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甘くしっとり、魅力香る国産小麦 高タンパクのメリット生かして続々と商品化

産経ニュース / 2024年11月10日 8時10分

しこしこ・もちもちとした食感が人気の「美瑛つけ麺」(1370円)=「らーめん たいざん海老名SA店」(榊聡美撮影)

輸入小麦が円安の影響で依然割高となるなか、国産小麦の需要が高まっている。全国の収穫量の約6割を占めるのが北海道だ。国産にタンパク質豊富な品種が定着し、これまで輸入小麦を使ってきた有名店も、パン作りに用いるようになった。国も生産性の向上に力を入れる国産小麦の魅力とは-。

川崎市にあるパン店「FUJIMORI鷺沼店」。本格的なフランスパンを日本に普及させたフランス出身のパン職人、フィリップ・ビゴ氏の一番弟子で、「現代の名工」にも選ばれた藤森二郎さん(68)が35年前に開いた名店だ。

今月、国産小麦を使った新たな食パンが、併設カフェのメニューに登場した。食べてみると、きめが細かく、しっとりとしていて、嚙(か)むとほのかな甘みを感じる。

美瑛産は高品質

「春蒔(ま)き小麦『春よ恋』を主体に配合された北海道・美瑛町産の小麦の粉を使っています。生クリームを加えて生地に滑らかさを出し、『生食パン』のように仕上げています」と鈴木孝康シェフ(40)は説明する。

ひと昔前までは、「国産小麦は使いにくかった」という。輸入小麦に比べてタンパク質の割合が低いため、こねても弾力と粘りのもととなるグルテンが十分に形成されず、ふっくらとしたボリューム感のあるパンにならなかった。

各産地で改良が重ねられ、近年は春よ恋をはじめ、高タンパクの小麦が安定的に生産できるようになった。特に、美瑛産はタンパク質の含有量が高いことで知られる。春よ恋の場合、平成29年から5年間の平均タンパク値は13・5%で、北海道産全体では12・9%。一般的にパン作りなどに使われる強力粉は、11・5~13%程度だ。

国産小麦の使用を決めたのは、二郎さんの次女で、同店を展開するFUJIMORIグループ(東京都目黒区)代表、藤森もも子さん(36)だ。

今年6月に美瑛の小麦畑へ足を運んだときのことを、こう振り返る。「いい小麦を使うのは、農業を支えることにもつながる。これからのパン屋に何ができるのか、を考えるきっかけになりました」

食パンは今後、持ち帰り用の販売も開始予定で、パン以外にも、パウンドケーキ、サブレなど、続々と商品化を進めている。

麺づくりに1年

昨年から「美瑛つけ麺」という名のラーメンを提供するのは、静岡県富士市を拠点にラーメン店を営む「たいざんホールディングス」だ。

「ラーメンの材料の中で一番こだわるのが小麦粉。これまでにさまざまな国産小麦を扱ってきましたが、同じ品種でも土地ごとに個性があって、おもしろい。美瑛小麦はやはり高タンパクが魅力です」と、同社代表の影島好美さん(57)は語る。

高タンパクで吸水性に富む半面、「クセが強く、最初は難しいと感じた」と影島さん。水分を抱え込む力を生かして、作りたかったのは「つる・しこ・もち」の麺。つるつるとした喉ごし、しこしこ・もちもちとした食感を生み出そうと、約1年を費やして試行錯誤を重ね、「美瑛つけ麺」が誕生。「らーめん たいざん海老名SA店」(神奈川県海老名市)などで、着実にリピーターを増やしている。

太めの麺はほどよい弾力があり、ホタテのうまみが効いた肉だし汁によく絡む。つるりとした心地よい喉ごしが後を引く。

麺に使う小麦を詳細に尋ねると、「2種類の粉を混ぜていて、『春よ恋』ともう1種類は企業秘密。ですが、食感を楽しみながら小麦の香りとうまみを存分に味わってほしい」(影島さん)。(榊聡美)

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