付きまといがちなイメージの通り、10年ほど前は相談者のほぼ全員が女性で男性はまれだった。現在では、数百人に及ぶ毎月の相談者のうち20~30人が男性だといい、栗原さんは「男性の人数は年々増えている」と明かす。
夫婦で殴り合いも
警察庁のデータによると、パートナーからDV被害を受けたとの相談件数は、令和5年は8万8619件で、男性からの相談はうち27・9%となる2万4684件。いずれも過去最多だった。
相談体制の整備や被害者保護などを目的とした「配偶者暴力防止法」が平成13年に施行。翌14年の男性からの相談は142件に過ぎず、およそ20年で170倍超にまで膨らんだ計算になる。
DV問題に携わる警察幹部は「昔は女性ばかりが被害者だったが、今は夫婦で殴り合ったり、男性が一方的に暴力を振るわれたりする例もある。丁寧に話を聞かなければ構図が判然としないことも多い」と語る。
表面化しただけ
なぜ、男性からの被害の訴えが急増したのか。栗原さんは「『女性の暴力で根を上げるのは男の恥だ』といった古典的な考えが、男女平等意識の高まりで薄れ、被害が表面化しつつある」と推し量る。
同NPOでは、相談者の話を聞いた上で別居を勧めたり、希望すれば関係修復に向けたプログラムへの参加を促したりする。ただ中には、あざだらけの姿を見かねた周囲の勧めで同NPOを訪れたものの、「妻を売るのは夫らしくない」といった考えからか、被害の詳細を話したがらない男性も少なくない。
栗原さんは対応が難しい場合もあると明かした上で「肉体的な暴力だけでなく、罵詈(ばり)雑言もDVに当たる。男女関係なく相談窓口に助けを求めてほしい」と訴えている。
被害男性が支援員に
ドメスティックバイオレンス(DV)に悩む男性に寄り添った支援のあり方を模索する動きが広まりつつある。徳島市の支援団体「白鳥の森」では、男性被害者向けの自助グループを昨年7月に設立。来年度は被害経験のある男性を、被害者のボランティア支援員に養成する講座を開く予定で、先進的な取り組みを続けている。
自助グループの会合では参加者が、包丁を持つ妻に追いかけられた経験や「外に(暴行された話を)出すのが恥ずかしくて相談できなかった」といった悩みなどを明かす。団体には、こうした経験を相談しやすい環境づくりに役立てる狙いもある。
ボランティアの養成講座は計3回実施予定で、15人ほどの受講を想定する。テーマごとに弁護士らを講師に招き、養育費の仕組みや離婚後の親子の面会交流の頻度を決める方法などを学ぶ。グループに参加した男性らが受講に前向きだという。
同法人の野口登志子代表理事は「同じ被害者同士で相手も相談しやすく適任。男性の悩みを聞く存在を増やしたい」と意気込んでいる。(土屋宏剛)
「男性向け避難施設整備を」 北仲千里・広島大准教授(ジェンダー論)
男性のDV被害の申告が増える中、国内には男性の避難を想定した一時保護施設(シェルター)がほぼ存在しない。
相談体制の整備や被害者保護などを目的とした「配偶者暴力防止法」が平成13年に施行されて以降、警察への相談件数はほぼ毎年のように最多を更新しており、女性だけでなく男性の被害相談が増えていることを考えれば、男性向けシェルターの整備とその存在の周知は急務といえる。
とはいえ、シェルターの運営や維持には多額の費用を要するため、新たに整備するとなれば、その負担は各自治体に重くのしかかる。
被害者保護の観点からシェルターの場所は公にできないが、公営住宅の一室や、民間の宿泊施設などを幅広く活用することは可能なはずだ。
日本ではDVを「身内の問題」と捉え、特に男性は女性よりも被害を訴えにくい風潮が根強い。明るみに出た被害は氷山の一角であり、隠れた被害の救済を考えれば、一層の支援体制の拡充が必要だ。
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