若者言葉を勉強し、目線合わせて対話 警視庁大島署生活安全課・中村和彦警部補(56) 都民の警察官
産経ニュース / 2024年8月9日 20時36分
第94回「都民の警察官」表彰式が21日に行われるのを前に、受章が決まった5氏の経歴などを紹介する。
寄り添う姿勢で
「お巡りさんが一番好きだよ」
調布署で留置場を管理する係に所属していた際、特殊詐欺で逮捕された少年と出会った。否認を続けていると聞き、「本当のことを話した方がいいよ」と声をかけ、留置場で話を聞いた。少年が留置場を出ていくときにかけられた言葉が今も印象に残る。
22年ほどにわたり、少年事件課や警察署の少年係で事件捜査に従事した。「若者言葉や流行語を勉強するんです。しゃべると大体、笑われるんですけど」。少年と目線を合わせて対話し、「真面目で緻密」と評される姿勢で事件解決に貢献してきた。
多く携わった事件の一つが特殊詐欺だ。「捨て駒にされ、最初に捕まるのは少年」。母親から「子供の部屋に使い古された携帯電話がたくさんある」と相談を受けて関与が発覚したケースもあった。
詐欺マニュアルがシュレッダーにかけられた際には紙切れを集めてつなぎ合わせ、携帯電話のチップをトイレに流されたときは下水道も調べた。粘り強い証拠固めや取り調べで、平成31年には捜査を指揮し、少年からリクルーター、指示役の暴力団組員までを突き止めて検挙した。
心がけるのは、「犯罪をした少年」という先入観を持たず、寄り添って話を聞くこと。「『もう同じことをしない』という意識を持ってもらうことが大切」と話す。少年院を出た少年が挨拶に来たり、前を向いてくれたりすると「やってよかった」と感じる。
令和5年からは子供が成人したこともあり、一度は勤務したかった伊豆諸島の大島署で防犯係長を務める。大島と利島を管轄し、管内の人口は計約7千人。防犯協会など外部団体の行事への出席や、学校での不審者対応訓練、過去に詐欺被害に遭った人を訪ねての防犯指導などで島内を飛び回っている。
島で始めた釣りでは島民と仲良くなり、暮らしぶりや噴火したことがある山の話を聞くなど、コミュニケーションの場にもなっているという。限られた島での任期だが、「島民のためにできることを模索したい」。目の前の仕事に全力を尽くす。(橋本愛)
なかむら・かずひこ
大分県出身。平成3年入庁。機動隊、少年事件課、浅草署や西新井署の少年係などを経て、令和5年から現職。島で3・5キロの巨大なアオリイカを釣った際には網が折れ、隣にいた観光客に手伝ってもらいながら引き上げた。
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