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連れ添った感謝を胸に…77歳2回目の花嫁姿 シニア世代注目の「再ウエディング」

産経ニュース / 2024年8月16日 12時0分

阿部写真館代表の阿部拓歩さん=7月、大阪市西区(中井芳野撮影)

純白のドレスに身を包んだ77歳の妻は、半世紀前と変わらず美しかった-。長年寄り添ったシニア世代の夫婦が結婚記念日に再び式を挙げたり、ウエディングフォトを撮影したりするサービスが人気だ。人生の節目にパートナーとの絆を再確認する欧州発祥の文化「バウリニューアル」への注目度が高まり、国内でもブライダル業界がサービスを展開。長年のパートナーに感謝を伝えるきっかけにもなっている。

孫がプレゼント

孫たちに見守られ、見つめ合う2人。大阪市西区の阿部写真館には今年2月、礼服とウエディングドレスを身にまとった小寺孝雄さん(72)と妻の千恵子さん(77)。カメラのシャッター音が響き、ほほえましい姿を記録していく。

2人が結婚したのは昭和49年。3人の子育てに追われながら、二人三脚で大阪府枚方市の紙加工の工場を営んできた。2人の苦労や、当時の式は和装だったためドレスに憧れを抱く千恵子さんの思いを知る孫たちが、金婚式にウエディング撮影を用意したという。

「今さらドレスなんて」。気恥ずかしさがあった千恵子さんもドレスに袖を通すと満足感に包まれた。緊張した表情の夫がいとおしく「これからも仲良くやっていこうって思えた」。孝雄さんも「妻にやっとありがとうが言えた。いい思い出になりました」とほほえむ。

「自分らしく節目を」

阿部写真館ではもともと年代制限なくウエディングフォトの撮影を行ってきた。シニア世代の夫婦から「思い出作りにドレスをもう一度着たい」と問い合わせが来たのは約10年前。撮影風景をブログで発信すると、結婚記念日や金婚式などのタイミングで来館する夫婦がさらに増えていった。

今では多いときで月に5組ほどの依頼がある。あえて年齢に応じたドレスやヘアスタイルの提案は控え、希望を最優先する。阿部拓歩(たくほ)代表(44)は「自分らしく節目を迎えてもらうことが大切」と話す。

シニアの「2回目のウエディング」は高齢者施設でも開催されている。

山形県鶴岡市の老人保健施設「のぞみの園」では今年6月、80~90代の利用者の夫婦3組が披露宴を開催。スタッフや親族らに見守られ、車いすの花嫁らが入場し、なれそめの紹介やケーキ入刀も。互いに誓いの言葉を掛け合った。

施設が利用者に喜んでもらおうと企画。照れくさいという人もいるが好評で、希望者がいれば年に1~2度開催。今回で10回目を迎えたという。

増える「なし婚」

施設が参考にしたのは、「バウリニューアル」と呼ばれる文化だ。一般社団法人「日本バウリニューアル協会」によると、バウは「誓い」、リニューアルは「新たな」という意味。長年連れ添ったパートナーと愛を再確認するもので、約100年前にイタリアで発祥し、各国に広まっていったという。

国内では近年、新型コロナウイルス禍や少子化の影響で式を挙げない「なし婚」が増加。結婚情報サイトを運営する「マイナビ」の調査でも昨年6月までの1年間に結婚したカップルで式を挙げたのは45%だった。

日本ブライダル文化振興協会によると、若い世代の需要が伸び悩むブライダル業界がシニア世代向けにサービスを展開。コロナ禍で「大事な人への思いを形にしよう」という意識が高まったことも後押ししたという。

日本バウリニューアル協会の木原亜沙子代表理事(42)は「夫婦はいつしか家庭を支えることに注力し、夫婦だけの時間が取りにくくなっていく。あえて節目を持つことでこれまでを振り返ったり、感謝を伝え合ったりする機会になる」と話している。(中井芳野)

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