ギャルに再び脚光、令和時代は「マインド」重視に 朝ドラ「おむすび」で注目
産経ニュース / 2024年10月30日 7時0分
平成の時代にムーブメントを巻き起こした「ギャル」文化が、再び脚光を浴びている。「平成ギャル」を主人公にしたNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)も始まった。ビジネスの場で、持ち前の明るさやコミュニケーション能力の高さといった「ギャルマインド」が評価されているようだ。
企業の株主総会で
鎌倉時代の名刹・建長寺で今年3月に開かれた、IT企業「カヤック」(神奈川県鎌倉市)の株主総会。膝上丈のスカートにネクタイの制服姿で、髪色を明るく染めた女子高生3人が、株主を前に、新たなイベント企画「ギャルミュージアム」を提案した。
澤本蓮さん(16)、高橋七海さん(17)、染谷柊南(しゅな)さん(16)。
3人は、通信制高校生のためのサポート校、BLEA(ブレア)女子高等部(東京)の同級生だ。ファッションや美容、芸能などの専門分野が学べて、髪色は自由、メークやピアスを禁じる校則がなく、生徒にギャルが多いことで知られる。
カヤックは広告やイベント、地方創生を手がける企業。平成31年から始まった企画展「うんこミュージアム」は、国内外累計で来場者数150万人を突破した。
IR資料にも
アイデア勝負の同社が着目したのがギャルの存在。令和4年には、堅苦しくなりがちなIR(投資家情報)の資料をギャルならではの感性と言葉で作成する試みを行った。
今年は澤本さんら3人がユーチューブで同社の株主総会を実況中継スタイルで生配信。「いつもこの時期にやるの?」(染谷さん)「カヤックに所属してる人たちも株が買えるの?」(澤本さん)などと、疑問に思ったことを社員に問いかけ、説明を引き出した。
同社の広報担当、梶陽子さんは、「株主の前でも物おじせず、新たなイベントのアイデアを出してもらったり、閉鎖的で堅苦しくなりがちな株主総会が明るくアットホームになった」と評した。
外見より内面
ルーズソックスに厚底ブーツ。平成時代の流行は、ギャルが火付け役となって生まれた。令和の女子高生の3人も、見た目が華やかで、よくしゃべり、よく笑う。ギャルの定義を尋ねると、「それって難しい」としながらも、澤本さんが次のように教えてくれた。
化粧やファッションなど外見へのこだわりもあるけれど、内面が重要だという。「おちゃらけてるけど、礼儀はしっかりする。どんなことがあっても明るく乗り切る、みたいなマインドを持っているのが、ギャルじゃないかな。私はリアルなギャルを目指して頑張ってる途中ですね」
誰にでも等しく明るく接するが、「挨拶や敬語はちゃんとしたい。バイト先や学校の先生とか目上の人とのLINEは絶対に敬語を使います」(高橋さん)。SNS上でも、誰かを傷つけないか、嫌な気持ちにならないかと気を付ける。令和のギャルはコミュニケーションのバランス感覚に優れていると感じた。
端緒昭和から
「見た目の華やかさだけでなく、明るくてコミュニケーション能力が高くて機転が利く、といったポジティブな捉え方をされることが多い」
令和のギャルについて、そう語るのは、明星大で若者文化などを研究する荒井悠介准教授(42)。荒井さんは平成時代の「ギャル男」だった。
ギャル文化の萌芽は、1970年代(昭和45年~)ごろには見られたという。
サーフファッションに身を包んだ若者が東京・渋谷に集まるようになり、80年代(同55年~)になると、後輩世代の裕福な私立高生らが、アメカジ(アメリカンカジュアル)ファッションに身を包んでたむろして「チーマー」と呼ばれるように。
「彼らの取り巻きの女性たちは、リゾートファッションに身を包んでいたことから、『パラギャル(パラダイスギャル)』と呼ばれ、その後のギャル文化につながっていった」(荒井さん)。
流行生み出す
90年代、つまり平成に入ると、ギャルが次々と流行を生んだ。女子高生の間で、ミニスカートとルーズソックスの「コギャル」スタイルが流行。歌手、安室奈美恵さんの影響で厚底ロングブーツと茶髪ロングヘアの「アムラー」スタイルがブームとなった。
90年代後半から2000年代にかけては、歌手の浜崎あゆみさんが象徴的存在に。一方で、肌を黒くし、目元のメークを強調した「ガングロ」や、さらに唇などを白く塗った「マンバ」など、パワフルなギャル像が際立った。
平成が終わり、迎えた令和。停滞感とともに語られた時代を、明るく強く生きたギャルの姿を、放送中のNHK朝ドラ「おむすび」では描く。令和になり株主総会にギャルを登用したカヤックの梶さんは「ギャルには難しいものを柔らかく、楽しむ力がある。今後もまた一緒にお仕事ができたら」と語った。(本江希望)
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